妹は突然に
思いっきりギャグに走れるものを書いてみようかと思いました。
最後までお付き合いいただければ幸いです。
「ねえ、兄さん。お願いがあるの」
「んあ?」
大学一年生になってしばらくしたある日のこと。
俺の部屋にやってきた妹の灯は、そう言って話を切り出した。
俺は露骨に灯を訝しむ。この妹のお願いなど、「ちょっと学校を臨時休校にしてきてくれない?」とか「今からこ○亀全巻買ってきて頂戴」とか、基本ロクなものがない。
「……言っとくが、いくら俺が円盤を買い漁って制作資金を提供しようが、この○ばの二期の放送が早まる事は無い。大人しく続報を待て」
「全然違うわよ引きニート」
灯はさらさらと流れる髪を耳の上に掻き分ける。
「――あのね、兄さんに私の学校のバスケ部のコーチになってほしいの」
「な……ん……だと……」
驚く俺に灯は、この頃益々艶っぽくなってきた顔で、悪戯っぽく微笑む。
「ええ。兄さんの熱血指導で、思春期を迎える少年達を導いてほしいの」
「男子の方かよ!?」
「嘘よ。そもそもうちの学校、女子校よ? ――最近、女バスの顧問の先生が産休を取っちゃってね。勿論それ自体はめでたいことだし喜ばしいんだけど、なんでも練習を監督する人がいないなら部活動は認められないって言うのがうちの学校のルールらしくて」
「ほお」俺は手近にあった椅子に座る。
「まあ《校則を破壊せし者》の異名を持つ私なら、普段はそんな規則なんて鼻で笑ったうえで、それ以上の正論を吹っ掛けて相手を圧倒しちゃうんだけど」
「お前自分の行動を制限する相手にはとことん容赦ねえな。専ら被害者は生徒会の役員とかか?」
「いいえ、教頭よ」
「先生かよ!」
「でも今回、そういうのはしないことにしたわ。元々、産休に入った先生もバスケに関しては素人だったから、これを機に優秀なバスケ指導者に教えてもらうことにしたの。その結果――」
灯はずびしと俺を指さした。
「……何でそこで俺が出てくるかなぁ」
悪態をついた俺に、灯はにやりとした。口の奥から八重歯が覗く。
「やってくれるわね、兄さん?」
「嫌だよ、面倒くさい。俺だって暇じゃないんだ」
「さっきまで秘蔵のエロ本読んでナニしようとしてたくせに?」
「――は?」
灯の唐突な言葉に頭が真っ白になる。あ、あれー、いきなり話が変わったぞお?
「あ、灯? いいい一体ななな何の話をししてるのかなあ?」
「誤魔化して無駄よ兄さん。私が兄さんと何年一緒にいると思ってるのかしら」
灯は優し気に目を細める。
「これはあくまで仮定の話よ兄さん。これまで兄さんが特定の時間になると自室でごそごそしてたのを私があえて触れないでいてあげたのを、今回を機に勢いよく扉を蹴破って侵入するようになってもいいって言うならこの話を断ってもいいのだけれど――」
「ストップストップストーーーップ!! 分かった分かった。コーチでもなんでもやるから、それで満足だろお!?」
「ふふ、物分かりが良い兄さんは好きよ。それと、うちの部活、かなり混沌としてるから、覚悟しておいた方がいいわよ?」
こうして、俺のロ○きゅーぶ的な生活は始まった。
「……そういえば、分かってるとは思いますけど、私、中学一年だから、監督するのも中学の部活だからね?」
「小学生じゃないの!?」
俺がJCよりJS派だというのを知るのはまた先のお話。
読んでくださりありがとうございます。
一話が短い? ええ、それなら次の話も読んでみてはいかがですか?(露骨なアピール