prologue 〜?????〜
新章開幕です!
長い螺旋階段を駆け上がるが最上部に一向に辿り着けずにいる。
時折、道すがら現れる小窓からはこの世界で出来た仲間と元の世界の部下達が力を合わせて懸命に敵と戦っている姿が見られる。
「悪いな……もう少しだけ耐えてくれ」
少し立ち止まってその光景を見た後、呟くように言っては急いで目的の場所を目指す。
長く感じた階段は数分程駆け上がった先に現れた大きな扉によって終わりを告げられ、俺は意を決して扉に両手をかけ押し開ける。
「…全く、嫌がらせも大概にしてほしいな」
どんな構造をしているのか…いや、最初からこの城の構造は滅茶苦茶であった。
開けた先は城の大きなシンメトリーのエントラスホールだった。
「空間自体に干渉してあべこべにしてやがる…」
先程までは塔の内部の螺旋階段を駆け上がったのに今度はエントラスホール…しかもエントラスホール中央にはご丁寧に長い階段付きである。
「くそっ!!」
無駄な思考を費やす暇があるなら今は時間が惜しい…ならどうするか…駆け上がるしかない、全てが手遅れになって取り返しがつかなくなる前に。
道は合っているのか、目的地に近づいているのか全く分からず不安が過る…だが信じて進むしかない。
退路など無く戻る事なんて出来ないのだから。
等間隔に並ぶ石柱群を階段を駆け上がりながら抜けていくと…ふと音が聞こえる。
(…パイプオルガン?)
流れてくる音色はこの城主の気持ちを表しているかのように哀しげな…悲壮感が漂う音色が流れている。
(アレンジはあるが…この曲…幻想曲とフーガ・ハ短調か?)
音色はどこからともなく鳴り響いており階段を駆け上がるにつれ音も次第に大きくなる。
そして大きな扉の前に辿り着くと音も最初に聞こえた時とは違い近くで弾いているのでは無いかと思うくらい大きく聴こえている。
「今度こそ…この先か…」
扉に両手をかけると先程とは違い大きなプレッシャーと緊張で少し手が震える。
「ここまで来たんだ…恐れてる場合か…行くぞ」
自分自身を鼓舞するように呟くとその大きな扉を開け放つ。
「ーーーーーーっ!!」
開け放った扉から見た光景は壮観だった。
部屋は結晶で出来たかのような芸術を感じさせる作りの大きな部屋で真ん中には巨大なパイプオルガン、両脇には結晶の柱が幾重にも突き出て合い重なり上の付近は見事な美しい女神の結晶像が奏者を祝福するかのようにそびえ立っている。
尚も音楽は鳴り止まず、奏者は銀髪を靡かせながら入ってきた侵入者に気づいていないのか、もしくは気にも止めてないのか優雅に鍵盤を叩いている。
「⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎!!」
彼女の名前を叫ぶが反応は無く、演奏も後半に入り音色の激しさが増す。
もう一度、彼女の名を呼ぼうとしたが…彼女の奏でる姿が綺麗で見惚れてしまい喉まで声が出かかったがつい止まってしまう。
演奏は続く…今、終焉に向かうこの世界の為に鎮魂曲を捧げるかのように。
そして演奏は終わりを迎え音色が残響を残した後、部屋は静寂に包まれる。
彼女は椅子から立ち上がると、こちらに向き観客にお辞儀をするかの様に会釈をする。
この綺麗な空間に居る異質な存在、黒を基調としたゴスロリ服を着ている彼女は会釈をし終わるとパイプオルガンがある踊り場から両脇に据えられている片方の階段からゆっくりと降りて来る。
「…何故、貴方がここに居るのですか?」
彼女は表情こそ無表情だが氷の様な冷たい視線で俺を捉え、ここに居る事を不満そうに尋ねてくる。
「お前を止める為だ」
「たかが人間如きが私を止めると……」
彼女の視線が更に鋭くなる。
「あぁ…」
だが、俺は彼女の言葉を肯定する様に返答し頷く。
その言葉に彼女は目を閉じ呆れたように笑みをこぼす。
「ふふっ……やはり優人…貴方は元の世界に帰すのではなく事が終わるまで次元の狭間にでも幽閉しとくべきでしたね…」
彼女は笑ってそう告げてくる。
「もしくは、俺を殺した方が良かったかもしれないぞ?」
俺は彼女にそう問いかけると彼女はスッと目を細める。
「戯言を…確かにその方が良かったでしょうが…これでも私は貴方の事を気に入っているのよ?」
「なら、この馬鹿げた計画をやめてほしい所だが…」
俺が溜め息混じりに答えると彼女は「それこそ戯言です」と言って俺の提案を跳ね除ける。
「貴方も知ってるでしょ…この世界の住人がどれだけ罪深いか」
「あぁ…知っている」
「なら…私が絶望しこの世界を終焉へと導くのも頷ける筈よ?」
「………」
確かに知っている…この世界に来て多くの事を見たり経験して、どれだけこの世界の住人が腐っており闇が深かったかを…だけどそうじゃない人も居る事を俺は知っている。
「だから…貴方とその仲間を元の世界に送ってその間に終焉にしようと思っていたのに……まさか貴方達また帰って来るとは思わなかったから…本当に予想外だわ」
「あぁ…確かにな、俺自身驚いたけど…決めたんだよ、世界を救う勇者様のつもりじゃ無いけど…それでも俺はこの世界も好きなんだよ…」
「そうですか……」
彼女は少し残念そうに答えると俺に向かって右手を差し伸べる。
「貴方の事は気に入っている……だから最後にもう一度問うわ。優人…私と共に来なさい?この世界の住人は決して変わる事は無い…だから私と共に世界を終焉へ導き愚かな住人とその歴史を消滅させるのよ」
彼女は手を差し伸べたまま俺の返事を待っている。
俺が彼女の手を取れば世界の終焉だが……そんな結末は俺は望まない。
俺が目指し望むはただ一つ最高の終わり方。
なら答えは一つ…。
「俺はお前のその手を取る事は出来ない…俺は人や色んな種族…変われると信じているから」
俺の変わらぬ答えを聞いた彼女は寂しそうな顔をして差し伸べた右手をゆっくりと下す。
「―――そう、それが優人…貴方の答えなのね…」
彼女はそう言ってスカートをふわりとさせその場で後ろに振り向く。
「ままならないものね…」
彼女は優人に聞こえないようにそっと呟くと自身の小さな身体から強大な魔力を解放する。
「ーーーっ!?」
「やはり互いに相容れないようね…」
彼女はこちらに向き直ると再び冷たい眼差しで俺を敵対者として見つめた後、右手を差し出すと小さな魔法陣が宙に浮き上がる。
「因果や事象、全ての理を穿つ絶対的なる力よ!ここに顕現し我に仇なす敵を滅ぼせ!!デウスエクスマキナッ!!!」
彼女がそう唱え叫ぶと目の前に黒紫の炎が柱となって荒々しく吹き出す。
炎柱の中からうっすらだが片刃の剣が見え彼女は炎柱に手を突っ込むとその剣を握り引き抜く。
引き抜かれた片刃の黒剣は綺麗なフォルムしているがその剣から放たれる凄まじい重圧が体全体に襲って来る。
「…あれがアイツの切り札か」
引き抜いたと同時に彼女から溢れ出した魔力が可視化され霧散していく。
それはまるで燃え落ちる桜吹雪みたいに吹き荒れ幻想的で優しく儚げさも感じるがヒリヒリと肌に伝わる重圧に拭いきれない恐怖を感じさせられる。
彼女は引き抜いた黒剣で空を斬ると切先を俺に差し向けて問いかける。
「貴方も武器を構えたらどう?…無抵抗で死ぬ気はないでしょ?」
彼女の言う通り、無抵抗で死ぬ気も無ければ死ぬ予定も無い。
俺は懐から愛用しているベレッタ90-Twoを出して銃口を彼女に向け、この世界で初めて…いや人生初めて俺より最強災厄の敵と対峙する。
「貴方の死か私の死…どちらの結末になるのか…さぁこの世界の結末を賭けて殺し合いましょうか」
彼女の言葉を最後に幾重の剣戟と発砲音が室内で鳴り響き交差していくのであった…。
プロローグなのでいつもより短めです。




