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学園騒乱編〜報告書⑮〜

続きです。

 

 アラミスト研究所…表では製薬研究所で通しているが裏では、ある組織と繋がって公には出来ない非人道的な研究をしており人体実験なんてしょっちゅうあった。

 研究所が開発した未検証の薬やどこから手に入れたか分からないような謎の臓器や体の一部分を人体実験で使用して被験者の反応を見ていた。

 ちなみにその被験者達は色んな所から拐ったり孤児院こら引き取ったりなど色々だ。

 だからあの時は子供が凄く多かったのも覚えている…俺自身も拐われた1人で被験者として左目に違う眼を移植されている。

 そしてこの研究所の真なる目的は超常を超える最強最悪の兵器を作りだし何かをしようと企んでいた。

 まぁ、俺が眼を移植されてから数日経った頃だったか研究所内で何かが起こり研究所とその付近を巻き込んだ大規模な爆発が起こる。

 研究所は大破し中に居た研究員、被験者共に全て死亡……俺以外は。

 その後、駆けつけた警察や軍に保護され俺の身柄は軍の医療施設に預けられる事になる。


 「まぁ、なんやかんやあってNo.のトップの導師に拾われ眼の能力の事も知り、力をつけ、能力を操る術を学んでNo.に入隊するにまで至った…その後はお前等も知っての通りお前等と出会って仲間にして仕事を遂行していたって訳だ」


『…………』


 俺の過去を聞いた一同は重い空気に包まれ黙っている。

 今回初めて自分の過去の一部を喋ったけど反応見た感じ、どう声をかけたら良いか分からないって感じに見える。

 同情や悲しみ、憤慨など色んな感情が入り混じった目で俺を見ている。


「ボス…その…」


 アイリスが今にも泣きそうな感じで話しかけてくるがアイリス自身、どう言葉をかけたら良いか分からず口籠っている。


「まぁ、過去の事だから別に気にするな…それに研究所は大破して研究資料や知っている者も全て燃えて無くなったから今後こう言った研究が行われる事は無い」

 

「……うん」


 安心させるように言ったがアイリスの悲しげな様子が晴れそうに無かったので頭を撫でてやる。


「本題に戻るが…俺が部隊を抜けたのは関わってた組織の詳細を調べる為で俺個人の理由だから抜けた…そうゆう訳だ」


「…じゃあ、なんで俺達を頼ってくれなかった?」


 ジークから問いかけられた疑問に、少し溜め息を漏らす。


「さっきも言ったろ?、個人的な理由だからだ…そんな事で国のーーましてや組織の人間を使う訳にはいかねーだろ?」


「ボスが相談してくれたら俺達だって一緒に調べたり、…なんなら除隊だって考えーーー」


 俺はジークにストップをかける。


「はぁ…お前達ならそう言うと思ったから敢えて言わなかったんだよ…いきなりNo.トップの部隊がごっそり抜けてみろ、誰がNo.を影から監視したり裏仕事を遂行するんだよ?それに多人数で調べでもしてみろ…必ず何処かで相手に勘付かれるのがオチだよ」


 部下達の実力を信頼してない訳では無いが1人の方が動き易くて色々と都合が良い事もあるのだが敢えて起こりうるであろう可能性を話す。

 俺の正論にジークは言葉を返せずそれ以上は何も言ってこなくなった。


「ところでボス?アイリスをどう言った名目で引き取るつもりですか?」


 ナオミがアイリスの今後について詳細を聞いてくる。

 先程までナオミも異を唱えたそうな感じであったが俺の答えに納得したのか気持ちを切り替えている…流石大人の女性って感じだ。


「あぁ…それは不自然さが無いように()()()()()()で……」


 そこまで言いかけるとジークやレオ、うっちーは驚くと突如ナオミからピシッと何かがひび割れる音が聞こえる。


「……それはどう言った事でしょうか?」


 ナオミは笑っているが何故だか凄く目が怖いんだが…何故?、そして横では密かに小さくガッツポーズを取るアイリス。


「い、いや…何故って」


「他にも打開策が色々あったと思われますが、何故許嫁か婚約者なのですか?」


 鬼気迫る顔を近づけて問いかけて来るナオミに俺は口籠もってしまう。

 何とかこの状況から助けてもらおうとジークやレオに目線で助けを求めるが2人は視線を逸らすのでうっちーにも助けを求めようと視線を向けると2人と同じ様に視線を逸らされる。


(こいつ等…今度覚えとけよ…)


 ナオミにとりあえずアイリスを天ヶ崎家で引き取る理由にこじつけて無理矢理納得させるが本人は不満そうにしている。

 ちなみにナオミに説明して何とか納得してもらうのに1時間以上費やした。


「分かりました……」


 ナオミはそう告げアイリスに笑みを見せるとアイリスも返事を返すかの様に笑みを返す。

 ……おかしいな、2人の間に何故か火花の様な物が見える様な気がする。

 触らぬ神に祟りなしって言うし放置しよう…てか、もう放置させて…話進まんから。


「まぁ、とりあえず今後の事はまたうっちーには話するから俺が言いたい事はそれだけ」


 とりあえず2人を放置して話を進めるとうっちーもあ、あぁ…と2人の様子に引き気味に相槌を返す。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






 それから数日が経った後、天ヶ崎家の朝。

 天ヶ崎家長女である律華はベットから身を起こし背筋を伸ばす。

 あの事件の後暫く学園は休校という事もありある意味彼女にとって休みであるのだが、朝早くに起きるという習慣が身に染みており必ず同じ時間に起きてしまうのである。

 時間を確認するがまだ朝の6時前である。

 彼女は二度寝でもしようかと思案するが…。


「流石にだらしないわね…」


 そう言ってベットを抜け出して着崩れたネグリジェを脱ぎ私服に着替える。

 室内の大カーテンを開けるとほんのりと朝日が差し込む。


「…いい天気ね」


 そう呟いた彼女は一階にあるキッチンに向かいここ毎朝、最近のルーティンであるコーヒーを淹れに向かう。


「それにしても昔から変わらず思いますが…我が家って無駄に広いから些か面倒なのよね…」


 部屋は何十室もあるが住んでるのは両親と妹、自分と咲や執事長の6名で殆どの部屋はあまり使われずにいる。


「おはようございます、律華様」


 考えても無駄な家の大きさについて思っているといつの間にか目の前にメイド長の咲が廊下の端で挨拶をしながらお辞儀をしている。


「咲さん、おはようございます」


 いつも通りに挨拶を返すと咲は今日もコーヒーを自分でお淹れになられるのですか?と問いかけてきたので、えぇ…と答えを返す。


「その様な瑣末な事などお申し付け頂ければ私が直ぐお淹れしてお待ちしますのに…」


 咲が珍しく少し不服そうに言うと律華はふふっと笑みをこぼす。


「そうね…確かに貴女の仕事をとってしまって申し訳ないけど、なんだか動いていないと落ち着かなくて…それにこの後、自室で書類や仕事を片さないといけないからまたその時には貴女に頼みますわ」


 その言葉に咲は畏まりました…と言ってお辞儀をすると律華はそれではまだ後ほどと彼女に言い残してキッチンに向かう。


「ふぅ……」


 溜め息を漏らしながらコーヒーメーカにお気に入りのブランドを入れて抽出を待っている間、律華は物思いに耽る。


(あれから1週間になりますのね…)


 テロリストによる学園襲撃から1週間が経ち色々な事があの事件で起きまだ頭の整理は追いついておらず、学園の方の処理や対応も忙しいが1番衝撃的な事なのが……。


「ーーー優人が生きていた事…」


 弟が生きていた事は何より嬉しいが、何故あんな真似をしたのか…そしてその間一体何をしていたのか全く分からず、頭を悩ませる要因の一つである。

 抽出が終わったのかコーヒーの香りが鼻腔を突いたのでごちゃごちゃ考えてた事を一旦忘れてコーヒーをカップに注ぎ自室に戻る。




 いつの間にか時間が経っていたのか日もすっかり上り、部屋には朝日が先程よりもテラス窓から差し込み外が明るくなっている。


「気候が良さそうですし、折角なら…」


 そう言ってテラス窓を開け風通しを良くすると使い慣れたノーパソを持ちテラス席で仕事を始める。

 先程淹れたコーヒーを片手に仕事の案件を片付けていると部屋の扉からノックが聞こえる。


「どうぞ…」


 ガチャリと部屋の扉が開かれると、そこには寝ぼけ眼の琹が部屋に入ってきた。


「おはよう、ございますねぇさま……」


「あら…珍しいわね、貴女がこんな時間に起きるなんて」


 そう言ってみるが、琹は今にもまた寝そうになっておりコクリと首を揺らしている。


「もう…琹、シャキッとなさい?」


「ふぁい……」


「栞は相変わらず朝に弱いわね…後、女の子なのですから服装の乱れくらい気にしなさい?」


 律華は呆れ気味に先程から目につく栞の服装の乱れを指摘する。

 彼女は現在、ネグリジェを着ているが今にも両肩の紐がずり落ちてパンツ一枚になりかけている。

 そんな事など知らず栞はウトウトとしているので律華はテラス席から立つと栞の元に向かい服装を正す。


「はぁ、全く…朝だけは手がかかる子なんだから…」


 学園でのしっかりとした振る舞いはどこに行ったのやらと溜め息混じりに考えると、栞が急に抱きついて来る。


「ねぇーさまー」


 多分寝ぼけているのだろうと思うのだが嬉しそうな腑抜け面を見ると可愛く見えてしまう。

 そんな愛くるしい小動物の頭を撫でると彼女も嬉しそうにえへへーと喜んでいるので可愛さ倍増である。

 

「全く…咲さんは居るかしら?」


 律華は何気なく呟くと部屋の入り口からスッと咲が音も無く現れる。


「お呼びでしょうか、律華様」


「貴女は相変わらず凄いわね…」


「メイド長たるもの当然の事です」


 自信満々に言う咲に苦笑する律華。


(いや…普通は出来ないと思うんですけどね)


 そんな事を思っているといつの間にか栞は律華に抱きついたまま寝ている事に気付く。


「咲さん、すみませんが栞を自室のベットまで運んで寝かしといてもらえませんか?」


 可愛い妹の寝顔を見ていたい気もするがこのままだと仕事が進まないので咲に栞の事をお願いすると彼女は承りましたと言って、栞をそっとお姫様抱っこして栞の部屋に向かって行った。

 それを見届けると律華はテラス席に再び座りコーヒーを楽しみながら朝食の時間まで仕事をこなしていくのであった。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






 朝食の時間…いつもと変わらずの光景。

 父が真ん中の席に着き私と琹、母が向かい合う形で長テーブル着き食事を摂っている。

 壁際には咲さんが立って待機している。

 今日、少しだけ違うのは父と母が何故かイキイキとしている点…何かあったのかしら?と思ってしまう。

 いつもならまるで冷め切った家族みたいな感じの食卓なのに…。

 ふと、扉が開くと執事長が扉を開けてティーワゴンを押しながら入ってくる。

 咲さんの淹れる紅茶も絶品だが執事長の淹れる紅茶も引けを取らず絶品なのである。

 普段特段気にしないが、ふとティーワゴンに目をやるとカップが5つ用意されている。

 今日、お客様でもこの後に来られるのかしらとなんて思いながら再び食事に目を向けると隣から力無くカトラリーを食器の上に落とした音が聞こえ、その場の全員が落とし主に目を向ける。


「珍しいわね…どうしたの?」


 私は珍しく落とした栞に問いかけるが彼女は目を大きく見開き硬直した様に目の前を見続けている。

 あまりにも反応が返ってこず、目の前ばかりを見て硬直してるものなので全員が視線の先に顔を向ける。


『ーーーえっ!?』


 その場の父と母、執事長以外の全員が同じように驚く。


「ゆ、ゆゆっ、優人?」


 目の前ーーー母の1つ隣の席にはいつの間にか優人が座って寛いでいた。


「おはよう、姉さんに琹と咲さん」


 何事も無かったかのように挨拶してくる弟に対しえっお、おはよう?と疑問形で返してしまう。


「ーーーって、そうじゃ無くて優人いつの間に帰ってきたのよ!?」


 らしくもなく大きな声を出して問いかけてしまった。

 ちなみに栞は尚もフリーズ中。


「昨日の夜に帰ってきましたよ…その後父さんと母さんに捕まって抱き枕にされて寝させられましたけどね…」


 そう答える優人をよくよく見ると少しやつれてる様にも見えた。

 どうりで今日の父と母がイキイキしていると思ったと思っているとフリーズ中だった栞が解凍されたのか椅子を後ろに引いた後、脱兎の如く優人に向かって駆けて行く。


「にぃぃぃぃじゃばぁーーーーっ!!」


 優人はそう叫び大泣きしながら強烈ダイブする栞を優しく受け止めるが一瞬ごふって声が聞こえた。


「……ただいま琹」


 そう言って優人は栞の頭を優しく撫でる。

 一瞬、私だって優人に飛びついたり抱き枕にするの羨ましい…とは思ったものの我慢する。

 ちなみにこの後食事どころの話では無くなり栞が泣き止むまで優人はずっと頭を凄く優しい顔で撫でていた。



〜〜〜〜〜〜〜〜



「兄様……ごめんなさい、お見苦しい所をお見せしました……」


 すっかり泣き止んだ後、隣の席に座って顔を真っ赤にする琹に優人は栞の涙や鼻水などでびちゃびちゃになった服を拭きながら大丈夫…うん大丈夫と答える。

 何故か父と母、執事長はハンカチ片手に涙を拭っている様子。

 父と母に何で朝に言わなかったの?といった疑問もあるが後で聞こうと今は我慢する。


「優人…あなた今までどこで何をしていたの?」


 優人に色々と聞きたい事はあるが最後に会ってからこの1週間何をしていたのか疑問をぶつけてみた。


「あー、とりあえず今回の事件の経緯や事後処理の手続き、書類処理や諸々の事を内山首相と話してた…て所かな」


「……それで1週間もかかったと?」


「まぁ、手続きもあるし他にも色々とあってそれを終わらしてたらいつの間にかギリギリになって帰って来たって訳です」


 優人の説明におかしな所は無いが何か違和感を感じてしまうが一旦保留にするしか無いと思う。

 もし今は話せない事ならきっと話せるようになったら話してくれると信じていたからだ。


「姉さんが今思ってる違和感は当然だし隠すつもりは無いけどその理由については後で皆んなに言うから」


 どうやら優人は人の心を読むのが得意になったらしい……。


「……良く分かったわね?」


「まぁ、一応これでも姉さんの弟ですから」


 優人の返しに思わず嬉しさと懐かしさが込み上げ自然と笑みが溢れてしまう。

 何せ2年前にはこうやって話す事が出来ないと思っていた未来(いま)が目の前に存在しているのだから。


「…姉さん?」


 優人が心配そうに声をかけてくるので何事かと思ったら頬に伝う感触があり触ってみる。


「あれ……私……」


 私はどうやら気付かない間に涙を流していたみたいだ。


「姉様……」


 栞も私が涙を流している事に心配そうに見てくる。

 どうやら私も気付かない内に限界だったみたい……いつの間にか席を立ちそして………。


「ゆうぅぅぅとぉぉぉぉ!!」


 決してもう2度と失いたく無いと目の前の現実(ゆうと)を強く抱きしめた。

 暫く優人を強く抱きしめていると……。


「姉様!兄様が!!」


 栞の呼びかけにふと我に帰ると優人は私の胸の中でピクピクと死にかけていた。


「ご、ごご、ごめんなさい!?優人?優人大丈夫!?しっかりして!!」


 ぐったりしている優人の安否を確認しあまりの動揺に目を覚ますまで揺さぶっていると父や母から笑いが漏れそれに釣られて琹も笑ってしまう。

 久しぶりに家族が笑顔になった瞬間であり、その幸せそうな笑いは暫く部屋に響くのであった。

 




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





 あー…死ぬか思ったわ。

 危うく身内に窒息死させられた挙句、犯罪者出す所だったよ……。

 え?女性の胸の中で死なぬなら本望だって?いやそんな事で死んだらマジで間抜けすぎて泣けてくるわ。

 それに自分の姉の胸の中で死ぬなんて……それこそどうなんよって話だし。


「ーーーそれで姉さん落ち着きましたか?」


「……えぇ」


 妹の琹と同様に落ち着くのに時間を要してしまい中々本題に入れずにいた。

 まぁ…時間はあるのだから良いんだけど。


「優人……ごめんなさい」


「気にしなくて良いよ……だけどいくら家族の前だからと言って人の目は気にして欲しいかな」


 俺がそう指摘すると姉さんは少し気不味そうに目を逸らし顔を赤くする。


「まぁ……とりあえずこのままだと話が脱線して本題に入れないから話を進めたいんだけど………」


 そう言って自分の両隣を見ると栞と姉さんががっちり俺の腕をホールドして離してくれない……。

 うん……分かったから一度離そうか。


「とりあえず、栞と姉さん離してくれません?……この状態で話すのしんどいので」


 そう言って2人から腕を振り解こうとすると2人は余計にぎゅっと腕を抱き締めてくる。

 あの…マジでやめてくれません?色々と立派な物が当たってるので……。

 離す気が無さそうなので無理矢理離さして席を立つと捨てられた子犬の様な目で見てくる……やめて罪悪感しかないから。


「暫くはこの屋敷にも居るので話し終わった後で良いなら2人に付き合うのでそれで許してください……」


 罪悪感のあまり2人にそう言うと2人は顔を明るくして喜ぶ。


「ようやく話進められる……咲さんと弦さんも2人共席に座ってくれませんか?」


 俺が咲と弦さんにそう伝えると2人は何故と言った感じに俺を見るが俺は黙って父を見る。父も2人に席にかけなさいと言って座るように促すと失礼致しますと言って同席する。

 全員が俺に顔を向けるのを確認するとスイッチを切り替えるように真剣な面持ちで話始める。


「今から話す内容は2年前に本当は何がありNo.の人間となったかの経緯を話します。ただ……話す内容は国家機密レベルの内容です、今後何かしら命の危機や政治的な物も関与して来ます……その覚悟がある者だけこの場に残りそうで無い者はこの部屋から退出して下さい」


 そう告げて暫く待った後、一同を見渡すが誰も席を立つ気配は無く静かに俺が話し始めるのを待っている。


「では……僕、いや俺がNo.0(ゼロ)になった経緯と2年前の真相をお話し致します」


 俺は2年前の出来事とNo.に入った経緯を話始める。

 アラミスト研究所に拉致された事や人体実験の内容、俺の左目が実験により移植された事。

 話している途中、聞いていたその場の人間はあまりの現代ではあり得ない悲惨な話に悲痛な面持ちになって母や栞はすすり泣いている。

 

「ーーー真相は以上です」


 俺が話を終えると食堂の空気がお通夜状態で座って聞いている全員の表情が曇っている。

 心情は察するけど……起きてしまった事はどうしようもないし過去の事だからあまり気にしないで欲しいものだ。


「そうか…辛かったろうに……」


 父さんがそう呟く。


「別に終わった事だから……気にしてないよ」


 俺自身ももう気にしてないが、それでも組織を追いかけるのは今後家族に魔の手が及ぶ可能性もあるからである。

 調べている内に分かったのは姉さんと琹が研究内容までは不明だが対象(リスト)に入っていた事だ。

 この事については今は言うべきでは無いと判断して話は伏せている。

 2人には今後穏やかに過ごして欲しいからであり狙われていると知れば毎日怯えて暮らさないといけなくなる……そんな事は絶対にさせないし、もしなりそうなら片っ端から潰していく覚悟である。


「ところで……父さん、母さん」


 俺が2人に声をかけるとどうしたのかと尋ねるようにこちらを見る。


「紹介したい人物が居るんだが……」


 俺がそう告げると2人は……


「まぁまぁ……ゆうちゃん、お嫁さんでも連れて来たの?」


「何!?どこぞの馬の骨かも知らんやつに優人はやらんぞ!!」


 などとほざき始める。

 先程のお通夜の空気はどこ行った……後、父さん……そのセリフは俺の為に言うセリフでは無い。


「とりあえず…紹介するよ……彼女はアイリス、俺の元部下です」


 俺が紹介すると全員首を傾げる。


「紹介するも何も私達以外誰も居らんが……」


 父さんが困惑気味に話すと俺は対面に座っている全員の背後を指差す。


「父さん達の背後にもう居ますよ?」


 全員が背後を振り向くと、そこにはレースが装飾された黒いワンピースが映える肌の白い少女……アイリスが立っている。

 確認した瞬間、咲が並ならぬスピードでアイリスと仕える一家の間に入り臨戦態勢を取る。


「初めまして、天ヶ崎家御当主様と奥方様……私はボス……優人様の部下でしたアイリスと申します。この度は優人様と婚姻する事となりご挨拶に参りました……以後お見知り置きを」


 アイリスはそう伝えるとスカートの裾を摘み上品にお辞儀をするとお互いに長い沈黙が流れて……。


『え……えぇぇぇぇぇぇっ!!!?』


 全員が驚きに絶叫を挙げたのであった。

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