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万能の魔法師  作者: Ruin
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入学試験と創世四家

魔獣が現れてから、各国は魔法師育成に力を注ぐようになった。 そうして出来たのが、魔法師育成のための教育機関が集まる「魔法学園都市」、通称 魔法都市であった。


秋人が通う予定の星稜学園は、その魔法都市の中でも、一位二位を争う名門校であった。


故に入学試験は当然倍率が高く、難易度も高いものだが、秋人にとっては赤子の手を捻るようなものだった。






「はい そこまで。 ペンを置いてください」


試験官の合図がかかり、筆記試験が終了した。


(........こんなもんか)


秋人はそう思いながら、回答を渡した。


(確かに少しひねってある問題が多かったが、ちゃんと術式を理解していれば解けない問題ではなかったな。名門だからと期待したけど少し拍子抜けしたな)


確かに秋人の思うことはもっともだが、果たして 秋人と同じレベルで''術式を真に理解する" ことができている人が、受験生の中に何人いるだろうか。


魔法の発動では、術式の理解が乏しくても、ある程度詠唱でその分を補うことができる。そのため、学生魔法師の間では、術式の理解は軽視されがちであった。そんなことより、詠唱速度や術式の展開速度を速くした方が、効率よく強くなれる、と考える人が多いのだ。


「残るは実技だけか....師匠に言われた通り、正体は隠さないといけないからな....あまり高位の魔法を使うのは避けるか」






魔法には、その規模によって級位がある


下から、下級、中級、上級、最上級、超級と分かれている


学生魔法師の間では、ほとんどの学生が下級、優秀な生徒が中級、そして「始まりの一族」の血を引く、「創世四家」の人達などの一部のエリート生徒が、上級を使える、というのが基本的な基準であった。


(流石に上級を使うと目立つな....中級でいくか)


中級を使えるだけでもそれなりに目立つが、あまり力を抑えると、魔法を行使するたびに一々限界まで加減するのが面倒くさい との理由で、秋人は"そこそこ優秀な生徒"を演じることにした。








「では、次の人」


「はい」


「....では、自分の中で一番自信のある魔法を放ちなさい」


(できるわけねーだろ....)


秋人はそう心の中で突っ込んだ。それをすると、会場が全壊してしまうからだ。


「....雷よ 轟け」


放ったのは、中級雷魔法「疾る雷鳴」


対単体魔獣用の迎撃術式で、中級ではあるが、込める魔力量によっては上級並みの威力を発揮する、ポピュラーな魔法である。


秋人が放ったそれは、会場に設置してある無数の的を、13個一気に破壊した。


「おお!素晴らしい威力だ!しかも今のは、短文詠唱か。優秀だな。」


どうやら試験官の評判も、良かったようだ


「ありがとうございました」


そう言って秋人は、下がっていった。






「おおっ!あれは....」


歩いている途中、そばの生徒が叫んだのにつられて見ると、目の先には堂々とした雰囲気の、銀髪の美少女が試験を受けていた。


秋人は、その生徒に尋ねた


「なあ、あの人誰?」


「はぁ?お前魔法師なのに知らないのか?まあ、いいや....あの人は創世四家の一家、神奈月家のご令嬢、神奈月沙耶香さんだよ。」


「へぇ....あの人がそうなのか」


少し興味を持った秋人は、彼女の試験を見学することにした。創世四家の子供がどれだけできるのか、興味があった。


「では、始めてください」


「はい。お願いします」


沙耶香はそう言って思わず見惚れるようなお辞儀をした後、ゆっくりと手をかざした。


「....清廉なる水よ 静謐なる川の流れよ その身をもって大いなる激流をもたらせ」


次の瞬間、会場の一角に水の激流が走った。 その勢いは、かなりしっかり設置してあるはずの的を、へし折るほどであった。


上級水魔法 「海龍の怒り」


対海洋型魔獣用の迎撃術式で、それ自体の殺傷能力こそないものの、津波のような水の奔流で相手を後退させる、どちらかといえば防御よりの魔法である。


本来水魔法は、海や川などの元々水がある所で、その水を利用する事で発動させやすい属性だが、水がないところでこれだけの規模の上級水魔法を使えるのは、さすが創世四家と言ったところだろう。


「ありがとうございました」


彼女はやりきった表情で、その場を去って行った。






「すげぇ....さすが創世四家のお嬢様、俺たちと同い年でもう上級を使えるなんて....」


隣の男は感嘆の声を漏らしていた。


(........まあ、そこそこと言ったところか。術式の構築がまだまだ甘いな。あれではあの魔法の本来の威力の半分も出せていない。魔力量はやはり凄いし、上級水魔法を使えるのはすごいけど、それだけだな........)


しかし秋人は、冷めた印象で彼女を見ていた。そもそも、上級魔法程度は国家魔法師なら使えて当たり前であるし、もちろん秋人も使える。


上級魔法を"使える"というだけで得意げになっているようでは、まだまだ一流であるとは言えなかった。


(........それに、必ずしも上級魔法が、中級や下級に勝るとは限らないからな....)


そう考えながら、秋人は試験会場を去った









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