３Ｐプレーって意味深よね
「くっ」
「リバウンド！」
真冬の打った３Ｐシュートはリングの首に当たり、ゴオンと高く打ち上がる。
ボールはくるくると宙を舞い、やがてゆっくりと落ちるが、
「嘘ッ！？ なんで！？」
ボールの落ちる先にはやはり野田兄がいた。
まただ。落ちたボールの先には必ずといっていいほど野田兄が待ち構えている。そのせいでさっきからこちらのリバウンドはほとんど成功していない。
「灯、速攻だ！」
「フフフ、もう走ってるわよ！」
野田兄がボールを拾うと、既に前方に走っていた灯にオーバーハンドでボールを投げようとする。
「させません！」
野田兄の近くにいた私は咄嗟に飛びあがるが、野田兄がパスせず、そのままドリブルを始めたのを見て、すぐに後悔した。
「智代はフェイクにかかりすぎ。もっと相手の心理を考えてディフェンスしろ」
「ッ！」
抜いていく際、野田兄は小さくそう言う。
私は慌てて振り向いた。
「真冬はオフェンスとディフェンスの切り替えが遅い！」
「私は……ハアハア……元々……インドア派で……そういう、体力キャラは……脳筋の来夏専門なんだよぉ」
「真冬先輩それどういう意味だよっ！」
自軍コートでディフェンスに戻っているのは来夏と奈央だけ。野田兄はボールを外で待ち構えていた灯にパスした。
灯はそのままシュートモーションに。
「フッーー」
「ッ！」
奈央がブロックに入るが、彼我の身長さは10cm以上。ミスマッチを突かれたシュートはしかし、リングには嫌われる。
落ちる先にはちょうど来夏の姿が――いや、
「おっしゃ！ ――げ！？」
「来夏はスクリーンアウトをしなきゃ、折角身長があってもリバウンドは取れんぞ！」
外から走りこんできた野田兄がランニングリバウンド。この男、どれだけボールに絡むと言うんですか！？
「ほっ！」
「ッ！ しまっ！？」
リバウンドを取った瞬間、素早くリングを見上げる野田兄。ただゴールを見上げただけ。それだけで来夏は高く飛び上がっていた。
シュートフェイク。しかし私たちが驚いたのはその次の彼の行動だった。
「うりゃ！」
「あ…やば…！」
なんと、野田兄は落下してきた来夏に向かい、ジャンプシュートを放ったのだ。
必然的に、空中でシュート中の野田兄に、来夏が覆い被さる形になる。ファールだ。
野田兄は来夏に押しつぶされながらも、そのまま強引にシュートを決めてしまう。これでバスケットカウントが成立。ボーナススロー一本だ。
はっと私は我に帰る。来夏と野田兄は大丈夫か。
「来夏！ 野田さん！」
「――いてて。来夏、怪我はないか？」
「あ、ああ…。怪我はないけど…」
来夏は恥ずかしそうに顔を朱に染めている。
見れば落下する際、野田兄は来夏を床から咄嗟に守ったらしいが、その時に来夏の腰に手を回し、身体を密着させるようにして守ったらしい。そのせいで、来夏の発育の良い大きな双丘が、野田兄の身体で見事に押し潰されていた。
「……最低ですね」
「待て、誤解だ！ 他意は無かったんだ！」
私から漏れた声に反応して、野田兄は慌てて来夏から離れる。
「もう、兄さんはラッキースケベね。西条さん家の長男でも目指してるのかしら」
「ちげえよ！ 確かにあれは男のロマンだけど！」
「まあバスケットカウントを取ったのからよしとするわ。３Ｐプレー、ちゃんと成功させなさい」
「３Ｐプレー？」
聞きなれない言葉に、私だけでなく、来夏やもえも首をかしげる。
「あら知らないの？ ３Ｐプレー。ファールをもらいながらシュートを決めるっていうだけのことなんだけど」
「最近はバスケ漫画とかの影響でスクープシュートとかの方が有名どころだからね。ただ初心者のもえ達が知らないのは仕方ないにせよ、キャプテンである智代が知らないと言うのは大草原不可避なんですがｗｗｗｗｗ」
「――ッ！ ど、ど忘れしていただけです！ 知っていますよ３Ｐプレイ！」
「……なんか、あなたの言い方だと、すごい卑猥なモノに感じるわね……」
そんな一幕もあったが、結局その後のフリースローも、野田兄はきっちりと決め、最後は14ー5というスコアで、私たちは敗北した。
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