表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/36

練習相手は主人公

というわけで次の週の土曜日、俺たちは隣町にある市立神楽坂中学校まで来ていた。


「てゆうか何で、ハアハア、わざわざ、走って、ハアハア…来たのよ?」

「こっち着いてからアップじゃあ時間もないだろ。体だけでも温めておこうと思ってな」


富二中からは徒歩40分程度の距離にあるこの学校。荷物は俺が持ち、灯達にはアップがてら走ってこさせた。お陰で既に皆息絶え絶えである。

玄関まで来ると、そこに見知った顔を見つける。


「よお杉崎。今日はわざわざ無理言って悪いな」

「なに、高校時代のライバルの頼みだ。これくらいどうってことないさ」


見るからに爽やか系男子のこいつは杉崎圭。高校の頃幾度となく対決したライバルだ。

結局、俺が三年の時の高体連ではこいつに敗れ、杉崎の高校はそのまま県大会を二位で通過し、インターハイに行った。


「へえ、この見るからに主人公っぽいのが兄さんのライバルねえ……。ふうん、なかなか強そうね」

「はい、猛者に相応しい、静かな威厳を感じます」


うちのエース二人は、杉崎を見るなり早くも反応を示す。まあ上手さだけで言えば、俺より確実に上だからなあ。

杉崎に案内され体育館に到着。重いドアを開けると、中からバッシュの滑る音と、ボールの跳ねる音がまるで一つの音楽を奏でるかのように俺たちを出迎える。うん、やっぱりこの音を聞くとどこか落ち着くな。


「礼!」

『お願いします!!』


体育館に入るとき御馴染みの礼をしてから入る。

すると練習していた神楽坂の生徒が練習を中断して集まって来た。

集まったのを見て驚いた。神楽坂の部員は、なんと5人しかいなかったからだ。富ニ中より少ないなんて珍しい。

そしてチーム全体の身長も低い。ほとんどの子が160cmには届いておらず、一番大きい子でも170cmあるか怪しいくらいだ。


キャプテンらしい片方の髪を結った少女が前へ出る。杉崎の教え子らしい一途そうな子だ。


「富川第二中の皆さん。今日はよろしくお願いします!」

『よろしくお願いします!!』


そう言って綺麗に揃ったお辞儀をする神楽坂バスケ部。そのいかにも良い人達そうな礼儀正しい挨拶に、そんな挨拶を滅多にされたことのない富二中のメンバーは明らかに狼狽する。


「……」呆気に取られて固まる奈央。


「この純真さ、腐りきった私には直視できん……。目が…、目がぁ…」と苦しむ真冬。


「はい、こちらこそよろしくお願いします」

唯一智代だけは、鏡に写したかのような礼儀正しいお辞儀をした。良かった、流石キャプテン。


「あなたがここのエースね」

「ふぇ?」


唐突に、灯が前に出て挨拶をした少女に声を掛ける。しまった、一番ぶっ飛んでるこいつを忘れてた。

灯は芝居がかった仕草で髪をかきあげる。


「フフフ、みなまで言わなくていいわ。私には分かる。強者は引き寄せ合うとでも言うのかしら」

「え、えーと…」

「野田灯」

「え?」

「何ハトにトラン◯ムライザーが直撃した時のような顔をしているの。私の名前よ。あなたは?」

「あ…す、すみません! 私は小湊遥香、よろしくお願いします、野田さん!」

「遥香、ね。いいわ、よろしく、遥香。私のことも灯でいいわよ?」


灯と遥香で握手を交わす。最初はどうなることかと思ったが、遥香ちゃんが良い子でよかった。


「野田。アップはどれくらいいる?」

「ああ、時間も勿体無いしな。20分くらいくれれば問題ない」


ひと段落した所を見計らい、杉崎が発した問いに、俺は即答する。

アップではフットワーク、スクエアパス、レイアップ、最後にフリーシュートを行ったところで、アップ終了のブザーが鳴る。


灯達を集合させると、円陣を組み、作戦を手短に教える。


「スタートは、PG灯、SG真冬、奈央、SF智代、C来夏で、もえはベンチスタートだ。今言ったとおり、ゴール下はほとんど来夏一人に任せることになる。相手チームはタッパもあまりないし充分渡り合えるはずだ。頼んだぞ」

「おう、任せとけ!」

「ディフェンスはマンツー。向こうの身長的に、ジャンプボールには勝てるだろうから、マークは付かれた人にマッチアップな」


マンツーとは、ディフェンスの基本で、ディフェンス一人がオフェンス一人ずつマークするディフェンスのことだ。


「私たちはいつもゾーンでしたが、今回はしないのですか?」智代が首をかしげる。

「ゾーンディフェンスってのはマンツーを出来て初めて出来る。まだマンツーすらロクに出来ないお前らにはしばらくマンツーだけやってもらう」

「…わかりました。コーチの決定に従いましょう」

「1クオーターは灯と智代を中心に攻める。お前ら二人で暴れる程、第2からは周りがやりやすくなる」

「わかりました」

「フフフ、暴れていいのね?」


そこで笛が鳴る。時間だ。

智代が人差し指を立て、頭上に掲げる。

すると円陣を組んでいた周りの奴も、それに倣って人差し指を智代の近くで掲げる。


「…新チームになってから初めての試合です。全力でやりましょう!」

『応ッ』

「行きますよ。One Two Three!!」

『Yes!!』


さあ、試合開始だ。


すみません、まさかのまだ試合入れなかったという…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ