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第五十二話『竜王襲来』

お待たせしました。

連載を再開いたします。

 以前、夢で見た竜王は白髭を蓄えた巨大な竜だった。


 しかし目の前にいる竜王を名乗った人物は、これでもかというくらいに見目麗しい容姿をした少女だ。

 日本の着物とチャイナドレスの中間のような衣装からすらりとした手足が伸びており、その肌はまるで白磁のように澄んだ白。

 そして女王アルベルティーナを彷彿とさせる真っ白な髪をしている。もっとも長髪だった女王アルベルティーナと比べて、目の前の少女の髪は肩上で綺麗に切り揃えられているが。


 竜王は千年生きていると聞いていたが、彼女はどう見ても十四、五歳といったところだ。

 普通だったら『こんな可愛い少女が竜王のわけがない』と思うところだが、俺は彼女が竜王である可能性が高いと考えていた。


 その理由としてまず一つ目は、以前に心の中で繋がった竜王の声と一緒であること。

 そして二つ目は俺を竜騎士と見抜いた上で探し当てたこと。

 それにルゥとは少し形が違うが、角とシッポが生えていることから竜人であることは間違いなさそうである。


 ただ、その顔は依然として怒っている……。

 そのワケは何となく分かった。

 ……前に二回ほど竜王と交信が繋がった時に、二回とも無理矢理交信を切ったからだ……。日本だったら電話をブチ切りしたのと同然のことをしたようなものだろう……。

 もし目の前の少女が本当に竜王だったとしたら、そりゃ怒るわな。


 でも竜王も竜王だ。

 二回目の交信なんて人が寝ている時に無理矢理夢に入ってきやがったから。常識が無いのはお互い様ということにして欲しい。

 つまり怒られる理由はあるが、こっちにも怒る理由はあるわけだ。


 そんなわけで俺も睨み返してみる。

 すると竜王は見るからにたじろいだ。


「な、何故お主が睨んでくるのじゃ!?」


 効果抜群だった。

 ……あれ? まさかこの程度で怯むなんて、本当にこの少女は竜王なのか?

 ……取りあえずなんか可哀想なので睨むのをやめた。

 すると少女は勢いを取り戻して叫び出す。


「お、お主が悪いのであろう!? 本来だったらお主が竜の谷に来てこの儂に向かって『力を貸して下さい』と頭を下げるのが筋であろうが!? それをなんじゃ! さんざんこの竜王のことを無視しおって! 挙げ句の果てにわざわざこっちから来てやった儂に向かって睨みつけてくるとは何事じゃ!?」


 竜王を名乗った少女はめちゃくちゃ憤慨していた。

 だからと言って周りから注目を集めるので地団太を踏むのはやめてほしい……。


 ……コレ、本当に竜王か?

 威厳がなさすぎるだろ。


 どの道あまり関わりたくないタイプだ。


 そんなわけで俺は少女を無視することにした。

 ルゥ(とても戸惑っている)を連れてその場を立ち去ろうとすると、


「あ、待て! 待つのじゃ!」


 そう言って後ろから追いかけてくる気配があったが、すぐに「あうっ!」という情けない声が聞こえてくる。

 振り返って見てみると、竜王少女は転んでいた。


「痛いっ! 痛いーっ!」


 しかもめちゃくちゃ痛がっていた……。

 ……絶対コレ竜王と違うよね?


「お主のせいじゃ! お主のせいで転んだのじゃー! どうしてくれる!」


 ……なんという清々しいくらいの責任転嫁……。


 周りの目が痛いので仕方なく手を掴んで起こしてやると、ガシッと腰を掴まれる。


「もう逃がさんぞ!」


 うおお!? なんだこいつは!?

 よく初対面の男にここまで引っ付いてこられるな!? こいつ絶対なんかおかしいよ!


 俺は怖くなって彼女の手を引っぺがそうとするが、竜王少女はまるでタコの吸盤のようにしつこく離れようとしない。

 ルゥがおろおろと俺と少女の間に視線を彷徨わせていたその時、きゅるるる……と誰かの腹の虫が鳴った。


 それに合わせて竜王少女の動きがぴたりと止まる。今の腹の音はどうやらこいつらしい。


「腹が減った!」


 その目はまっすぐに俺を見ていた。

 ……言外に飯を食わせろと言っているようだが…………本当になんなのこいつ?



読んで下さりありがとうございます。

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