第六十七話『竜騎士と火竜。竜騎士と竜王』
多少禍根を残したものの、竜契約の件は意外と何とかなった。
そうなると次は本格的にレべリングを開始していきたい。
しかしここで問題となるのがローシェだ。
彼女がどれほど戦えるかによって狩りの方法も狩り速度も変わってくる。
だから俺はローシェのステータスを見せて欲しかった。
そのことをルゥを通して伝えると、
「え? わ、私のステータスが見たいのですか?」
ローシェは少し戸惑っているようだ。
やはり他人にステータスを見せることは躊躇いがあるものだろう。
それでも彼女は最終的に承諾してくれる。
「……分かりました。私のステータスをお見せします。ど、どうぞ……」
そう言って両手を後ろにやり、ローシェは頬を染めた顔を俺から逸らした。
………。
ルゥの時もそうだったけど、どうして竜人の女性はみんなステータスを見られる時こんなにエロいの? (クルーエル除く)
……これ以上見ていたらちょっと変な気分になりそうなので、俺はとっとと彼女のステータスを確認することにした。
生物鑑定スキルを発動した瞬間、「んっ……」と漏れた艶っぽい声に気もそぞろになるが、俺は頑張って集中してスキルを発動させる。
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ローシェ 51歳 竜人族 女 レベル52
職業:飛竜(上級職)
筋力:1429
魔力:1430
体力:1212
防御:1323
敏捷:1987
魔耐:1308
成長率:人形態31
:竜形態38
ジョブスキル:竜化・炎のブレス レベル9・ドラゴンクロウ レベル8・ドラゴニックパワー レベル8・ハイスピード レベル10
個人スキル:白魔法レベル5・料理レベル8
ユニークスキル:王佐・愛・献身
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………。
……なんじゃこりゃ?
あまりのステータス内容に俺の思考は一瞬ストップした。
は?
何この圧倒的数値?
強いなんてもんじゃないぞ?
下手したらデコピン一発でスライムが吹き飛ぶレベルじゃないか。
しかもまだ、これは変身前のステータスなんだよね?
まあ、人形態の成長率が高いからこそこのステータスがあるのだろうが、それにしても……。
俺が呆気に取られているとクルーエルが言ってくる。
「畏れ入ったか? ローシェは飛竜族の天才児じゃからな。ま、当然じゃて」
……何故お前が得意げなんだ?
ローシェ本人の方が恥ずかしそうに背中を丸くしているのだが。
しかし飛竜族の天才児か……。そう言われて頷けるほどのステータス内容だ。
益々惜しい……。
クルーエルと契約出来た場合、ローシェに協力してもらって一気に下層に降りられれば、一瞬にして大幅なレベルアップが可能なのに……。
まあ、出来ないものは仕方がない。諦めよう。
それにしても51歳かぁ。
ちょっとだけ年上のお姉さんだと思っていただけに、この年齢は少し驚きだ。
見た目は十六、七歳くらいの少女なのに、俺よりも遥かに人生経験豊富。
よし、これからはもっと甘えてみようと思ったが、『甘える』なんてそんな高等テクニックはコミュ障に備わっていないことに気付いたのでこれまで通り接していこうと思いました。
それともう一つ。
ローシェは飛竜族の天才児とのことだが、そうなるとローシェの成長率を超えているルゥは火竜族の天才児ということになるのではないか?
………。
……もしかして、ルゥって竜人族の中でも凄い子なんじゃないの?
俺、そんな子と契約したんだな。
あらためてルゥのことが誇らしくなった。
ルゥの赤い鱗を撫でてやると『グルゥ』と気持ちよさそうな声を出したが、クルーエルが睨みつけてきたのでルゥはすぐに委縮してしまった。
……あの、千歳なんだから十二歳の子を威嚇するのはやめようね?
まあいいや。取りあえず今はレべリングについてだ。
とにもかくにもローシェの圧倒的強さが分かった。
これなら変身が解けて無防備な状態のクルーエルを、ローシェに一任しても大丈夫だろう。
レべリングの流れは確定した。
まずクルーエルに変身してもらい、ある程度まとまった敵を倒させて、その後変身が解けて無防備な状態のクルーエルをローシェに任せ、その間の敵は俺とルゥが全て倒す。
これが最も効率的な狩りプランだ。
このことをルゥに説明してもらうと、クルーエルは嫌な顔をしたが、ローシェは快諾してくれた。
「無防備な状態の竜王様は私にお任せください。いざとなったら飛竜に変身し背中にお乗せして空中に退避致しますので、全く問題ありません」
ほう。やはり『飛竜』というだけあってローシェは空を飛べるようだ。
……いつか乗せてもらいたいなぁ。
そう思っていると、
『……申し訳ありませんご主人様。わたしが空を飛べなくて……』
ルゥが申し訳なさそうな声で謝って来た。
俺は焦った。
いやいや、ルゥにはルゥのいいところがあるよ!?
ローシェは飛竜だから飛べるのであって、火竜には火竜の特性があるはずだ。
俺がこれからそれを見つけていってやる。
だからそんな辛そうな声を出すな。
『……はい。ありがとうございます。わたしは絶対にご主人様のお役に立ってみせます。それがわたしにここまでしてくれているご主人様に報いる唯一の方法ですから……』
そう言うルゥの声には穏やかさが戻っていた。
ほっ、良かった。わかってくれたみたいだ。
ちょっと自分に自信がないだけで、基本的には素直な子なんだよ、ルゥは。
俺がよしよしと頭を撫でてやると、ルゥはまた気持ちよさそうに目を細めたのだが、
「ふんっ、小娘が随分と信頼し合っているようではないか? しかし、ことあるごとに見せつけるでないわ。これ以上イチャイチャしよったら神竜に変身してブレスでダンジョンごと吹き飛ばすぞ?」
再びクルーエルが威嚇してきたのでルゥがしょぼんとしてしまった。
……本当にこの竜王は……。
「リク。お主もだ。もう少し儂を見ろ」
そう言うとクルーエルは勝手に歩き出し、ローシェが慌ててそれを追う。
その背中を眺めながら俺は思った。
……十分見ているつもりなんだけどなぁ、と。
しかし彼女の背中は「まだ全然足りない」と物語っている。
本当に難儀な女性だ。
そう思った俺だったが、実は分かっていないのは俺の方だったのである。




