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第四十話『贖罪』

【奴隷竜の少女】



 ああ……竜騎士さまには本当に申し訳ないことをしました。

 わたしみたいな子を命がけで守ってくれたのに、せっかくのボスのドロップアイテムをラザロス様たちに横から掠め取らせてしまうなんて……。

 わたしなんかがいるから……。

 今日ほどそれを痛感したことはありません。


 謝っても謝りきれない。


 でもわたしはラザロス様の奴隷だから、償うことすら許されない。

 こんなに辛いことがあるなんて今まで知らなかった。


 いっそあの人の奴隷だったらどれだけ良かったことか。

 それならどれだけでも償うことが出来るのに……。

 それこそ一生をかけてもいい。

 ああ……あの人の奴隷になれたらどれだけ幸せなことでしょう?

 そんな有り得ない妄想をしていると、不意に現実に戻される。


「起きろクズ! まだ殴り足りねえんだよ!」


 ラザロス様に頭を踏みつけられ、わたしは正気に戻った。

 ……そうでした。わたしはラザロス様に殴られて床に這いつくばっていたのでした。

 その理由は先程のギルドでの一件にあります。

 仲間の方々が口々にラザロス様に向かっておっしゃいます。


「おい、ラザロス。ディジーに相手にされなかったからってむくれるなよ?」

「そうだよ。あんな女のことなんて忘れちまいなって? リザードニードルのドロップアイテムが入っただけでもウハウハじゃないか」

「うるせえ!」


 先程ラザロス様はリザードニードルのドロップアイテムの品々を持ってディジーさんに専属受付嬢になるよう交渉されたのですが、残念ながら断られたのです。

 そのせいでラザロス様はずいぶんとご立腹の様子でした。


「それもこれも全部てめーのせいだ!」


 再びお腹を蹴られます。

 わたしは何も悪いことをしていません。

 でも、こうなった時のラザロス様には何を言っても耳を傾けてくださらないので黙って耐え続けるしかありません。


 そう、これはいつものこと。

 いつも通り……。

 あの人に申し訳ないことをした罪悪感に比べれば、何てことはありません。

 そう思って震える体に力を入れますが――しかし、ここからがいつもとは違いました。


 「……そうだ。てめえ、俺の部屋に来いよ」


 いつもは獣臭くなるからと言ってわたしが部屋に近付くことを嫌がっていたはずなのに、今日に限って急にそのようなことをおっしゃったのです。

 わたしは首を傾げるしかありませんでしたが、未だ地面に這いつくばっているわたしの耳に仲間の方々の会話が聞こえてきます。


「おいおい、せっかく無傷で手元に戻って来たのにさっそく壊す気かよ?」

「まあまあ、いいじゃないか。それでラザロスの機嫌が直るってんならさ」

「ラザロス、飽きたら俺にも味見させてくれや」


 ……? どういう意味でしょうか?

 でも多分、凄く酷いことをされるのでしょう。

 だけどわたしはそれを受け入れよう思いました。

 だってそれくらいしかあの人に対する贖罪が思いつかないから……。


「おい、さっさと俺の部屋に来るんだぞ。いいなグズ」


 そう言ってラザロス様はご自分の部屋へと向かっていきました。

『命令』には逆らえません。

 わたしはふらつく足で立ち上がると、そのまま足を引きずるようにしてラザロス様の部屋へと進み出します。


 体中が痛いけど、体は『命令』通りに動く。

 そんなわたしの姿をラザロス様の仲間の方々はニヤニヤした顔で見ていました。

 いつもよりも意味深な笑みのような気がしますが関係ありません。

 わたしはどんな罰でも受け入れます。


 竜騎士さま、ごめんなさい。



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