第三十四話『Aランクハンター。ラザロスという男』
【ボアの街・東通り貧民街】
東通り区画にある『赤き疾風』パーティのアジト。
そのリーダー格であるAランクハンターのラザロスは、アジトの一階のリビング(と言っても廃屋っぽい雰囲気のある煩雑とした場所)で仲間たちに提案する。
「明日、地下10階のボスを倒しに行く」
その宣言に『赤き疾風』のメンバーたちはぽかんとした。
格闘家のオレストが訝しげに聞き返す。
「おい、マジかよ?」
「ああ、俺ぁ大マジだ」
自信満々に頷くラザロスに仲間たちは顔を見合わせ、そして口々に反論を述べる。
「しかしよぉ、本当に大丈夫なのか?」
「そうだよ。だってあんた本当は……」
「おいおい、それ以上は言うなよ? どこで聞き耳されるか分かったもんじゃねえんだからよ。それに大丈夫だよ。俺たちゃ地下10階のモンスターにも大分慣れたし、何より地下10階ボスの攻略法は酒場にいたBランクのゴンスが自慢げに喋っているのを聞いたからな」
「……呆れた。仮にもAランクハンターともあろう者が盗み聞きかい?」
「人聞き悪いこと言うなよ。あくまでゴンスの奴が勝手に喋っていたのが耳に入っただけさ。それにゴンスが倒したのが四日前らしいからよ、そろそろリポップする頃だろ? 他のパーティに先を越される前に倒しに行くぞ、お前ら」
あくまで自信を崩さないラザロスに、仲間たちは肩を竦める。彼らはラザロスが一度決めたらそれを覆さないことを知っているので早々に諦めたのだ。
一方でラザロスは内心でこんなことを考えていた。
(ディジーに俺の専属契約の件で「うん」と言わせるにはもっと実績が欲しいんだよ。Aランクという建前だけではなく、あの女にも分かり易い確かな実績がな。地下10階ボスのリザードニードルはAランクとしては物足りない相手と認識されているが、このCランクメンバーを率いて狩る相手としては十分だ。その上もしレアドロップでも拾えれば、あの女も見直すだろ。専属契約さえ結んじまえば、あの女は俺の好きにしてやるぜ。ククッ)
女を手に入れるためだけにボスに挑む。実に単調な思考だったが、しかしこれがラザロスという男だった。
彼は部屋の片隅で口から血を垂らし蹲っている奴隷竜の少女に顔を向けると、
「おいゴミカス。聞いた通りだ。今回はリュックにたくさんの荷物を詰めていくが、もし一つでも落としたり無くしたりしたら、子供が産めない体になるまで腹をぶん殴ってやるから覚悟しとけよ?」
先程までラザロスのうっぷん晴らしの相手をさせられていた少女には、それに答えることなど出来なかった。
このラザロスの単純な思考の犠牲になるのはいつだって彼女だった。
――そして、それは明日も変わらない。
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番外編「コミュ障竜騎士×コミュ障ドラゴン娘(s) -王都の晩餐-」を短編でアップしました。
話は少し過去に戻り、リクが王都にいる時に催された晩餐会での話になります。
割とあっさり読めるのでよろしければ是非ご覧ください。
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(上記の作者名「上杉マリア」をクリックしていただいて「作品一覧」からでも行けます)。




