ヒーローになるため
英傑
ヒーローは君だ。
そんな事が書かれたポスターを見上げる。
わたしの名前は次空飛石。
とある事がきっかけで、不思議な力とトップ10の地位を手に入れた。具体的な説明は後々する。
わたしは重要仁仏の役柄についている。らしい。
トップ10には役柄と呼ばれる番号とは別の称号が与えられる。
ちなみにわたしの番数は第3だ。
そもそもトップ10とは何か?
20歳を迎えた若人、詰まる所、成人式を迎えた心を取り戻した10人のことである。
現在、日本は特級と呼ばれる存在に支配されている。
その支配を打ち砕くため、心を返してもらうため、自然発生したのがトップ10だと言われている。
わたしの夢はヒーローになることだった。
だから、、、
「絶対に皆を笑顔にするのがわたしの目標なんだ…」
自室の壁に掛けられた古びた時代遅れなポスターに向かって呟いた。
心を失っていた頃はよくわからない意味合いだった、映画ポスターの言葉が胸に刺さったのだ。
「うん。かっこいいわぁ。やっぱり、英傑の絆、の名言……」
うっとりと言った様子でわたしは悶えていた。そのままベッドに倒れ込む。
「はああああぁ…。素敵。この映画から、英傑シリーズは始まったのよねぇ…」
あ、なんかスイッチ入っちゃう。
「姉貴ー?ギシギシうるさいんだけども?また独り言ー?」
階段下、一階から弟の小白の声が聞こえてくる。
「あーー。ごめーん!」
慌てて返事をするわたし。
「まーー。いいーけどさ。いつものことだし」
ふー。危ない危ない。わたしの性癖がバレてしまったら、大変だからね。
今日は休日、夏休みだし、もう一眠りしようかなぁ。なんて思った矢先、力が抜ける…
「怠惰じゃねえか?皆が頑張ってる時によ」
わたしのパートナー兼仲間の破仁が出現した。
「またか!この口うるさいおっさんは!」
人に頭を下げるのより、人に頭を下げられることの方が多くなったのはいつからだろう?
トップ10になってからは、どの人が上とか、あんまり感じがないが…。
あの人、を除いて。
「まーたか…。カタツカは、例外だって言ってんだろ。アイツは特別だ。異例中の異例だ。気にすんな」
「分かってるって。自分の価値ぐらい…」
「そうやって、またてめえを卑下する。ケッ、いやだねえ、近ごろの若人は」
そんなことない。と言おうとして、踏み止まった。
そうだった。破仁はわたしのことなら、手に取るようにわかる。
わたしは抗議の意味を込めて、
「わたしの心を読まないで!」
ちょっとだけ大声で言ってやった。
困った。という風に眉間にシワを寄せた初老のオヤジは不機嫌になる。
「しょうがないだろ。俺はお前の側面だし。しかもお前は俺の力を求めている」
「ヒーローになるための力とやらをな」
「そのためになら、なんだってする。だろう??」
わたしは自然発生的に首を縦に振っていた…