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恋愛フラグ感染症  作者: ナム
1/2

感染からの

「今夜が峠ですね」


ぼんやりした意識の中、病院のベッドの上で俺は母さんが若い男性の白衣を着た人と話しているのを聞いていた。



「うっうっ・・・」



母さんのすすり泣く声が聞こえた、何故こんな事になった、俺は思い返す、真夏の夜エアコンがぶっ壊れた部屋で汗をかきながら寝ていたはずだ、そして起きたら病院のベッドの上。


熱中症か何かで入院したのか?それならここまで重く苦しい雰囲気にはならないはず・・・。



「息子は・・・息子はどうなってしまうのでしょう!!」



すまん母さん、何が何やらわからないけども俺はここまでのようだ・・・先立つ不孝をお許しください・・・



「お母さん、落ち着いてください、命に別状はありません、ただ、その・・・」



「それなら息子は!!息子は!!!」



母さんが焦っている、だが良かった、俺はまだ死なないようだ、親より先に死ぬのは最大の親不孝者だったか、昔に見た本に書いてあったな。


それなら何故病院のベッドの上なのだろう、頭がフラフラするが体を起こしベッドから出る、重い・・・まるで手足に重りを付けたような感じがする。



「おはよう・・・母さん、あと俺って何か病気だったのか?」



「あ!起きたのね!今こちらのお医者さんからケイタの身体の事を聞いていたのよ!」



「そっか・・・うっ・・・まだ頭フラフラする・・・ちょっと気持ち悪い・・・」



「大丈夫かい?無理はいけない、軽く説明はするからベッドで休むんだ」



そう言われ大人しくベッドに戻り腰を落とす、座ると少し気分が落ち着いた。



「そうだね、君の病気の名前なのだけども・・・」



医者の顔が険しくなる、俺の身が強張る、死刑宣告を受ける前の人の面持と言うかなんというか。


冷や汗が額から頬に落ち、喉はカラカラで心臓はバクバクと鼓動する、俺は深呼吸をして気持ちを落ち着けた。



「はい・・・俺の身体は・・・一体どうなってしまったのですか!!」



よし言ったぞ!!もう後戻りは出来ない、あとは結果を聞くだけだ!さぁ言え!すぐ言え!覚悟は出来た!!。



「うん、君の身体はね・・・」



少し間を空けてくるこのお医者さん、何?溜めるんじゃないよ!!溜めて言われるの好きじゃないんだ、まるで某4択のクイズ番組、CM空けはまだですか!!



「君の・・・ケイタ君の身体は・・・」



「はい・・・」



「身体は・・・」





おいぃぃぃぃ!俺のおぉぉぉ覚悟ぉぉぉぉそこまで長くないからぁぁぁぁ!!頼むから早く言ってくれよおぉぉぉぉ!


そんな事を心で思いながらドコドコドンとBGMが頭の中で鳴っている、もう一度深呼吸を・・・



「異性旗感染症ですね!!」


「ゴフッ!!」



いきなりか!いきなりきたか!思いっきりむせたぞチクショウ!!



そして何やら聞きなれない病名を告げられたと同時に



「は?」



っと母さんが素っ頓狂な声を出す、聞いたことがない、異性?旗?え?感染?、語源から異性はわかるが旗がわからない。



「ものすごく珍しい病気というか、事例があまりなくて・・・、身体的な・・・まぁ害はないから研究が進んでないのです」



「そ、そうですか・・・それで症状は??どんな事が起こるんでしょうか・・・」



母さんが驚きとまどっている、良かったな、RPGなら先制攻撃チャンスだよ、だがここは日本、攻撃してくる奴なんていない。


そんなバカな事を考えていると、真面目な顔をして医者は告げる。



「今の段階で確認されているのは異性から・・・彼の場合は女性ですね、その歳が近い不特定多数の異性と接触してしまい、好意を寄せられる症状が確認されていますね」



「「は?」」



同時に俺と母さんがハモる、さすが親子タイムラグがなくぴったりだ、そんな事はさておき、異性に・・・それも不特定多数?はい?わけがわからないぞぅ?



「まぁ驚くのも無理はありません、この病気の報告例がとても少なく100万人に1人の確率で発症し、どんな人物でも必ず異性とのフラグが立ってしまう病気なのです・・・」



「「あ、はい」」



「ですので、普通の生活は・・・その・・・少し難しくなってしまいますね、ケイタ君は初期の段階なのでこれから適切な治療を・・・したいのですが、有効な手段が見つかっていないので協力して欲しいのです」



「「はぁ・・・」」



「勿論、こちらも協力と言う形で・・お母さん?ちょっとこちらへ・・・」



そう言われ母さんが医者と廊下へと向かって行った、多分別室で今後の事を話し合いに行くのだろう、そして今、この病室には俺一人。

起き上がった頃の体調の悪さも何処へやら、今は快調で逆に身体を動かしたい位の衝動に駆られている。


また深呼吸をしてベッドに寝転がる、確か異性旗感染症だっけか、多数の異性とのフラグを立てまくる病気か、一体どんな恐ろしい病気なのだろう・・・多少の不安はあるが、害はないって言っていたし、大丈夫か。



少し、時間が流れる、すると病室のドアを開ける音がした、身体を起こしドアを見る、母さんと医者だ、医者の方は何やら大きな荷物を持っている。



「ケイタ!!お医者さんに協力しましょう!!」



開口一番、凄く嬉しそうな表情で母さんが言ってくる、何故?どうした?物凄く嬉しそう・・・何言われたんだろうか、ちょっと気になる、が、母さんなら俺の為を思って言ってくれているのだろうと思う。



「ケイタ君!!君のお母さんは私の話聞いたらすぐに!快く!了承!してくれたよ!あとは君だけだ!」



え?快く?すぐに??我が母親の顔をジッと見る、物凄く嬉しそうな事以外にわかる事・・・わかる事・・・


何だろう、すぐって事は・・・条件が良かったか?例えば俺の入院費用とかだ、ウチは貧乏だから入院費はキツいだろう、次の快くだが、さらに条件が良かったかもしれない、例えば・・・例えば・・・母の顔をもう一度じっくりと見る、何か違う所・・・



あ、目が・・・目が・・・金のマークになっていやがる!チクショウ!!コイツ金で俺を売りやがったのか!!


確かに貧乏だけども、それでも何も不安なく生活してきたのに!!チクショウ!!



「それじゃー母さんケイタの服とか持ってくるからね!お医者さんのお話しをよーく聞くようにっ!」



そう言い放ち、スキップと鼻歌を歌いながら病室を出ていく我が母。



「なーに買おうかしらー車にーテレビにーパソコンにースマホにーあとはーetc・・・」



・・・廊下から心の声が噴出している我が肉親の声が聞こえている、くそう、俺にも買ってくれよと思った。



「それでどうかな、ケイタ君は協力してくれるかな?」



キラリと光る白い歯と眼鏡の奥に宿る『クックック・・・良い実験動物を手にいれたぜぇ・・・』と眼光が透けて見えた気がした。


この鬼畜メガネめ・・・まぁ仕方ない、こっちは病人だ、入院費用もキツいし逆にお金を貰えるのであれば願ったり叶ったりだろう、貧乏って辛いね!選択肢も何もあったもんじゃないぜ!



「はい、わかりました、協力させて頂きますよ、母さんが良いって言ったんだ、自分から言う事は何もないですね」



「そうか!それは良かった!それじゃ、聞きたい事や質問はあるかい?なければすぐにでも書類の準備に行きたいんだ」



「あの、俺の今の状態が初期って事は・・・その、手遅れの場合はどうなるのでしょう・・・」



ここ重要、超重要、聞いておかなくてはならない、自分の身体の事だ、全部聞いておきたいからね。



「そうだね、害はないって言ったんだけどもそれは『あくまで』自身の状態は健康でこの病気には害はない・・・が異性だね、異性からの好意と言ったがこれがとんでもないんだよ、上限がない、そして君は今病院で母親以外に女性と会ってすらいない、この状態を初期症状と僕達は呼んでいるんだ」



「ほほう」



「そして今の君は町を歩くだけでもフラグが立つ状態だ、その状態は第一段階だ、多数の女性とお近づきになれると浮かれているととても危険だ」



「ほへぇ」



「異性に接触し友好を深めていくとね、愛故に刺されるとか嫉妬故に監禁など異性からのアプローチが極端に危なくなっていくんだ」



「え、まじっすか」



「マジマジも大マジだよ、じゃ、このグラフを見てみよう!」



鬼畜メガネは手に持っていた荷物を広げ大きな紙を壁に貼り付けている、プリントも渡された、目を通すと何やら見知らぬ言葉が羅列していた、NTR?TS?なんぞこれ?



「あの、これは一体・・・」



「あぁ、今からこの病気と対策、それにどういった行動を取ったらいいのか、それを書いてあるんだ、時間はあるかな?今からこれについて説明するよ!」



またキラリと歯を輝かせついでにメガネも光を反射して、頼もしくもあり、良く見たらこの人カッコいいなーと思った16の夜

だった。

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