初めてのシュート
「はあッ！」
「ぐっ……！」
その次のオフェンスは智代へとパスが回り、見事決める。
灯がいるとあまり目立たないが、智代だってオフェンス力はかなりあるのだ。
返しの神楽坂の攻撃。相手ガードは考えた末、自ら切り込む事を選択した。
真冬はなんとか追い縋るが、途中で相手センター、祈のスクリーンにかかり、削ぎ落とされる。
神楽坂は中に祈、それ以外は全員外の３Ｐラインにいる。そのせいでゴール周辺はほとんどスカスカ。誰もヘルプに入ることなく、相手ガードのレイアップが決まる。
まあ来夏にはスクリーンの対処の仕方をまだ教えてないからしょうがない。後で軽くレクチャーしておこう。
「今のはしょうがありません。次からはもう少し奈央と私も中に寄りましょう」
「わかった」
富川の攻撃。再び灯は智代へのパスを選択。ミドルレンジで打った今度のシュートは外れる。
「おりゃあ！」
やはり来夏の身長とあのジャンプ力は脅威だ。リバウンドは楽々と来夏が制し、着地する。しかし、そこで来夏が油断したのを相手は見逃がさなかった。
「来夏ッ、下ッ！」
「うわっ！？」
一瞬下げたボールを、奈央にマークしていた相手選手が奪う。
ボールを取った子は相手ガードへ、速攻だ。
「行かせないよ！」
「こずえ！」
真冬が相手ガードの行く手を素早く阻むと、ボールは智代がマークしていたこずえと呼ばれた女子の元へ。こずえはすぐにリターンパスで相手ガードへと戻す。
ハーフラインを越えると、今度はガードに灯が付く。ちらりとその奥に目をやれば、遥香がゴール下でフリーだ。
「させないわよ？」
「ッ！ しまっ――」
相手ガードが一瞬目を逸らした刹那、灯が物凄い反応速度でボールをスティールする。そのまま逆に速攻をかける。今まで２対１ということは、カウンターの今は３対５だ。
「来るわよ、４番と６番をマーク！祈は７番をマークして！」
さっきから智代と灯でしか攻撃してなかったからだろう、相手は灯と智代を優先してマーク、残りが来夏をマークする。しかし、それは予想通りの展開だ。
「奈央！」
「待ちわびた」
灯はノールックで奈央へパス。奈央は待っていたとばかりにシュートを放つ。
打った場所は、いつも練習した、４５℃からのミドルシュート。
シュートは何度かゴールでバウンドし、最後はすっぽりと入った。奈央はがばっとこちらを見る。
「……練習したもんな。ナイスシュート」
「……うん！」
いつもは愛想のない奈央は、このときばかりは笑顔を見せる。うん、俺はこの嬉しさを知ってほしかったんだ。
「さあディフェンスです！ 相手はリバウンド飛び込んできますよ！ リバウンドは皆で出来るだけ取りに行きましょう！」
『応ッ！』
智代が声を出し、富川の士気が見るまでもなく上がる。よし、エンジン入って来たな。
そのあとは富川中心に試合は進み、最後は真冬のパスカットから、奈央がもう一度シュートを決め、第１クォーターは最高の形で終了した。
第１Ｑ終了
神楽坂 １１―１５ 富川第二
初めて試合で決めたシュートって、なかなか忘れられませんよね。
あの時がバスケをやっていて良かった、と思う最初の瞬間だと思うんです。
それは多分バスケだけじゃなく、サッカーやハンドボールとかでも同じ、そんな気がします。
