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学園騒乱編〜報告書⑯〜

ラストです!


 突然の婚姻報告に全員驚く。


「そして律華様と琹様、咲様……お久しぶりでございます。先日は私がご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ございませんでした……」


 アイリスは顔を上げると申し訳なさそうに3人に謝る。

 

「そ、その件に関しましては政府に引き継いで任せましたのでお気になさらないで下さい」


 律華はアイリスにそう告げる。

 正確には政府から後日この件に関して干渉しないようにと通達があり、これ以上この事件内容については触れる事は許されないのである。

 勿論、これは律華に関わらず学園全体…生徒や教職員も含めてである。


「……私は納得していません」


 そこに異を唱える琹。

 律華は止めなさいといった感じに琹に目線を配らせる。


「確かに…貴女は直接的に悪くないかもしれません…ですがあの時、心に傷を負った方も沢山居られますし、何より貴女は私の大切な兄様を傷つけました……」


 栞の言葉に表情が曇るアイリス。

 アイリス自身も当事者達からそこを突かれる事は覚悟の上だが実際に言われると心にくる物もある。

 

「ですが……」


 そう琹は言うと一呼吸置くと話続ける。


「私だけ駄々をこねて姉様や兄様にご迷惑をかけるつもりもありません……アイリスさんが後は誠意を示していただければ何も言うつもりもありません。……言いたい事はそれだけです」


 少し不機嫌そうな栞はそっぽを向いてしまう。

 大人の事情とはいえ、理不尽な要求の飲み込みに本人の折り合いをつけた…と言ったところか。

 父さんや母さんもアイリスを咎めるといった事は無く話は進んでいく。


「ところで……」


 母さんがそう呟くと見極める様に俺とアイリスを交互に見る。


「優人?、アイリスちゃんと結婚とはどういった経緯なのかしら?」


 そう告げた母さんは先程とはうって変わって恋バナに花咲かす様な目で俺達2人を見る。

 この話題に栞がピクッと体を反応させ、父さんも忘れてたと言わんばかりに思い出し俺を見据える。


「兄様……そのお話よーーくお聞かせ頂いても宜しいですか?」


 殺気が込もった声で話す栞の目が……完全に据わってて兄は怖いです、ハイ……。

 だが事実は偽装でありアイリスを一時的にNo.から身を潜める為であり正直に話すのは危険もあるので、ここは大人の事情な感じに話そう。


「結婚は言葉通りだよ」


 栞が掴んでいたテーブルの端がピシッと音を立てヒビが入る。

 妹よ……君の握力はゴリラなのか?普通の人間は握力だけでテーブルにヒビはつかないよ?


「兄様?もっと!詳しく!!納得出来る!!!ご説明頂けますか?」


 栞が今度は笑っている、凄い可愛らしい笑顔だが……おかしい…背後に閻魔大王が見える…見えちゃいけない物が見えてるよ?。


「えー、っとだな……」


 多分、間違った回答をした場合は俺はデスルートに入ってしまうな……。

 そう考えながら上手い具合に回答して栞を納得させるのであった。

 その時母さんはニコニコしながら俺と栞のやり取りを見ており父や律華はアイリスと話していた。

 アイリス…こんな時こそ俺を助けろよ….と思いながら一人で冷や汗をかく。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 その夜……。


「ーーーんで、アイリスは何故ここに?」


 あの後、妹から納得されるまで根掘り葉掘り拷問という名の事情聴取に疲れた後、約束通り姉さんや妹の色々な要望に応えていたらいつの間にか夜を迎えた為、さっさと今日はもう寝ようと2年ぶりの自室に戻るとアイリスが俺のベットの上でスタンバっていた。


「……何故というのは?」


 首を傾げるロリ美少女はお風呂上がりなのか妙に艶っぽい。


「……いや言葉通りの意味だけど」


 本日2回目の言葉だけど…….なんなの?伝わらないの?馬鹿なの?。


「……ボスを待ってた」


 アイリスはそう言うと前屈みになりベットの淵までやって来る。

 あの…胸元の隙間から色々と見えそうで目のやり場に困るんですけど、アイリスさんワザとやってません?なんか妙に顔が赤いんですけど?その獲物を狙う様な子猫の感じでにじり寄って来るのやめて貰えません?。


「……夫婦がこの時間にやる事なんて一つしかありません」


 そう言うと俺の左腕を掴んでベットに引き込むと仰向けにする形で押し倒し、そのまま俺の上に乗っかって俺の両腕を押さえる。

 あ……ヤバい、これあかんヤツ。


「……初夜、つまり子作りです」


「待て!?早まるなっ!!」


 何とか抜け出そうともがくが……コイツ何でこんな時だけ力強いんだよ!抜け出せねえっ…てか動かねぇ!?。

 

「まだ、正式な夫婦じゃーー」


「既成事実です」


「それ!ダメなヤツ!!」


 段々とアイリスの顔が近づいて来る。

 近づくにつれクリーム色の髪からはシャンプーの香りと体から甘い香りが漂い薄ピンクの唇に目がいってしまう。

 い、いかん!健全な男子には毒すぎる!あとこれ以上はもう絵面的にも色々と引っかかってマズい!!。

 アイリスと俺の唇が触れるか触れないかの瀬戸際まで顔が近づいた所で部屋のドアからノック音が響く。


「兄様…まだ起きておられますか?」


 栞が扉越しに声をかけて来てアイリスと俺が扉に顔を向ける。

 ちょっと待て!?またややこしい奴来たって!こんな状態見られたら兄として色々とマズーー。

 そう思った矢先扉が開かられる。


「兄様もう寝られてーーーって!?」


 栞はそう言葉をかけた直後、俺が幼女に襲われている絵面に硬直し抱えていた枕をその場に落とす。

 あ………終わった。


「何を……しているのですか?」


 俯きながら冷ややかに問いかけて来る栞にアイリスがチッと舌打ちをする。

 やめて?これ以上状況悪くしないで?何か俺に恨みでもあるの?。


「夫婦の営みの邪魔なので、お引き取り下さい……」


 ちょっ!何言っちゃってるのアイリスさん!?

 アイリスの爆弾発言に頭が痛くなる俺を他所に琹は肩をワナワナと震わす。


「……そう……ですか」


 あ………もう駄目だ、終わった……。


「ま、待て琹!これはーーー」


「ふふっ、兄様…少し待ってて下さい」


 栞はそう言い残すとクルリと回れ右して振り返り何処かに足早に向かう。

 逃げたい、正直今すぐに逃げたい…後アイリスさん?いい加減退いてくれません?なんで何事もなかった様にまた事を進めようとしてるのですか?

 そんな事をしていたら扉から足早に栞が戻って来た……片手にナタ包丁を手にして。


「兄様…お待たせしました。今すぐそのゴミを片付けますね?」


「待って!?」


 待て待て!?琹さん?貴女そんなヤンデレ属性ありましたか!?人の部屋で流血事件とかやめて?それからそんな生気の無い目で一歩ずつこっちに来るのやめて?No.の人間より怖いからマジで。

 

「売られたケンカは買う主義……」


 アイリスも俺に乗っかったままそう言い終えると何処からかナイフを取り出して構える。

 ちょっとアイリスさんこれ以上状況悪くするのマジで止めてくれません?。


「あははははははっ!!小さな粗大ゴミをバラバラに解体してポイしてあげます!!」


「返り討ちにして産業廃棄物行きにします……」


 アイリスは俺の上から退くと静かにベットの上に立つとナイフで横一閃、空を切り栞の出方を窺う。

 対して琹は一歩ずつ狂気じみた顔でユラリユラリと近づき、とうとうお互いのキリングレンジ内に入ると……。


『死ねっ!!』


 お互い同じ掛け声で手にしてる刃物で斬り合おうとするので……止めさせた。


『えっ!?』


 これもまた息のあったかのように同じタイミングで驚く。

 俺が一瞬で両者の間に割り込み、白刃取りの容量でアイリスと琹の武器を両手で制す。

 流石に2人とも調子に乗りすぎだと思い叱りつけようとしたが、何故か2人共尻もちをついて怯えて栞にいたっては今にも泣きそうである……何故?と思っているとーーー。


「ぼ、ボス…す、すみ、ません…調子に乗り過ぎました……な、なの、なのでその、殺気を……」


 アイリスの言葉で一瞬で理解してしまう…どうやら悪い癖が出てしまい2人を冷たい眼差しで見下ろし今にも2人共殺しかねない様な殺気を放っていたみたいだ……うん、何かごめん。

 華麗に解決して2人共部屋から追い出すと言う完璧な作戦をしようと思った矢先にこの状況だといたたまれない気持ちになってしまった。


「す、すまない……」


 殺気を抑え2人に謝るとアイリスは申し訳無さそうにシュンとしており栞は半べそで見上げている。

 とりあえず2人を落ち着かせた後、咲を呼び彼女達を自室に送り届けさせる。


「………」


 1人になった事で静寂になった自室は時計の針が進む音だけが鳴り響く。

 着替える事も憂鬱になりそのままベットに入り身を任せ目を閉じる。

 最低な気分だ……。

 無意識にあれ程の殺気を家族に……妹に向けるとは……。

 これはある意味、一種の呪いなのかもしれないな……。

 そんな事を思っていると意識がどんどん底に落ちていく感覚を覚えると意識を手放した。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 体が重い………。

 そんな寝苦しさを覚え目を覚ますと自分の上に跨って乗る人影が見えたので枕に忍ばせたナイフを素早く取り、そのまま人影を押し倒すように上体を起こしナイフを首元に向ける。


「……ボス」


 部屋に返したはずのアイリスが人影の正体だった。


「……アイリスか。何しに来た?」


 また訳の分からない事を言い出したら今度は頭に強烈なチョップを決め込もうと考えたが…帰ってきた答えは意外な物だった。


「ボスが、心配だったから……」


「心配、だった…?」


 アイリスの答えに思わず疑問で返すとアイリスは凄く哀しげにこちらを見つめてくる。


「ボス……やはり隊に戻りませんか?」


「何故だ?」


 アイリスの顔を冷たい目で見つめるが変わらず彼女は哀しげに俺を見つめたままである。

 そっと俺の頬に彼女の手が触れる。


「ボスも分かっている筈です……私達がただの平和ボケしている一般人とは一緒に居れないという事は……その内、ボスは畏怖され傷付くだけですよ?」


 アイリスの言葉に何も返せない。

 それは事実であり先程の栞の表情がその答えであるのだから。

 栞が泣きそうになった時の表情は恐れ畏怖する表情……普通の…家族にさせてはいけない表情である。

 一緒に居る事は難しいのかもしれない…それでも俺は………。


「悪いが……俺は戻るつもりは無い」


「何故、ですか?」


 問いかけてきたアイリスの見つめる哀しげ目が真剣な眼差しに変わる。


「確かにアイリスの言う通り居場所が無いのかも知れないし戻った方がいいのかも知れない」


「だったら!」


「それでも俺は(いばら)の道を選ぶよ……守る為にそして俺の目的の為にも」


 そう確固たる意思で告げアイリスの上から退くと彼女が起き上がる。


「……分かりました」


 何処か寂しそうな表情で了承するアイリス。


「要件はそれだけか?」


 そろそろ寝たい俺はアイリスにそう尋ねると彼女は無言で頷くが何故か俯いてその場から動こうとしない。


「……どうした?他に何か用があるのか?」


 不思議に思いアイリスに声をかける。


「……今日は」


「ん?」


 アイリスが何か言うが聞き取れなかったので訊き返す。


「今日は……一緒に寝て、貰えませんか?」


「却下」


 別に一緒に寝るメリットも無ければ、また変な誤解やさっきみたいな事になるのも嫌なので制止する。


「何もしません……ただ、添い寝するだけですから……それでも駄目ですか?」


「駄目です」


 俺が考える間もなく返答するとアイリスが頬を膨らますので俺は面倒な感じの視線を送る。


「ボス、意地悪です……なら私もボスの言う事聞きません」


 子供のように駄々をこねる膨れっ面のアイリスにため息を吐く。

 

「なんでそんなにーーー」


 そう言いかけるとアイリスが今にも泣きそうである。

 泣きそうになるのやめて?こっちが泣くよ?捨てられた子犬みたいに見るのやめて?。


「はぁ……わーったから、寝ていいから泣きそうになりながらこっち見んな」


 結果根負けしあきらめて言った瞬間、アイリスの表情が一瞬で笑顔になる。

 たまに思うが女性のこうゆう所は怖いと思う。


「言質取ったので、後から無しはダメですよ?」


 笑顔で言う彼女に苦笑いしか出ないが、まぁ良いだろ……それにもう何より眠い。

 ベットに横たわるといつの間にかアイリスは準備万端なのか俺の隣で横になっている。

 時計の針が進む音だけが聞こえる中、再び意識が微睡にゆっくりと沈んでいくが少し気になってアイリスを見ると彼女は目を閉じて寝ている。

 きっとアイリスも疲れていたのであろう……聞いていないだろうが、そっと声をかける。


「……おやすみ」


 一瞬……彼女が微笑んだような気がしたが、そこで俺の意識は完全に落ちていった。









〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








 そして朝……甘い香りと柔らかい感触に目が覚める。


「………何これ、どうゆう状況?」


 昨日確かにアイリスと一緒だった筈……なのに。


「増えてんじゃん……」


 ベットの左右に追加された人物達……律華と栞を交互に見る。

 いつの間にかベットに入ってきたネグリジェ姿の彼女達は優人の腕を片方ずつ抱き寄せており身動きが取れない。


「そういえば……」

 

 両サイドにアイリスの姿が見えないと思ったが直ぐに気づく…俺の腹部辺りの重みに。

 アイリスが俺に乗っかる感じに寝ている。


「重い…動けない……朝から疲れる」


 なので抜け出す為に、まず2人を起こさないように両手を動かそうとすると両腕に抱きついている栞と律華のやわらかな肢体に触れその度に彼女達は嬌声(きょうせい)をあげ断念する。


「どうしたら良いんだよ……この状況」


 世の男子が羨むハーレム状態だが、さっさと抜け出したい。

 そんな時に部屋のドアがノックされる音が聞こえそのままドアが開かれる。


「失礼しまーーー」


 入ってきたメイド長の咲と目が合うがベットの上の状況……姉妹の乱れている服装、婚約者(仮)の寝ているポジションに言葉を失っている。


『………………』


 俺と咲の長い沈黙が続いた後、咲は俺をゴミを見るような目で見てくる。


「おはよう御座います、朝から良いご身分ですね?ゴミクズ虫様」


「おい、クズが新たに増えてるぞ……助けてくれ」


 咲に助けを求めるが彼女はにこやかに笑うとそのまま回れ右して後ろを向く。


「そのまま女性の敵は死んでもらって構いません……いや、いっそそのまま死んで下さい」


「何を勘違いしてるんだ!?」


 そしてパタリと扉を閉め咲は部屋を出て行く。


「あーーもうっ!誰か助けてくれ!!」


 彼女達が微笑みながら幸せそうに寝ている姿を他所に俺の悲痛な叫びだけが部屋に響き渡るのであった。

ようやく1章が終わりまして、次の章に向かえます。

色々と拙い部分があり面白くそして興味を持てるように執筆出来たか分かりませんが、楽しみに待ってくださった方、興味を持ってくださった方…ここまで読んで頂き誠に有難うございます。

自分でも色々試して頑張って皆様に楽しく読んでもらえるよう精進して執筆していきたいと思います。

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