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打倒ロウきゅーぶを目指してみる  作者: 無道
躍動のサマーカップ
22/36

相対

分かっていたことだが、杉崎はめちゃくちゃ上手かった。


「ッ!」

「なっ――そっちかよ!」


DFだけで言えば俺より数段上の東をもろともせずちぎり、ゴールまで肉薄する。

俺がヘルプに入ろうと前へ出た瞬間、絶妙なタイミングで俺が元々マークしていた早坂にパスが通り、ゴールが決まる。


「よし、ナイシュ」

「ナイスパス」


杉崎と早坂がハイタッチする。それを遥香と沙織が善望の眼差しで見つめる。

現在は杉崎の呼んだ人と俺が呼んだ人に分かれて4対4をしていたが、こちらがぼこぼこにされるばかりで練習をしているとは言い難かった。


「くそ、やっぱ上手いなあいつら」

「杉崎は基本なんでも出来るからな。それら全てを警戒するのはお前でも厳しいか」


杉崎圭というプレイヤーはコンスタントになんでも出来るプレイヤーだ。3Pシュートは勿論、ドライブ、パス、DF、状況判断まで隙は無い。

そして今杉崎には早坂という大きな強みがある。14cmのミスマッチがある俺と早坂のマッチアップでは、そもそも大きなハンデが存在する。


「兄さんと東さんがあそこまで言い様にされるなんて、あの二人、相当上手いのね」

「当然だよ。圭さんと祈のお兄さんはとっても強いんだから!」

「む……」


遥香が自信満々にそう言うと、灯は眉根を寄せる。そして、こちらをキッとにらんだ。


「兄さんたち。このまま好きにさせて終わるつもりかしら? だとするなら、女子中学生相手にだけ無双する鬼畜野郎ってレッテルを私の中で貼るのだけど」

「なんでお前が怒ってるんだよ……。まあだが、このまま終わるのはわざわざ練習に来たあいつらにも失礼だしな」


言外にこのままでは終わらないと言う俺に、灯は「それでこそ私の兄さんよ」と嗤う。


「おい、次はお前らの攻撃だぜ」

「ああ」


早坂に言われ、ボールを灯に渡す。俺がセンターをやっている今、ガードは灯にやってもらっている。

灯のマッチアップは遥香。練習試合の再現のように、3Pラインで二人は相対する。

直後、灯の鋭い右ドライブ。しかし、今回は遥香も離されずについて行く。


「灯ちゃんは、右からしか来ないからね……!」


目を丸くした灯に、遥香は挑発的に笑う。あ、灯の奴、ちょっと切れたな。


「ならこれはどうかしら」

「ッ! はやっ――」


ドリブル直後、灯の中学生離れしたロールターンで、今度は遥香が見事に置き去りにされる。確かに、灯のロールの鋭さは異常だ。速度だけなら俺より早いかもわからん。


「ッ!」

「智代!」


慌ててヘルプに入った早坂。灯はちらりと一瞬俺にパスを出そうとするが、山のような早坂のDFを見て無理だと判断。強引にいかず、後ろの智代にパスを回す。

智代をパスをもらうとボールをパワーポジションへ。それから腰を使った重心移動のフェイクでドライブを仕掛ける。それに沙織は必死に食らいつくが、回り込んできた灯のスクリーンでそぎ落とされる。


「行かせるかよ!」

「こっちだ!」


ゴールまであと少し、という所で再び早坂がヘルプで入る。そのタイミングで俺はハイポストに上がり、智代からボールをもらう。完全なフリーだ……いや。


「……」


目の前には、先ほどまで東についていた杉崎。東を視界の端に捉えれば、代わりに早坂がマークしている。あの一瞬で掛け声も無しにスイッチしたのか。流石はインターハイまで行った奴らだ。こんな奴らがチームメイトになるのか。


「頼もしい限りだな」

「ふっ!」


俺にすかさず間合いを詰めてくる杉崎からボールを取られないため頭上に掲げる。間合いを詰めても腰を落とさない良いDFだ。だがそれでも俺は強引にドリブルを仕掛ける。

身体が何度もぶつかる厳しいDF。体重は俺の方があるはずなのに、全く杉崎は押し負けない。かなり体幹を鍛えているのだろう。


「兄さん、意地でも抜きなさい!」

「圭さん、負けないでください!」


灯と遥香の声が聞こえる。まるで観戦モードだ。あなた達もプレイヤーなのだよ?

そして俺は遂にペイントエリアまで侵入する。正確に計ってはいないが、そろそろシュートクロック、24秒だ。時間がないと考えた俺はシュートフェイクを掛ける。

相手が引っ掛かれば、そのままいつものように3Pプレイに持って行ったが、杉崎は読んでいたのか飛ぶ素振りすら見せない。これは精神的にも来る。


「終わりだ」

「まだだ」

「――ッ!」


杉崎がボールを取ろうと動いた時、俺は大きく後ろに飛び――フェイダウェイでシュートモーションに入る。だが、無理に大きく跳んだため、姿勢は安定していない。


「それは無茶だろ!」

「シュートならな」

「あっ!」


そこで、走り込んできたのは智代。マークしていた沙織が不意を突かれて声を上げる。

そのまま俺は灯にシュートのフォームでボールを智代に押し出す。空中でキャッチした智代は、杉崎の手を躱し、そのままシュートを決めた。


「ナイスだ智代。流石は富二中のキャプテン」

「跳ぶ前に洋司コーチがちらりとこちらを見ましたからね。絶対にパスが飛んでくると思いました」


智代の察しの良さは、ミニバスからバスケを続けているが故の経験から来るものだ。そこは灯にはない長所である。

早坂が口笛を吹き、杉崎も参ったなと頭を掻いた。それからは何度かシュートを決める事が出来た。しかし、全体的には俺たちボコボコにされるという形で、その日の練習は終了した。


毎回ワンプレイしか出来なくてすみません。もう少しで、サマーカップ始まります!

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