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相崎イルエの恋敵

これは、ハシラのパートナー、故。と特級の雑談パートである。



わたくし、相崎イルエと申します。

以後お見知り置きを。


わたくしの仕事は万様のお力になる事。

つまるところあの若造供の抹殺ですわ。

トップ10は潰して潰して、皆殺しですわ。


失礼。

少し語気を強めてしまいました。

許してくださいまし?


さて、わたくし今は特別区のスーパーに買い物に来ている訳ですが……


「あれ?イルエじゃん。覚えてる?故だよ。昔、よく一緒に遊んだ故だよ?」


邪魔者が入ってきましたわ。

しかも、よりにもよって主人公シリーズの悪魔とは…。

喪部役のわたくしが最も嫌う女ですわ。


「イルエ?どうかした?もしかして、お腹空いてる??」

「貴女に言われたくはありませんわ。"暴食"女の貴女には。何故、貴女がこの特別区に居るのか、まず、そこから聞きたいですわ」


嗚呼。

許して下さいまし。万様。

わたくし、汚らわしいトップ10の悪魔と日常会話していますわ。

無視しても、この女の権能で面倒な事になるのは明らか。ですので、これ以外の道が無かったのですわ。


「ううー。聞かれたくないこと聞くのね、流石イルエだわ」


銀色の髪を手でかきあげながら、故は言った。その一つの動作があまりにも美しく、スーパーの家族連れの客が振り返って二度見していた。

もちろんわたくしもガン見しましたわ。


悔しいけれど、やはり艶やかで大人な印象を受けてしまいますわ。

世の中の一般的な男どもはこの妖艶さに騙されるのでしょうね。

べっ、別に、わたくしはその銀色に輝く髪を撫でてあげながら愛を囁きたいとか思ってないですわよ。


「あ。今、いやらしい事考えたでしょ?んー?もしかして、髪型フェチ?」

「うるさいですわね。そうやって近づいて来られると、抱きしめてあげたくなりますわ。いい香りのする貴女に非がありますのよ?」


ヤバイですわ。

万様。わたくし、やはり故が、欲しい。ですわ。


「故。やはり、あのモヤシとは別れる気は無いのですか?わたくしの元に来れば、不自由しないでしょうに」

「いいの。わたし、絵心の事、好きだし…」


ええええ!?

言いやがりましたわ!?

この小悪魔!?


「ち、ち、違いますわよね?わたくしの聞き間違いですわよね?今、なんと?」

「え?言ったよ?好き。好きなの。絵心の事が。だーいすき!」


……。

強い衝撃を受けましたわ。

この脳内花畑暴食悪魔ッ!!

もはや、属性が多すぎて、わけわからんですわね…。


恋敵の名前、改めて恨めしく思いますわ。

木主場絵心…。おそるべし…!


「木主場絵心…。恋敵の名前。わたくしの敵…。故を奪った憎き男…。赦すまじ…」

「あのー?イルエ?何、ぶつぶつ言ってるの?……怖いよ?」


一息。


「さて。何故貴女が此処に居るのか?聞かせてもらいますわよ」

日本でも屈指の店舗数を誇る"どとーる"チェーン店の一角で、わたくしは尋ねてみる。

返答は意外なものだった。


「そんなの決まってるよ。敵情視察。まあ、はっきり言えば、わたし達トップ10の救おうとしている人たちがどんな暮らしをしているのか?という疑問を解決するためだね」


「そんなこと、下っ端にお願いすればいいのでは?」


率直な疑問を口にするわたくし。


「だめなんだ。わたし、いや、私たち自身の目で見ないことには」


故の目は本気で……。美しい意思に満ちた目だった。

とてもじゃないが、これは止められないと感じた。


「まあまあ、そんなわけで、そんな話。ところで、イルエ?私たちと勝負しない?」

「勝負?」


なにやら、故の目が悪戯っぽいモノに変わるのをわたくしの目は見逃さなかった。


「そ。どちらが、先にフランを見つけられるか?」

「は?なにを言っているのですか?フランの秘匿権能の情報を持っていない訳じゃ無いですわよね?」

「もちろん。名無しの権兵衛の名は伊達じゃない…でもね、私たちには今、ツグメが居るんだ」


ツグメ?誰だ?それは?


「そ。コシヨツグメさん。"盲目"の意向を持っている。いや、持っていた、と言った方が正しいか」


カラン。

アイスコーヒーの氷がグラスの中で音を奏でる。


「また、何か隠すのですか?秘密はなしにしてくださいまし」

「ずーーーっと、欠番だと思われていたトップ10のひとりが見つかったんだよ。なんと成人式と関わりが無い子供だよ?」


むーー。読めてきましたわ。

わたくしが知らない人物ということは、理由があるはず…。


「そのツグメという方も秘匿権能を使えるということですか?」

「そういうこと。暴走して、絵心に止められる羽目になったけど。全く、恋する乙女は怖いね。あ、わたしもか」

あははは。と笑いながら頭を掻き出す故。

なんだか、複雑な理由があるようですわね。

なんて思いながら、アイスコーヒーを口に含む。

それと。

なんて前置詞を置いて故は衝撃的な新事実を口にした。


「絵心、意向を吸収できるみたいなんだ。それも、ストック可能らしいよ」


ブハッ!?


「い、い、意向を!?取り込める!?という事ですか!?」

思わず、大声で聞いてしまった。


何事か、と、訝しげに周りの買い物客に見られてしまった。


小声でもう一度聞く。


「意向を吸収って!?万様でさえ難しい…そんな離れ業を…あの非戦闘員ごときに?」


「信じられないよね。うん。わたしもまだ、半分くらい疑っているのが本音だよ」


「意向とは、その人間の核となる幹みたいなものだ。それをスティールするなんて事したら、元の人間はどうなるのか?それが一番の懸念事項なんだけども」


一息。

ふーー。


「どうやら、絵心は意向を奪うというよりは、分解して、その一部を間借りしているらしいんだ…。あ、秘密ね。この話。イルエだから話してるんだよ?」


信頼されるのは嬉しいが、そんな秘密、抱えるのがつらいですわ。

そう、素直に思った。



次は、本筋のお話を書いていきたいです。

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