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第二十六話『コミュ障。人の繋がり』

 ラザロスの件への対策を俺なりに考えてみたのだが、結局のところ俺が強くなるしかないという結論に至った。

 例えば俺がディジーさんから距離を置いたところで、仮に俺への嫌がらせはなくなったとしてもディジーさんへの強引なアプローチは無くならないだろう。

 ラザロスのディジーさんに対する執着は異常だ。

 俺の勘だが、ラザロスはいつか強引な手段に訴えるような気がする。

 その前に何となしなければならない。


 俺はディジーさんに世話になっている手前、彼女のことを見捨てられない。

 ……いや、そんな建前は不要かな。

 俺はディジーさんのことが好きだ。

 それは恋愛感情とかそんな薄っぺらい言葉で表せられるものではない。純粋にディジーさんという人が好きなのだ。

 だからディジーさんがラザロスに何かやられるなんていう事態は絶対にイヤだ。

 ついでに言えばディジーさんがラザロスの専属受付嬢になるのも我慢ならない。

 だが、駆け出しの冒険者に過ぎない俺が現時点で取れる対策などないに等しいだろう。


 だから結局は現時点で俺がやれることは、何が起きても対処が出来るくらい強くなるしかない。

 ラザロスがディジーさんに何かするにしてもそう近い話ではないだろうが、それでも悠長なことは言っていたくない。

 それにあの奴隷竜少女の件もある。彼女もラザロスの元に長く置いておくのは心配だ。

 本当に……俺は一刻も早く強くなりたかった。


 しかし突き詰めて言えば、今俺がやっていることがその最も早い近道なのだと思う。

 効率を突き詰めた『効率厨』とも言える狩り。

 それが俺を強くする。


 俺は地球にいた頃、色んなゲームで『効率厨』を突き詰めてきた。

 その俺の経験が俺のその考えを裏付けている。

 俺は自分の考えをまったく疑っていなかった。



 **************************************



 俺は一昨日訪れた武器屋を再び訪ねていた。あの強面店主の武器屋だ。

 訪れた理由はもちろん新しい武器を買うためである。

 目指すはスカルナイトの一確!


 さて、今俺の手元には銀貨130枚ちょいある。

 俺が一昨日買った『青銅の剣』の値段は銀貨10枚。

 そこから順に『鉄の剣』が銀貨40枚。

『鋼の剣』が銀貨90枚。

『キルソード』と呼ばれる剣が銀貨160枚というラインナップだ。


 多分この『キルソード』という剣を買えばさすがにスカルナイトを一確で倒せると思う。

 それだけの凄味がこの『キルソード』にはあった。

 これから先のことも考えると、ここは『鋼の剣』で妥協するよりはこの『キルソード』を買っておきたいところだが、銀貨160枚か~。


 お金が全然足りない……。

 うーむ、明日ちょこっとだけコウモリを狩ってからもう一度ここに来ようか?

 でも効率厨的にはその行って帰ってくるロスタイムが大きな無駄に感じてしまう。

 しかしそうやって『キルソード』の前で固まっていたのを見かねたのか、強面店主が声を掛けてくる。


「坊主。キルソードが欲しいのか?」


 俺はきょどりながらも慌てて首を縦に振った。

 びっくりした~。まさか話しかけてくるとは思わなかったよ。

 この人も俺と同じコミュ障の匂いがするんだよな……。


「いくら持ってる?」


 そう言われ、答えられない俺はカウンターに行って銀貨の入った袋を丁寧にぶちまけた。

 強面店主はその金を数え終ると、


「銀貨130枚とちょっとか……。いいだろう。少し値引きしてやる」


 そう言って、銀貨130枚だけ自分の方に取り分けると、


「坊主が腰からぶら下げている青銅の剣を下取りさせてくれるなら、銀貨130枚でキルソードを売ってやる。その青銅の剣はどうせもう使わねえんだろう?」


 まったくもってその通りだった。キルソードが手に入るなら青銅の剣は今のところ荷物にしかならない。

 それならここで下取りしてもらって、その分キルソードの値引きをしてもらえるというのはありがたいことだった。

 ……しかし、それを差し引いても値引き率が大きい気がしてならない。


「坊主この前、俺の女房のところでも買ってくれたんだろ?」


 だから値引きしてやる。言外にそう訴えているようだが……。

 え? たったそれだけで?

 しかも奥さんのところでは青銅の盾しか買ってない上に、その青銅の盾すら値引きしてもらったんですけど?


「坊主。青銅の剣を見せてみろ」


 俺は言われた通りに青銅の剣を強面店主へ渡す。

 強面店主は受け取ると、鞘から剣を抜き刀身をじっと見つめた。

 そしてしばらくしてから言ってくる。


「随分と使い込まれた痕がある。一昨日買って行ったばかりだっていうのに、一体どんな戦い方をしてきたんだてめえ?」


 強面店主はくくくと楽しそうに笑うと、


「もしまた武器で困るようなことがあれば俺のところに来い。俺が何とかしてやる」


 店主はそれだけ言うと、飾ってあったキルソードを鞘に入れて渡してくる。

 俺は無言でそれを受け取った。

 俺はお礼を言えないので、代わりに深々と頭を下げる。


「いいから早く行け。商売の邪魔だ」


 ぶっきらぼうに言い放たれる言葉。

 俺はもう一度頭を下げてから店を出た。

 ……思った以上にいい人だった。


 ………。

 俺はもしかしたら合縁奇縁に恵まれているのかも知れない。

 そう実感する今日この頃でした。




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