ゼツボウとデアイ
気がつくと、目の前は地獄だった....
大地や空は赤に染まり、視界に人の死体が入らないことはなかった。
その日、いつもと変わらない日常を送ると思っていたある少年の心は、最悪の形で裏切られた。
「........父さん、母さん、朔弥........」
虚ろな声で、物言わぬ死体となった家族に話しかける。遺体は損傷がひどく、見分けがつかないほどであったが、少年はなぜか彼らが自分の家族であると悟っていた。
「どうしてそんなんになってるんだよ」
現実を受け止められないのか、そんな力ない言葉を言い、少年の意識は落ちていった........
ピッ ピッ ピッ ピッ ........
目を覚まして、一番初めに耳に入ったのは、そんな連続した機械音だった。
ゆっくり体を起こすと、白い壁が見え、病院にいるのだとわかった。
「........目が覚めたか」
声がする方を見ると、黒い軍服を着た体格の良い
人が立っていた。180センチ超えの長身に、いかつい顔をしたその人物は、歴戦の猛者のような風格を漂わせていた。
「自分がどうしてここにいるのか、わかるか?」
「........いいえ」
「....君のいた街は、魔獣の侵攻を受けた。
生き残ったのは、君一人だ。」
容赦無く真実を突きつけるその男の言葉に、少年は何の反応も示さなかった。否、どう反応するのが正常なのか、少年には分からなかった。
少年の心は、あの光景を見た時から、壊れていた。
「....選べ 少年。 このままゆっくり腐っていくか、それとも力を手に入れ、あいつらに復讐し、家族の仇を討つのか」
「........力?」
「そうだ。幸い君の魔力量はずば抜けて多い。魔力制御を学べば、一流の魔法師になれるだろう。」
「........その魔法師になれば、あいつらを殺せるの?」
「魔獣は魔法師にしか殺せない」
「................わかった。どうせ僕には、もう何もない」
少年は吐き捨てるように告げた
「よし 少年、名前はなんだ?」
「................八重樫秋人 アンタは?」
「....そういえば名乗るのがまだだったな。 私は日本魔法騎士団所属 国家特級魔法師 「炎帝」の田辺克人だ」
これが、のちに 「千の魔法を持つ男 (サウザンド スペル)」と呼ばれるようになる男と、その師匠である「炎帝」との出会いであった
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