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第四十五話『竜の少女の価値。ラザロスのプライド』

【ボアの街・東通り貧民街】



「クソが!」


 ラザロスは乱暴に椅子を蹴飛ばす。

 八つ当たりされた椅子は壁にぶち当たり潰れて壊れてしまった。


「おい、落ち着けよラザロス」

「これが落ち着いていられるかよ! 俺ぁバカにされたんだぞ!? しかもあんなド新人のクソ野郎に!」


 格闘家のオレストが宥めるが、ラザロスは一向に収まらなかった。

 ラザロスが頭に血を登らせているのは先程の一件――リクがラザロスに短剣を突きつけて脅すようにして奴隷竜の少女を買い取っていった件だ。


 しかしラザロスを除く他のメンバーはどちらかと言うと嬉しそうな顔をしている。

 それはリクが金貨百枚で奴隷竜の少女を買っていったことに原因があった。

 そのことを証明するようにしてラザロス以外のメンバーたちが口々に喋り出す。


「ラザロスはそう言うけどよ、俺はどっちかというと得したと思うぜ?」

「ああ、俺もだ。見ろよ。この山のような金貨を。夢のようだぜ」

「ははっ、バカな奴だよ。金貨三枚分も価値のないトカゲ娘を金貨百枚も出して買っていくなんてさ」

「まったくだぜ。これでしばらく遊んで暮らせるわな」

「哀れな奴隷竜と新しいご主人君に乾杯、なんてな」


 彼らが言う通り、実は奴隷竜の少女は金貨2枚と銀貨50枚分の価値しかなかった。

 金貨百枚で買ったというのはラザロスの大ぼらである。


 しかし『Aランク』の冒険者が言ったことならば『金貨百枚』という数字に説得力が出てしまう。

 それで周りの者たちは皆騙されてしまっていた。

 そしてリクもその一人だった(しかしリクは翌朝には奴隷竜の少女に金貨百枚分の価値を見出すことになる)。

 だから彼らからしたら怒るどころかお礼を言いたいくらいだったのだが、ラザロスはそうではなかった。


「金のことは関係ねえんだよ! これは俺のメンツの問題だ! それにあのクズ竜は俺の秘密(、、、、)を知ってやがるんだぞ? このままにしちゃおけねえ!」

「そんなこと言ったってさ……どうするって言うのさ?」

「決まってるだろ! あの野郎をぶっ殺す! そしてクズ竜を奪い返す!」

「やめなよ。さすがに殺すのはまずいって」


 女シーフのジュリアはそう言うが、ラザロスはニヤリと笑う。


「大丈夫だ。決闘なら問題ないだろ?」

「ああ、なるほど」


 意外と冷静なラザロスにジュリアは驚いていた。

 確かに決闘ならば問題ない。


 決闘とは双方の同意があった場合のみ立会人の元に行われる試合で、怪我をしても死んでも自己責任。殺した方に一切責任は問われない。

 だが、問題もある。


「でもさ、あのボウヤが決闘を受けてくれるのかい?」


 その通り。決闘は双方の同意がないと行われないため、リクが頷かない限り決闘が起きることはない。

 しかし、ラザロスは自信ありげにニヤリと笑う。


「今までも薄々感じていたが、さっきでハッキリした。あのガキはかなりの口下手だ。上手く言い包めて無理矢理にでも決闘を受けさせてやるさ。その上で俺が勝った時の要求としてあのクズ竜をかっぱらう。それで全て上手くいく。その金貨百枚も、あのクズ竜も、全部俺の物ってわけだ」

「かーっ、悪い男だねえ」


 その悪だくみにラザロスたち『赤き疾風』のメンバーはニヤニヤと笑いを浮かべていた。

 彼らはラザロスが負けるなどとは思ってもいない。

 実際ラザロス自身もリクに剣を突きつけられたのは油断したからであり、正面からやったら負けるなどとは微塵も考えていなかった。


「あのクソガキ……身の程を思い知らせてやる」


 翌日、彼らは行動を起こすことになる。

 そこで自分たちの将来が閉ざすことも知らずに。




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