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小手調べ

「そっちボールから始めていいぜ」


制限時間8分のゲームが始まるというとき、灯の兄だと言うその青年は、あろうことか私たちのボールから始めていいと言ってきた。


(正気ですか?)


いくら相手がこちらより四つ程度離れた歳の男だと言っても、この人数の差というのは埋め難い。少しでもハンデを減らすためにも、確実に勝てるジャンプボールを提案してこないとは……。


「……後悔しても遅いですよ」


私はハーフラインをまたぎ、ボールを真冬にスローインした。

試合が始まる。


「お~し。とりあえずさくっと一本取るで~」


今回、いつもPGをしている灯が向こうのチームにいるので、その役割はSG(シューティングガード)の真冬に務めてもらっている。

認めたくはないが、灯はこの富川第二中にとって欠かせない戦力。それが敵に回っているというのは私に言い様の無い不安を覚えさせた。


「智代っ!」

「ッ!」


真冬からボールが渡る。このチームは私と真冬以外はバスケを初めて数ヶ月しか経っていない初心者。身長170を超える来夏こそ、灯には届かないものの、ボールには絡めるが、身長も低いもえと奈央は論外。OFは三人でやると考えた方がいい。

目の前には腰を低くしてこちら待つ灯。私はそれに負けじと態勢を低くする。


「行きますよ」

「いつでもどうぞ?」

「ッ!」


開口一番、私は右にトップスピードで駆け抜ける。

かなりの速さだと自負しているが、灯は易々と付いてくる。

ならッ――!

私は45℃付近で急ストップ。そのままジャンプシュートを放つ。

だが焦り過ぎたか、シュートはゴールに弾かれる。


「リバン!」


叫ぶが、ボールは運悪くちょうど野田兄のいる場所へ。私は小さく舌打ちする。


「チッ。運の悪い」

「フフフ、本当にそうかしら?」

「なに?」


灯はそれには答えず逆コートへと疾走する。私はそれに追い縋る。


「流石に速いわね。速攻は無理かしら」

「当然です。――今のうちにゾーンを組みなさい!」

「むっ……」


野田兄は小さく唸る。

私たちのDFはいつもやっている2―3の典型的なゾーンだ。典型的ゆえ、攻略も難しい。


(さあ、野田さん。どこからでもかかってきなさい!)


「よっと」

「!?」


しかし次の瞬間、野田兄は3Pラインに入るなり、いきなりシュートモーションに入る。

そのあまりに迷いない動きに、一番近くでDFしていた真冬の反応が遅れ、慌ててシュートチェックに入る。

しかし、それこそ相手の思う壺だった。


「兄さん!」


真冬が飛び出した瞬間、それを見計らっていたように、灯が真冬が飛び出して空いたスペースに、ポストアップする。

身長差を使われ、楽々と上を通されてボールは灯へ。

渡った途端灯は素早くターンしシュートモーション。今度は後ろの来夏と私が反

応して飛び上がる。


しかし、それもまたフェイク。トップから走り込んできた野田兄へとボールは渡り、あっさりとレイアップを放たれた。

シュートはまるでそれが当たり前と言わんばかりにゴールに吸い込まれる。やられた。


「イェーイ!」

「自分から点を取らないとか言っといて流石ね兄さん」


前を見れば、ハイタッチをかわして自陣へと戻る兄妹。私は思わず下唇を噛んだ。



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