Prologue〜過去の報告書〜
プロローグでふっ!
昔、子供の頃に俺は両親に頼み込んでテレビのCMをきっかけに映画を家族と見に行ったんだ。
その映画は最強のエージェントがカッコ良く任務を遂行する単純な内容で家族は微妙だったらしいが俺は目を終始キラキラしてたよ。
1番良かったのはエージェントが敵に包囲された時にスタイリッシュに敵を無力化して包囲を突破するシーンは今でも忘れない。
アレはもう惚れたな。
俺はもうその時心の中で決めたよ、いつか俺も将来あんな最強のエージェントになりたいと……。
だけどまぁ実際、現実は上手くいかないもんだ。
「……ったく、昔見た映画みたいに上手くいかないもんだな」
今の俺は上空、約12,000フィートを飛んでいる軍用ヘリからマイアミの夜景を観ながら呟く。
「仕方が無いだろ?ボスが潜入ドジっちまったんだからな」
ヘリで隣の席に乗っているガタイの良いスキンヘッドのグラサン野郎が嫌味ったらしく俺の所為にしてきやがる。
俺はただ潜入先で標的に苛立ちを覚え機嫌が悪くなった結果うっかり仕掛けたC 4爆弾を起爆しただけなのに。
「俺の機嫌を損ねたアイツらが悪い」
「……………」
グラサン野郎、ジークは何か言いたそうに俺を見つめてくる。
「んだよ?」
「…いや、なんでボスがこの職業を続けれていれるのか不思議でな」
「ハハッ…喧嘩売ってんのかテメェーは?」
ジークは溜め息混じりにヤレヤレ感を出しながら降参ポーズを決め込む。
その行動に俺はいつかコイツを海に沈めると心に誓った。
「…ボス」
ふと、もう一人の搭乗者が声をかけてきたので俺はジークから声の主に視線を向ける。
「んだよ?アイリス」
絶賛ご機嫌ななめの俺はあからさまな態度で返事をしたが声の主はクリーム色のロングヘアーからクールな…と言うより無表情で視線をこちらに向けている。そしてその白い肌に良く似合うサファイア色の瞳で俺を数秒見つめると俺の心情など気にせず淡々と告げてくる。
「……そろそろ時間」
「ん、もうそんな時間か」
「早く行かないと、御上にまた怒られる…」
すごく嫌なのか無表情から少しだけ表情を変えてジト目でこちらを見つめる。
見た目が小さくロリっぽいが俺と同い年であり更に美少女なので普通に見つめられるのは気恥ずかしい。
スタイリッシュなエージェントを目指している俺はその気持ちを隠すようにアイリスに相槌をする。
「はいはい、行きやすよ」
「…ん、がんばってね」
珍しくアイリスが人に激励してくるので俺は冗談混じりに答える。
「アイリスが珍しいな…明日は雪でも降るんじゃないか?」
「…二度と言わない」
どうやら冗談が通じず機嫌を損ねたらしい。
「悪りぃな、許してくれ」
俺はアイリスの頭を撫でながら謝罪する。
アイリスも撫でられるのは嫌いじゃないのか無表情だが満更でもなさそうな雰囲気を出している。
「……許してあげる」
どうやら巷のちょろインである。
「ボス、マジで時間ねぇーぞ?」
今度はジークが本当に時間が迫っているので急かしてきた。
俺はアイリスの頭から手を離しヘリの後部扉をスライドして開いた搭乗口を背に2人に視線を向け声をかける。
「んじゃ、行ってくるわ」
俺はそう言い残し見送る2人を見つめながら、そのまま背中から12,000フィートの空に身を投げる。
(本当この仕事ってあの映画みたいに潜入ってままならねーな)
などと自業自得なのに自分の所為では無いかのように考えながら空をダイブし、標的の元を目指すのであった。
〜数時間後〜
「あーーーっ、しんどかったぁぁ!!」
「お疲れさん、ボス」
「…ボス、お疲れ様」
仕事を終えた俺はとある埠頭で2人と合流する。
「んじゃボス、報告の電話」
ジークは言い終えると携帯端末と缶コーヒー投げ渡してくる。
俺はそれを受け取るとジークに一休みくらいさせてくれよと思いながら気怠く返事をする。
「はいはい……分かってるって」
缶コーヒーを開けて飲みながら、報告の為ある場所に電話をかける。
プルルルルル……
プルルルル……
プルル…
「もしもし…」
3コール目に電話越しから聞こえる男性の威厳ある声。
「あー、もしもしうっちー?」
俺は電話越しの相手を愛称で呼びかけると相手は溜め息混じりに話しかける。
「…まったく、No.の中で私をそんな呼び方するのは君以外居ないよ」
「ハハッ、褒めても何も出ねぇーぞ?」
「褒めとらんよ………」
ジークとアイリスはボスが電話越しの相手に軽口を叩きながら話している光景に冷や汗ものである。
何せボスが今、電話越しで話している相手は現在の日本のトップ……つまり内閣総理大臣である。
そう易々軽口を叩いて良い相手では無いし御上でもある。
二人は深い溜め息を吐き、大丈夫かなと思いながら胃が痛くなるのであった。
「さて、報告を聞こうか…」
「まぁ、とりあえずうっちーが要望した通りにはなったぜ?」
「…そうだね、君が感情に身を任せて爆破しなければもっと簡単だったと思ったのだが?」
「…それはアイツ等が悪い」
「君ね…少しは反省――」
俺は煩わしくなって、総理の話を切るようにあー、はいはいとだけ伝えた。
暫く話した後、俺はつい最近今日まで考えた決意を話し始める事にした。
「…内山総理」
「どうしたね、急に改まって?」
急に俺が改まって話しかけてきたので内山総理が何があったのかと心配そうに問いかけてくる。
会話を聞いているジークやアイリスも同様に心配そうに俺を見つめてくる。
「俺、この仕事今日限りで辞めるわ」
「……………へ?」
俺が伝えた事の内容が重大過ぎて理解できなかったのか内山総理は思考が数秒停止して内容を理解できると素っ頓狂な声をあげた。
『えっ!?』
勿論、この場に居たメンバーも初耳だった為、驚きの内容に揃えて声を出してしまう。
「とりあえず機密系の物は隠蔽して伝手の郵送業者で全てそっちに送ったから、後はそっちで処理して下さい」
「ちょ、ちょっとまち――――」
プツッ…ツー…ツー…ツー
これ以上詮索されたり引き止められると面倒なので
言う事だけ言って電話を切った。
直ぐ様、嵐の様に首相官邸から電話がかかってくるが無視を決め込み海に全力投球で携帯端末を投げ捨てる。
(よし!これで大丈夫、一件落着だ)
心の中でガッツポーズを決め込んだ俺は振り返り2人に視線をやるとジークは信じられないのか間抜けづらな顔でアイリスは怒っているのか少しムクれてジト目でこちらを見つめる。
「と、言う事だから」
そして二人に説明するのも面倒なので説明を大幅に省き、その場から立ち去ろうとするとジークから待ったがかかる。
「いやいやいや、ちょっと待てよ!と、言う事だからじゃねーよ!そんな話聞いて無いぞボス!?」
「だって今言ったしな、じゃあ俺はもう行くぞ」
「だからと言って……」
ジークは食い下がろうとするが、俺はそれを無視して再び歩き出すと今度はアイリスが両手を広げて立ち塞がる。
「ボス、それじゃ筋が通らない…他の仲間も黙っていない。ちゃんと説明してほしい……」
アイリスは俯いている為顔が見えないが相当怒っている様に感じる。
まぁ、予想はしていたが俺は冷たく突き放す。
「んなもん、知らねぇーよ。お前等や他の奴等も問題児達の寄せ集めの部隊に想い入れも無ぇーだろーし、そもそも人が除隊するかしないかは勝手だろ」
「…ふざけないで下さい」
アイリスは俯いた顔を上げ俺を見つめる。
その瞳には涙が溢れ、頬を伝って落ちていくのが見える。
「確かに私達はボスに拾われた身で寄せ集めかもしれません……ですが私達だってこの部隊や仲間…ボスにだって沢山想い入れがあります!」
部隊に配属してからあまり感情を表に出さないアイリスが涙ながら感情に任せて声を荒げ、話を続けてくる。
「…私達や皆んなボスに会うまで色んな問題を抱えて時にはボスと敵対する事もありましたが、それでもボスは私達皆んなを見捨てず、手を差し伸べてくれて…ボスに拾われて良かった…一生ボスについて行こうってそう想ってボスの事を慕ってた私達にそれでも思い入れが無いと?…そしてちゃんと除隊する理由も教えてもらえ無いで私達が納得出来ると思っているのですか?」
「…………………」
俺は心苦しくなるが沈黙を貫く。
「…それとも私達はもう力不足でボスの役に立て無いから愛想を尽かして切り捨てるつもりで除隊するのでしょうか?」
「…………」
「答えて下さいっ!!」
アイリスの悲痛な質問にどう答えるか悩む…仲間は俺にとって命以上に大事な存在であり過去一度もそんな事は思った事が無いし、よくこんな俺に慕って今まで付いてきてくれたと思っている程である。
俺個人の下らない理由で勝手に除隊するのは裏切り行為だが、だけどその本当の理由は言えないし言えばコイツ等も地位や名誉、財力を捨てて危険を顧みず付いて来ると言い出しかねない。
だから、平然を装い敢えて冷たく突き放し卑怯な手を使う事にした。
「…そうだ、お前達にもそろそろ愛想を尽かしたしな」
心にも無い事を平然を装い告げる俺ってスタイリッシュじゃないしサイテーだな。
「だが、それだけ言うなら2人にチャンスをやるよ」
そう言うと2人が俺の顔見つめるが今から言う事は本当に卑怯でコイツ等には絶対できない事である。
「隊の代表として今から今から俺を無力化して拘束し連れて帰れたら除隊する事は取り消す」
『!?』
2人はその言葉を聞くと険しい顔になる。
俺はコイツ等が手を出せない事を理解している。
勿論、部隊の長って事もあるかもしれないし恩義とかもあるかもしれないが何より俺は自分で言うのも恥ずかしいが世界最強らしいそして本気で殺り合えば確実にジークとアイリスは死は免れない。
だからこそ、この卑怯な提案を出したのだ。
『…………………』
長い沈黙が訪れる。
2人は自分等の敬愛するボスの力がどれ程の物かを間近で見ているから理解している。
だからこそ動けず言葉も出ない。
ただ、黙って立っていることしか出来ない。
「…じゃあな」
俺は今度こそ最後の別れを告げ立ち去る。
2人はその光景をただ黙って立ち見送ることしか出来ない。
アイリスが意を決してボスの服を掴もうと手を伸ばすが届かずただ涙を流すしかなかった。
「……すまない、こんな別れ方になってしまって」
俺は深く後悔しながら誰にも聞こえない程の声でそう呟きその場を去って行くのであった。
優人:いくら個人的な理由だからって最低だな
???:うん可愛いおなごを泣かせるとは最低じゃな(笑)
優人:誰だっ!?
???:うむワシはこの世界を作っている神様じゃい(笑)
優人:・・・・
神様:どうした?感動に打ち震えて声も出せna・・・
優人:パンパン(無言で銃を撃ち込む)
神様:な、何故・・・・ガクリ
優人:テメェ抹殺すればこの世界を思い通りに出来そうだからな(笑)
神様:・・・・・
優人:神は死んだって事で最後までご愛読ありがとうございました。
次回からこの俺がスタイリッシュに完璧且つ楽に活躍する様を見届けてくれ。