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小田からの贈り物

闇、病み、已み

作者: 小田虹里

 こんなにも苦しいのは、身体中の傷の所為じゃない。


 誰も、わかってくれないからだ。


 こんなにも苦しくて、こんなにも病んでいて。


 誰からも必要とされていない、俺は……赦されない存在なんだ。




 ひとは、当たり前のように朝起きて、食事をし。

 学校や仕事へ行く。


 昼にはまた、食事をとり、午後から動く。


 夜には帰宅し、最後の食事をして風呂に入り、眠りにつく。




 それが、当たり前。

 出来て、当たり前。




 だが俺は、そのどれも……まともに出来ない。




 こんなにも沢山の薬を手にし。

 一気に飲み干す、合法医療ドラッグ。


 眠れない。


 起きれない。


 食べれない。


 制御できない。




 何を?




 俺を……。




 自分が分からない。

 自分が怖い。

 自分が止められない。

 自分が嫌い。

 自分が信じられない。




 何も、信じられない。




 だから、傷をつくる。


 止められても、忌み嫌われても。


 自分を確かめたくて。

 自分の存在が欲しくて。

 自分の血が見たくて。




 あぁ、刃が皮膚を切り裂く。


 滴れ落ちる赤い液を見つめる。

 どうしてこんなにも、こころが安らぐのだろう。


 俺が病んでいるから?

 血液を流すことに、安定作用があるから?




 痛みなんて、無い。


 些細なもの。


 心地よさが、広がっていく。

 ようやく、眠れそうだ。

 



 トク、トク、トク……。




 心音が聞こえてくる。


 どうして俺は、ここまで病んでしまったんだろう。

 どうして誰も、俺をここから救い出してくれないのだろう。

 どうしてひとは、俺を異端だと決め付けるのだろう。




 俺だって、「ひと」なのに……。




 薬が無いと落ち着かない。

 薬が無いと眠れない。

 薬が無いと動けない。

 薬が無いと優しくなれない。




 薬で成り立つ俺は、ひと以下?


 クズなのか?




 社会人は偉い。

 学生は偉い。




 フリーターは、普通。

 ニートは、クズ。




 世間の目は厳しい。




 夢がある。


 応援される。




 夢がない。


 哀れまれる。




 俺に、自由は赦されないのか。




 世界は、平和。


 日本は、戦争なき国。


 否、戦争をやめた国。




 俺は、恵まれている。

 俺は、救われている。




 ただ、小さな戦争……虐めは続く。


 今日もまた、泣いている声がする。




 俺だけじゃない。




 この国は、この世界は、病んでいる。




 病んでいるところには、傷口には、薬を。

 癒しと治療を施さないと。


 広がる一方。




 一度広がれば、治りは遅くなる。




 止めろ、止めろ、止めろ。




 闇よ、病みよ、已め。




 すべてのものに、平穏を……。




 生まれてきた喜びを、俺は知りたい。




 俺にも、誰にでも希望はあるのだと、信じたい。




 こんにちは、小田虹里です。


 「永遠」は、夜なかなか寝付けず、言葉が浮かんできたので綴り。


 今度は早起きしてしまって、言葉が浮かんできたので、「やみ」を綴りました。


 主人公「俺」は、現代に多いんじゃないのかな……と、思えるような人物像にしてみました。


 「もっと辛い」「生ぬるい!」という声も、あるかもしれません。


 「闇」も「病み」も真っ暗で。


 それでも、いつかは「已む」のだと信じたい……私は。


 そんな願いをこめて、綴りました。


 「もっと、見て」「自分を見て」「関心を持って」と。


 そんな声を、届けたかったのかもしれません。




 読んでくださり、ありがとうございました。



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― 新着の感想 ―
[一言] 私も、心を落ち着ける薬とかを飲んでいますからね…… 同感できます、彼には。 クラスメートも私を『異端』だと思っていて。よく悪口を言われたり……。 でも、先生が話してくれて変わろうとしてくれて…
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