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02



…………筈だった。


これが転生というものか。

近くにあった鏡を覗けば、蜂蜜色の髪の毛に両目とも蒼い赤ん坊の姿があった。



それから四年の月日が流れた。

五歳になった俺は、ある程度状況が見えてきていた。

俺が生まれたのは魔族に戦争を仕掛けた大国オデュゼの隣国であるテイラジオールだ。

勿論人間の国なので、オデュゼ国に加勢をしていたようだ。

しかも時はそう経っていないらしく、俺は死んでからすぐに転生したようだ。

オデュゼ国出身の勇者達はみな此度の戦争で命を落としたそうだ。

魔王陛下は健在らしく、それを知った時俺は胸を撫で下ろした。

兄や母のことはわからないが、無事であることを願う。

双方に大きな痛手を残した今、冷戦状態らしい。


それから、どうやら俺は王族らしい。

三番目の王子らしく、自分の子どもにあまり興味がないのか今世の両親はあまり顔を合わせることがない。

まぁ、特にそれ程悲しいとは思わない。

いっそあまり構わないで欲しい。

いずれはこの国を出るつもりだから。



それにしても、と俺は溜め息を吐く。

侍女やら騎士がいつも傍らにいて、一人になれないのが苦痛だ。

今では多少慣れたものの、それでも一人になりたいと思うことが多々ある。

前世では魔族の王子だったが、基本自由だった。


「騎士の鍛錬場ってどこ?」


俺の問いに、騎士の一人が西の建物の方だと答える。

連れてけと言えば、困惑した表情を返された。

強めに言えば、渋々案内をされた。


今日まで俺は本を読んで過ごす大人しい子どもだった。

それは子どもが鍛えても筋肉にはなり辛く、鍛えるには効率が悪い。

だからある程度大きくなるまで大人しく本を読むことにした。


五歳になったし、そろそろ体を鍛えようと思う。


その日から、訓練場の見学と、庭で木剣で素振りをする日々が続いた。

ちなみに訓練場へ行く途中、小さな森林を見つけた。

前世で大地に力を与えていたからか、自然があるところはとても落ち着く。

城の敷地内の森林だから、外みたいに魔物もいなくて安全なため、最近そこで遊んでいる。

騎士二人と鬼ごっこをするのだ。

体力作りとか、森の中が落ち着くからというのもあるが、撒いてしまえば一人の時間を作れるため、度々我が儘を言って鬼ごっこをしてもらっている。

木登りが得意になったのは言うまでもない。


三年が経ち、俺は予想より随分と早い転機を見つけていた。


魔族。

身体能力も魔力も高く、人間よりも闇属性の魔法を得意とする種族。

人間の解釈としては魔に属する悪として考えられ、惨忍な種族と捉えられている。


実際、魔族は高い戦闘能力を有しているが、仲間意識が強く、戦闘狂のような脳筋は多いが、平気で殺人を犯すような種族ではない。

戦い、お互いを讃え、仲を深めるような者が多い。


戦争となれば仲間を守るため容赦はしない為、人間には惨忍に見えるのかも知れない。


だから、魔族は人間にとって、殺すべき敵と決まっている。




そうして俺は現在、地下牢にいた。


魔族を二人、捕らえたという話を耳にした。

そうして、明日、民の前で処刑するというのだ。

見世物だ。

悪を倒したと、人々は喜ぶのだろう。


ギリリ、と歯を噛む。

何故、俺は人間に生まれたのだろう。

魔族にまた生まれ変わりたかった。


とはいえ、そんなことを言っても仕方ない。


俺は黒いローブのフードを取った。

目の前の男は俺の顔を見て、驚いたように目を見開くがすぐに先程の、いつでも殺してやると言いたげな表情をした。


「何の用だ、人間のガキ」


低く唸るように問う魔族の男は後ろにいた女を庇うように前へ出る。

しゃがんでいる二人を見下ろし、俺は口に指を当てた。


「静かに。他の奴らに気付かれる」


俺の言葉に男は怪訝な顔をした。


「君たちを外に出してあげる」


そう告げれば、益々訝しむ顔をした。


「貴様のようなガキに何が出来る」

「俺はここの王子だ。この城の地図は頭に入っているし、外への抜け道も知っている。勿論、警備をしている騎士の少ない通りもね」


俺の正体を知ってか、驚いているようではあるが、「信用出来るか」と吐き捨てた。

まあ、その通りだ。

何を企んでいるのだろうと思うだろう。

俺はまだ八歳のガキだし、俺が本当に脱出の手助けが出来る筈もない、とも考えるだろう。

それでも俺の手を取るしかないのだ、この男は。


「いいの?このままだと君たちは明日、処刑されるよ。それは決定事項だ。君はそれでいいかも知れないけど、後ろの彼女を生かしたいとは思わないの?」


痛いところを突かれたと、男は苦虫を噛み潰したような顔をする。


「私のことは気にしないで、ヴェン」

「ユノア」


ユノアと呼ばれた女は目に怪我をしているようで、包帯で両目を巻いていた。

恐らく、包帯を取ったとしても視えないだろう。

女の言葉にヴェンと呼ばれた男は苦しげに返した。




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