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3045  作者: みむめも
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白の遺跡 遺跡あらし

「逃げろー! ガーディアンだ!」

「お前! 何をしやがった!」

「うっさい! あんたが何かしたんでしょ!」

「喧嘩するな―! 走れ、走れ! とにかく、走れー!」

「うわぁー!」


 三人の男女が大声で喧嘩をしながら、懸命に腕を振り、足を上げて逃げる。彼らは追われていた。逃げる彼らについて少しばかり説明をしよう。


 いま彼らがいるのは、彼らが住む町から半日ほど歩いた距離にある黒き森の中、白の遺跡、成人の遺跡と呼ばれる建物である。


 ここは毎年、年替わりの十日に、黒き森の周辺にある大小10の町や村から、その年18を超え成人となる男女が己のマナを与えられる神聖な場所であった。そういった神聖な儀式を行う場所であることから、ここは儀式の日以外での立ち入りは固く禁じられていた。

 この建物が一体いつの頃からあったのか、近隣の町や村の長老と呼ばれる者達はそれを知らない。彼らが幼いころ、いや、生まれるより以前から、この建物は遺跡として存在していた。


 さて、逃げる彼ら中で、口汚く一緒に逃げる男を責めるひときわ背が高い女、アールは鍛冶屋の娘で今年18を迎える。彼女も逃げる2人と同じく町の悪ガキ集団をまとめ、頭を張る人物である。同じ年頃の男、どころか、大人に混じっても見劣りしないほど背は高かったが、体つきが非常に女性らしく、何処にいても男の目を惹きつけるような持ち物を持っていた。

 しかし、口を開くと鍛冶屋の娘らしく、相手が真っ赤になるまで罵詈雑言を浴びせる勝気な女で、負けず嫌い性格、そして、後々悩む弱さの持ち主であった。


 そして、それが災いして、現在、他の2人と一緒に遺跡の中を全速力で走り回っていた。


 きっかけはほんの些細な事であった。

 町には悪ガキの集団(アールが束ねているのはせいぜい10人ほどの小さな集団)が、いくつか存在した。このうちの一つをまとめる男が壮大な計画としてぶち上げたのが、この遺跡あらしの計画であった。


 何もしなくても、精々あと2、3年で成人の儀式を迎える年齢になるのに、この男は早く迎えることがいかに大事なのか熱く語り、挑戦する事が魅力的に見えるように大演説をした。

 大人たちが必死に守るものを手にしたい、駄目だと言われたものを暴きたいという欲求の強い年齢の悪ガキどもは一も、二もなくこの計画を称賛し、我も我もと参加表明した。


 町の多くの悪ガキたちが計画に参加する中でアールの集団にも声がかかる。しかしそれは、純粋な戦力目当てではなく、添えられる花、彩りを求めるためのもので、ニヤニヤとだらしない顔つきで声がかけられた。


 アールの集団はその全員がアールと同じような経歴の女性で、精神的に強く繋がれた家族のような集団であった。


 アールは職人の家系で長女として生を受ける。生まれてしばらくは自分が家をこの家業を継ぐのだと強く思っていた。だから、懸命に父の傍につき、その仕事、技を見て学び、それを少しでも覚えようと努力した。しかし、弟エースが生まれ、彼女が家を継ぐという道は断たれてしまう。


 女性として生まれたというだけで、それまでの努力が一顧だにされないという理不尽、そしてそれが当たり前だという体制の空気、彼女が社会に反意を抱くのは充分な理由であった。


 そんな彼女が同じような境遇にあえぐ集団に参加するのはごくごく自然であった。その境遇に苦しむ仲間とは家族以上に強く繋がれた。アールを受け入れた先にいた彼女たちは女性であると同時に個人が確立された人でもあった。


 アールもその組織所属することで、そういった個人が確立した人になれたかもしれないが、今少し時間が必要であった。アールには、彼女自身が気付いていない、人を惹きつける魅力があった。

 アールが変わるよりも、変わらないことが宣伝の効果を発揮して、アールの集団は大きく成長し、隠れていた人を惹きつけた。


 そういった人は良くも悪くも人を惹きつける。アールとその集団は女性のみであるという事以上に魅力的な集団であった。


 だからこそ、女性であることが求められる添え物、彩りの扱いに猛反発をした。しかし、断られた方はつまらない、面白くはない。男が女に声を掛ける事、それは九分九厘が下心である。

 振られたと周りに喧伝されるより先に、断られた理由を臆病風にとらわれたとして、やっぱり女だと言い切った。


 これがアールの耳に入り、彼女は激怒した。そして、仲間の反対を押し切ってこの計画に参加した。今の彼女の心の中は、口から出る言葉と正反対に深く沈みこんでいた。しかし、彼女の運命はここから大きく変わる。

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