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第四十七話『スライムホールド狩り。ルゥのレべリング』

 というわけで『風の迷宮』地下一階にやってきました。


 光苔に照らされる薄暗い洞窟……。

 最近ダンジョンに籠りっぱなしだったせいか、街よりもダンジョンの方が居心地良くさえ感じる。

 そうか。これが職業病か。


 逆にルゥは俺がダンジョンに潜ると分かると一気に落ち着きを失くした。

 付いて行っていいのかという視線をさっきから向けてきているが、むしろ付いて来てもらわねば困る。

 今日はキミのための狩りなのですから。


 そんなわけで俺はナイフをルゥに渡そうとしたが、ルゥはおっかなびっくりでそのナイフを見つめて言ってくる。


「む、無理ですご主人様。わたしにはモンスターと戦うなんて、とても出来ません……」


 見るからに弱々しい発言だが、当然と言えば当然だろう。

 このダンジョンで一番弱いモンスターのスライムでさえルゥの二十倍近くステータス差がある。どうあがいたって勝ち目がないのは目に見えていた。


 だが俺には秘策がある。ルゥにモンスターを倒させる秘策が。

 だから俺はルゥに大丈夫だと雰囲気で伝える。

 しかしルゥは今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 うん。全然伝わらない。

 しょうがない。無理矢理連れて行こう(鬼畜)。


 半泣きのルゥを引っ張りつつ通路を抜けて一つ目の部屋に移動すると、おあつらえ向きにそこにスライムが一匹だけいた。

 俺は一旦ルゥを安全なところまで下がらせると、スライムと一対一で向かい合う。


 思い返してみれば最初に戦った時は少し苦戦したが、こんな『水ボール』など今となっては敵ではない。

 俺の不敵な考えなどどこ吹く風でスライムは突っ込んでくるが、俺はドッジボールの要領でスライムの突進を受け止めると、そのまま地面に押し倒してがっちり固めた。


 今だああああああああああああああああああ!!


 俺は「俺ごと()れやあああああああ!!」と言わんばかりにルゥに視線で訴える。

 俺が何をしたいかというと、スライムを完全に動けなくしたところをルゥに倒してもらおうという計画である。


 しかしルゥは「何やってるんだろこの人?」みたいな目で俺を見ていた。


 ちょっとルゥちゃん!? 後はそのナイフで刺すだけの簡単なお仕事でしょ!?

 スライムが俺の手元でバタバタ暴れて大変なことになっているから早くして~!

 さすがに今の俺のステータスでもずっと押さえ続けるのは辛かった。


 ようやく俺の意図が分かったのか、ルゥが慌ててこちらに駆け寄って来る。

 そして、


「えいっ! えいっ!」


 可愛らしい掛け声でスライムにナイフを振り下ろし始めた。

 良かった。何とか思惑通りに行きそうだ。

 ……しかし少女が何発もスライムをぶっ刺している姿は中々シュールだ。


 そこから数十発もナイフを入れてやっとスライムは塵と消えた。


 俺とルゥは共に地面に崩れ落ちはぁはぁと荒い息を吐いていた。

 やばい、思った以上に疲れる……。


 でも、これしかルゥがモンスターを倒せる方法はないんだよね。

 この世界では誰もが冒険者になれるわけではないという理由がはっきりと分かった。こんな方法で敢えて弱い人にモンスターを倒させようとする奇特な奴はきっと俺くらいだろう。


 ちなみにモンスターを倒した時に得られる経験値は、戦闘の功労によってパーティメンバーに振り分けられる。

 分かり易く説明すると、モンスターを倒す過程で戦闘の役に立った順に経験値が入るということだ。

 今回の場合、ルゥが一人でダメージを与えたからと言ってルゥにだけ経験値が入るのではなく、『俺が押さえ付けていたからスライムを倒せた』ので俺にも経験値が入っている感覚があった。


 むしろ俺の方が経験値を多くもらえている可能性すらある。

 ………。

 これは道が遠そうだ……。


 しかしルゥに自信を持ってもらうためだ。頑張ろう。



 **************************************



 そうして時が過ぎ――


 体感的にもう夕方くらいだろうか?

 あれから休憩をはさみながらもスライムホールド狩りを続けたのだが、結局十匹しか狩れなかった……。


 過去ゲームも合わせて、俺はこれほど効率の悪い狩りをしたことがない。


 もちろんたった十匹ではルゥのレベルが上がるはずもなかった。

 経験値が俺にも振り分けられている状態では尚更だろう。


 これは本当に先が長そうだ。

 思わずため息を吐いてしまったが、その様子を隣でルゥが見つめていたことに俺はまったく気付いていなかった。




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