表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

01



どうやら、一歳を迎えたらしい。


玩具に囲まれた俺のところへ様々な侍女や騎士が訪れ、傅いて祝いの言葉を述べ、出て行く。

人間だ。

そんな感想が頭に浮かぶ。

魔族は総じてオッドアイだ。

だが、彼らの両目の色は揃っている。


どうやら俺は高貴な身分らしいことがわかった。

いや、それよりも重要なことがある。


これは一体どうなっているんだ?

自分の置かれた状況に困惑しつつ、俺は最期の時を思い出していた。




あの日は、なんてタイミングが悪かったのだろう。

悪いことは重なる、と迷信じみた言葉は存在していたのだ、と思わざるをえない。


俺は魔族だった。

魔王陛下とは父のことで、俺は第二王子だった。

父は賢く、強く、人望が厚い人だ。

俺はそんな父を尊敬している。


そんな父に俺より兄の方が似ていた。

少し脳筋なところもあるが、勇ましく強い。

戦いの最中の獰猛な笑い方をする時、父より兄の方が人間でいう【魔王】にぴったりだと思う。


母は巫女であった。

特殊な力を持つ母は、大地に力を与えることが出来た。

あまり体が丈夫でない母は儚く、優しい、おっとりとした女性だ。

母の役目は枯れないよう大地に力を与え、人々に恵みをもたらすことだそうだ。

母は優しい人だから、そんなことを思ったのだろう。


対して俺は、そこまで人の役に立とうとは思っていなかったのだけれど、父よりも母の血を受け継いだのか、俺にも特殊な力があった。

母より丈夫な分、大地に力を与えることが出来た。

力があるのであれば、見よう見まねで母と同じことをした。

この特殊な力は、精霊が好む力だったのか、母や俺はよく精霊と共にいた。

自然を愛する精霊は、大地に力を与える度、木や花が生き生きとするのを見ては喜んだ。


そんな幸せな日々を傍らに、人間との戦争は激化していった。



偶々日照りがよく続いた。

人間は物を腐らせる悪物である、ザジスを大量に戦いに持ち込んだ。

土を耕す者は戦いに重きを置き、土を耕せないでいた。

戦争の負の感情が濃くなった。


色々な要因があったのだろう。

大地はみるみる枯れていく。

母の体調が悪い日も続き、力を使えるのは俺だけだった。


今まで見た事がない程飢えていく大地に、これではまずいと俺は力を注いだ。

その時は必死で後先を考えていなかった。

今思えばもう少し余力を残すべきだったと反省している。

戦争中なのだから、用心するに越したことはない。


力を注ぎ終わると、遠くで人々の叫びが聞こえる。

力を使ってふらふらだったが、魔王城に人間達を入れるわけにはいかないと、俺は叫びのする方へ向かった。

そうして運悪く、勇者達と呼ばれる一人の魔術士と対峙することになる。


まあ、結論を言えば殺された。

上級の広範囲魔法をぶつけられそうになり、俺はその魔法を防いだ。

人々がホッと安堵した表情を見たのは覚えているが、すぐに魔術士からの殺気に振り返り、氷の魔法で体を貫かれた。

人間も、魔族も弱点は同じ。

心臓を刺されれば、死ぬ。

そしてその魔法は確実に俺の心臓を刺したのだろう。

通常であれば、回避するか、魔法で対抗しただろうが、大地にギリギリまで力を与えていた俺は満身創痍だった。


上に立つものとして、冷酷な判断をする父。

実際は愛情深い。

俺の死を悼むだろう。

兄もあれで可愛がってくれていた。

母はただただ心配だ。

同じ力を有していただけあって、母が体調を悪くし、俺だけが力を使っていると申し訳なさそうにしていた。

そんな母だ。

今回俺が大地に莫大な力を注いだことにすぐ気付くだろう。

当分大地に力を注がなくてもいいくらいは注いだつもりだ。


そうしてきっと俺の死とそれを連結させて、自分を責めるのだろう。


ごめん。


申し訳なさと、人間への憎しみを抱え、俺は絶命した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ