十年後....
あの地獄から10年........
秋人は師匠である克人に呼び出されていた。
身長はおよそ174センチ、街中を歩いたら10人に8人は振り返るような整った顔立ちに、服の上からでは分かりづらいが、鍛え抜かれた体をしている。とてもあの時の少年とは思えない風貌に成長していた。
「ったく、任務後で疲れてるのに一体何なんだよ....」
そう愚痴を言い、任務で疲れた体を引きずりながら、秋人は師匠の元へ向かった。
コンコン
「入っていいぞ」
ガチャ 「失礼します 田辺大将閣下」
「任務明けですまない。どうだ、もう魔界での任務には慣れたか?」
「ええ、おかげさまで あの高い魔圧下でも問題なく殲滅できました」
「そうか........俺でも慣れるのに二ヶ月は掛かったというのに、大したものだ」
魔界とその外部とでの環境は、全くと言っていいほど違う。
魔界では大気中の魔力濃度が高く、常に全身をイヤなもので押し潰されるような感覚が襲う。魔法師でない人や、一定以上の実力がない魔法師では動くことさえできなくなる。また、魔力濃度が高いせいか、魔界内にいる魔獣は外部の魔獣より格段に手強くなっている。
故に、魔界での単独での任務は、国家資格を持つ魔法師の中でも、第三級以上の魔法師が当たることが決められていた。
「俺も最初は吐いたけどな....」
秋人は魔界に最初に入った時のことを思い出しながら呟いた。
「さて、話は変わるが秋人、君に任務を与える」
「任務?」
「そうだ 君には魔法師を育成する学校の一つ、星稜学園に通ってもらう」
「....いきなりだな なんで俺がいまさら?」
「まあ、任務というより修行の一環だな。 確かにお前は強い。 国家一級魔法師の中でも上位に入っているだろう。」
「........じぁあなんで、学校なんか....」
「まあ聞け.... お前は、仲間と戦うということに慣れていない。いくらお前が強くても、一人で竜種みたいな最高位の魔獣は倒せない。
だから学校に行って友人を作り、チームワークというものを学ぶべきなのだ。........それにお前には、普通の学園生活というものを過ごして欲しいと常々思っていたしな....」
「........わかった 師匠がそう言うんなら....」
「よし、住むところはこちらで用意した。入学試験は今から一週間後だ。........まあ、お前なら楽に受かるだろう」
「では八重樫少佐、よろしく頼む 下がりたまえ」
「了解です 田辺大将 では失礼します」
「ああ、それと....オマエの正体はなるべく秘密にしろよ」
「わかってますよ 国家一級魔法師だってことがバレたら、騒ぎになりかねませんからね」
そう苦笑して、秋人はその場を後にした