第三十三話『ユニークスキル。その力』
最初のウインドウィーゼルを辛くも倒した俺はその場で悩んでいた。
やはり三階層も飛ばして一気に地下6階まで降りたのは伊達じゃない。
ウインドウィーゼル一体でこのザマだ。
二確の上にかなりのダメージを食らわせてくる相手。
これは狩りとしてかなり効率が悪い。
その上、もし複数に囲まれでもしたら下手をすれば死ぬ可能性も出てきた。
冷静に考えれば上の階に戻るべきだ。
だが……それでも俺はこの地下6階で狩りを続けてみようと思っている。
理由は三つある。
まず一つ目の理由。
それは俺が常に一人であることが原因だ。
これから先どんな強敵が立ちはだかっても俺は一人で対処していかなければならない。
先程のようにいきなり襲われることだってあるだろう。
だったら、この程度の困難くらいは乗り越えなければこれから先とてもやっていける気がしない。
二つ目の理由は、ウインドウィーゼルには『聞き耳スキル』と『気配察知スキル』が有効に働かないということに起因する。
今まで頼ってきたメインスキルである『聞き耳スキル』と『気配察知スキル』が役に立たないということは、より慎重に動かなくてはいけなくなるのだが、だからこそ俺は敢えてここで狩りをしようと思っている。
その方が『気配察知スキル』を鍛えられると思ったからだ。
『気配察知スキル』はソロである俺にとって生命線とも言えるスキルだ。
だから今のうちに鍛える。それが二つ目の理由。
そして最後の理由。
これが最も大きい理由であり、しかし最も判然としない理由でもある。
実は俺は今、二つの予感に駆られている。
一つ目はもうすぐ俺の中で何かが目覚めそうな、そんな予感。
それが何かは分からない。
だがそれを目覚めさせるには、このままここで戦わなければいけない気がしている。
もう一つはあの奴隷竜の少女のことだ。
俺はここで強くならないと、あの子を助けられない……そんな予感がするのだ。
何故こんな予感に駆られるのか理由は分からない。
ただ……。
俺は右手の籠手の下にある紋章をぎゅっと掴むように左手を添える。
そう……この紋章が何かを伝えてくるように疼いている。
気付けば俺はその予感に突き動かされるようにして歩みを進めていた。
まったく冷静じゃない。クレバーじゃない。俺らしくない。
そんなことは分かっている。
しかしこの二つの『予感』は地球にいたころの単なる勘とは全く違うものだ。
この予感をただの予感として無視して後で後悔するくらいなら、今ここで歯を食いしばった方がいい。
最終的に俺はそう判断した。
ただし、慎重に気配を探ることは忘れない。
さきほどウインドウィーゼルが現われた時、物音がまったくしなかった。
きっと足音が極端に小さいのだろう。
だからここは『聞き耳スキル』よりも『気配察知スキル』を優先して集中させる。
すると通路の向こうに何かいることに気付いた。
早速気配を感じ取ったのだ。
今までは『聞き耳スキル』で音を拾ってから『気配察知スキル』で気配を感じ取っていたのが逆になったな。
間もなくカサッと小さな音がしたかと思うと、そいつは姿を現した。
ウインドウィーゼルだ!
しかも三体も……!
まずい……先程一体でもあれだけ苦戦したウインドウィーゼルが同時に三体も現れた。
やばい……。
やばいけど、上等!
これくらいは乗り越えてやる。
――これくらい乗り越えないと、俺は多分そう遠くない内に死ぬ。
俺が剣を抜くと同時に、三体のウインドウィーゼルはこちらに向かって突っ込んで来た。
やはり早い……!
しかし一度は戦った相手だ。攻撃パターンは分かっている!
先頭にいたウインドウィーゼルがシッポの鎌を振りつけてくるのを躱しつつ、俺は剣を振り抜いた。
俺の剣は先頭のウインドウィーゼルの額を切り裂き、そいつを後ろへと吹き飛ばし、二体目がそれに巻き込まれ、三体目も足を止める。
その隙に俺は間合いを詰め、一体目のウインドウィーゼルの横腹にキルソードを突き立てとどめを刺した。
まずは一匹!
二体目と三体目は体勢を立て直すと、二体目がシッポの鎌で攻撃してきて、それを盾で弾いている間に、三体目は例の『かまいたち』による攻撃のためにシッポに力を溜め始めた。
モンスターのくせにいい連携だ……!
俺は一旦間合いを取ると、三体目の『かまいたち』が放たれると同時に思い切りサイドステップする。
すると風の刃は俺の横を通り過ぎて行った。
少しだけかすったけど、躱せた……!
躱されたことに驚いたのか、動きを止めた二体目のウインドウィーゼルに近寄ると、俺は奴を剣で斬り上げた。
ギャッと悲鳴を上げながら宙に舞う二体目に、追撃の振りおろし攻撃をしようとしていると、三体目のウインドウィーゼルが再び『かまいたち』を放とうとしているのが目に移る。
ここが正念場!
俺は敢えて三体目を無視して、二体目のウインドウィーゼルに剣を振りおろしとどめを刺した。
その隙だらけの状態の俺に、三体目のウインドウィーゼルの風の刃が襲い掛かる。
とっさに体をずらして直撃を避けようとするが、風の刃は無残にも俺の体を切り裂いていく。
しかし俺は止まることなく三体目のウインドウィーゼルに肉薄し、剣を払った。
ウインドウィーゼルは剣で斬られながらももう一度『かまいたち』を放とうとシッポに力を入れ始める。
そう何度もやらせるはずがないだろう!
ウインドウィーゼルが光り始めたシッポを薙ぐ前に俺は二撃目の突きを入れ、それで三体目のウインドウィーゼルもようやく塵と化した。
俺は『気配察知』で周りにそれ以上敵がいないことを確認すると、慌ててリュックから回復ポーションを取り出して飲み干した。
すると風の刃に切り裂かれた箇所の傷口がゆっくりと塞がっていく。
あ、あぶなかった~。
実はかなり重症だったのだ。
出血がひどくて頭は朦朧としていたし、腹に開けられた傷口なんてもしかしたら臓物が出る一歩手前だったかもしれない。
案の定一本じゃ足りなかったので、二本目の回復ポーションも口に当てる。
それでようやく腹の傷も目立たなくなっていくが、それでも足りなかったので三本目を飲んでやっと全快した。
しかし傷が全て治り体力も回復すると、体に力が溢れてくるのが分かった。
これはどういうことだ……?
どうやらレベルアップしたようだが、それにしては今までのレベルアップに比べて段違いに力が上がったように感じる。
訝しく思った俺は、目を瞑って『生物鑑定スキル』を発動させ自分自身を見てみる。
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如月リク 15歳 人間族 男 レベル5
職業:竜騎士(伝説職)
筋力:181×1.5=272
魔力:151×1.5=227
体力:175×1.5=263
防御:160×1.5=240
敏捷:188×1.5=282
魔耐:157×1.5=236
成長率:18
ジョブスキル:片手剣レベル7・槍レベル6・盾レベル7・竜契約・騎乗(無効)
個人スキル:言語理解・気配遮断レベル7・気配察知レベル3・聞き耳レベル7・遁走レベル5・生物鑑定レベル6・対物鑑定レベル2・話術レベルマイナス10
ユニークスキル:効率厨(無効)・独りを極めし者・孤独の証(無効)・超感覚(無効)
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……ん?
そろそろレベルが上がってもおかしくない頃だと思ってはいたが、なんかステータスの値が全部1.5倍になっている。
目を瞑ってもう一度自分自身を見つめるように『生物鑑定スキル』を発動させてみると、その理由が分かった。
ユニークスキルの『独りを極めし者』が解放されたせいだ。
なるほど。何かが目覚めそうな予感はこれのことだったのか。
『生物鑑定スキル』で調べると、その効果は『独りでいる限りステータスが1.5倍になる』スキルらしい。
中々に破格のスキルだ。
さらに今ならスキルの獲得条件も分かるのだが、『独りで戦い続け、独りで苦難を乗り越えた者だけがレベルの上昇と共に目覚める』となっている。
パーティプレイが基本のこの世界ではまず開花しなさそうなスキルだった。
しかし、『聞き耳スキル』『気配遮断スキル』『気配察知スキル』に続き、また『お一人様スキル』が増えてしまった……。
対外的にはばつが悪いけど、どうせステータスを見せ合うような仲間もいないし、それどころか『チート』の部類に入ってくるほどに有用なスキルだ。
正直強すぎる。
これがユニークスキルか……。
これほど強力なら他のユニークスキルも無理にでも解放していく価値がある。
今のところ解放条件はまったく分からないけど……。
でもさっきみたいに前兆みたいなものが訪れるかもしれないし、もしかしたら『生物鑑定スキル』のレベルを上げることで解放条件が判明するようになる可能性もある。
そこら辺に関してはこれから色々と試して行こう。
とにかくステータスが1.5倍になるこの『独りを極めし者』スキルを入手出来たのは大きすぎるくらい大きい。
『独りでいる限り』という条件付きだが、俺にとっては全く問題ない。むしろ常に独りですが何か?
このユニークスキルのおかげで恐らく戦局は大きく変わる。
俺はそれを試す為に再びダンジョンを進み始めた。
その後、ウインドウィーゼル狩りがはかどったことは言うまでもない。
読んで下さりありがとうございます。
番外編「コミュ障竜騎士×コミュ障ドラゴン娘(s) -王都の晩餐-」を短編でアップしました。
話は少し過去に戻り、リクが王都にいる時に催された晩餐会での話になります。
中々の爆弾発言もあるのでよろしければ是非ご覧ください。
下にあるリンクから番外編「コミュ障竜騎士×コミュ障ドラゴン娘(s) -王都の晩餐-」に飛ぶことが出来ます
(上記の作者名「上杉マリア」をクリックしていただいて「作品一覧」からでも行けます)。
また、次回から最新話をある程度まとめて更新しようと思います。
とりあえず明日の15日(月曜日)に6話更新いたします。
よろしくお願いいたします。
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