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第2Q

「よしよし、第1Qは上出来だお前ら! 特に奈央、最後のシュートといい練習のせいかが出てるな!」

「ブザービート気持ちよかった」

「で、兄さん、次はどうするの?」


タオルで汗を拭く灯に、俺は答える。


「第2Qは奈央をアウト、もえをイン。最初に話した通り、外から狙っていく」


今当たっている奈央を外すのは少し惜しいが、相手もブザービートを決めた奈央は警戒してマークは厳しくなるはずだ。もえを出す機会という意味でもちょうどいい。

そのあと、来夏にスクリーンの対処法を簡単に教えたところで、2分間をインターバルの終わりを知らせるブザーが鳴った。


「いいか。今のところお前らは負けてねえ。自信をもってプレイしてこい!」

『応ッ!』






野田に胸を貸すつもりで受けた練習試合だが、なかなかどうして、向こうもやるものだ。

こちらのメンバーは全員1年生だが、全員がミニバス経験もあり、気心しるが故チームワークもある。

試合を始める前に訊いた話では、相手も2年生の2人以外、1年は全員中学から始めたらしい。それであそこまでやれるとは正直驚きだ。特に……、


「どうだ遥香。相手の6番、灯ちゃんは?」

「……はい。強いです、本当に」


遥香は真剣な表情で言う。


「けど、負けるつもりもありません。圭さんから教えてもらったバスケで、必ず勝ってみせます!」

「……ああ、頑張れ遥香!」

「あ、遥香だけずるーい! 圭さん圭さん、私にも頑張れって言ってよー!」

「わ、私も、応援してほしいです……!」

「ははは、圭の大将も人気者だなぁ」


ここまでポイントガードを務めている沙織に煽られ、俺は困った顔をする。

するとそこでタイミングよくブザーが鳴った。


「よし、皆時間だ。相手は灯ちゃんと智代ちゃんから起点にオフェンスが始まる。マークする遥香と雛美は気を引き締めていこう!」

『はいっ!』






「ッ!」

「早速来たわね」


第2Q開始早々、遥香にボールが渡る。灯との1対1の場面。


「祈!」

「またパス――ッ!?」


(上手い)


遥香はパスと見せかけ、ドリブルで抜きにかかる。先ほどの1対1でパスを見せられたことにより、灯が思わず反応した所を狙った頭脳プレイだ。

遥香がゴール付近に肉薄するが、しかしそこは反応速度に絶対の自信を持つ灯。フリーでは打たせまいと追い縋る。


「はぁ!」

「ッ!」


遥香が打ったレイアップは、灯のプレッシャーでリングから逸れる。


「もらっ――なにっ!?」


来夏がリバウンドを拾おうとしたとき、不意に横合いから神楽坂の選手がかすめ取る。ランニングリバウンドだ。

ボールは再び相手ガードの元へ行き、もう一度神楽坂の攻撃になる。

俺は笛を取ると、自らのチームに声を荒げる。


「だから言ったろ! 神楽坂は身長がない分、全員でリバウンドを取りに来る! 自分のマークマンが3Pライン上で待機しているからって油断するな! 入り込んできそうだったら体で止めろ!」

『……応ッ!』


俺の叱咤に全員が表情を引き締める。こういうところで怒鳴られたからといって腐らずに、逆に闘志を剥きだすってのはうちのチームの長所だな。

その気合の入ったディフェンスが効いたか、相手のシュートは落ち、それを来夏が今度はきっちり拾う。すぐさまボールは灯へ。


「速攻!」


全員が一斉に走り出す。うちは灯や智代、来夏など、比較的足の速い奴が多いため、ファーストブレイクがかなり強力な武器になる。それに、今みたいに速攻を止められても……。


「……もえ!」

「えいっ!」


このように、遅れて走り込んできたもえと真冬がセカンドブレイクに持ち込める。もえ達シューターの高いシュート力と灯の広い視野あってのプレイだ。なんにせよ、もえもシュートを決めた。奈央といい、二人とも初の試合で得点するとは、なかなか肝が据わっている。

ともかく、これで点差はさらに開き6点差。相手としてはまずは流れを切って一本決めたいところだ。


相手センターの祈にボールが渡り、祈がドリブルしながら背中で相手を押す、パワードリブルを開始するが、如何せん来夏は富二中バスケ部随一のパワーの持ち主。まるでコンクリートの壁と相手をしているかのようにびくともしない。


「祈!」

「! ごめん!」


それを見てすかさず走り込んできた遥香にパスが通る。しかし、灯のディフェンスは堅く、そのままシュートには持っていけない。


「雛美!」

「あたしの出番だな!」


遥香は、外で待機していた元気そうな少女にパスを入れる。その子のマッチアップはもえだ。周りと比べてディフェンスがまだ甘く、3Pを許してしまった。


「ごめんっ、次は止めるから!」


真面目故、失敗を引きずるタイプかと思っていたもえも、案外切り替えは速かった。うん、これもいいことだな。

だが返しのオフェンスでは、もえは肩に力を入れすぎたか、二度目のシュートは外れる。


「おらああああああ!」

「きゃあ!?」


しかしここで来夏が本領を発揮。競り合った祈を吹っ飛ばし、リバウンドをもぎとると、そのままシュートを決めた。


「ナイシュー来夏! そうだそれでいいぞ!」

「おう、コーチとの特訓の成果が出たぜ!」


リバウンドが強いチームはシュートも決まる。それはシュートする選手が、もし外してもあいつが拾ってくれる、と心に余裕を持ってシュート出来るため、思い切りが良くなるのだ。こういう点は、バスケットが本当にメンタルと関係の深いスポーツだと実感できる。

ということで、そこからは来夏は大活躍だった。ディフェンスにオフェンス、両方でリバウンドを拾い、相手のセカンドチャンスをカット、富二中の陣営に、大きな心理的アドバンテージをもたらした。


途中で杉崎がタイムアウトを入れ、来夏を抑えるよう指示を出したが、するとその分灯と智代のマークが甘くなり、そこから得点を量産。第2Q終了間際で、遥香がスクリーンをもらってから執念で3Pをねじ込んだが、それでも富二中が終始優勢の展開で、試合を折り返した。


第2Q終了

神楽坂 17―27 富川第二


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