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剣聖輪転  作者: 遊喜菜園
1/22

今生

ト伝流手裏剣術って何?

わし?浮いてる?


やたらと周りが騒がしく、何事かと目を開けるとなぜか浮いていた。


愛弟子達が布団を囲み、その裏には多くの門下生が並び、個々に悲しみに耽っている。


儂悟ったかも?死んだね。


剣の道を極め、将軍に指南出来るまでになり、門下も気がつけば1万を超え、天下無双を成し遂げ、齢83にして天寿を全うした。


儂の人生、悔いは無い。愛弟子達が泣き崩れておる。


ありがとうな?汝ら息災で。


そう思うと徐々に体が天へと登りだした。


ぬわっ!


何故か目が開いた。


そこには見慣れぬ天井があった。


「この子は何変な寝言言ってるんだろねぇ。」


齢40前後の女性に抱きかかえられ、頭をなでられた。頭をなでられるなど何十年ぶりか。


?いやまて、儂は83ぞ?


「レインや?嫌な夢でも見たのかい?」


その女性は儂の顔を見、微笑んだ。

髪は赤毛で堀の深い女性だった。

昔、都にあった南蛮寺の宣教師がたしかこんな顔をしてたな。

と思い出した。


「昨日クルミの実を取りに木に登ったはいいけどあんた、落ちたんだよ?今まで寝込んでたけど大丈夫かい?母ちゃんは心配だよ。」


なるほど。


南蛮人は母か?って儂さっき死んだばかりでは無いのか?


「6つになったからと言って無茶するんじゃないよ?」


と南蛮人の女性は儂の頭をなでた。

儂、なんか歯痒い、よくわからん。

と悩んでいる最中、頭が生温くなった。

視界が赤くなった。


「えっ?」


南蛮人の女性が吐血し儂に被さった。

何が起こった?南蛮人の女性は儂を隠し倒れた。

何者かに背中から刺されたのだ。

吐血しながら南蛮人の女性は


「動くんじゃ・・・ない・よ・」


力弱く、崩れそうな声で儂を必死に隠した。


「なんじゃ?この家はババアだけか?食料と金目の物は無いのか?」


「こっちになんか麦があるがな。肉はねえか?」


下品な声の男どもが家に入って来た。


「外で刺したオヤジの女だろう。この村は収穫が先週終わったばかりだからどこかに溜め込んでるはずだ。」


野武士の類か野党か?外にもかなりの野武士がいるようだ。


「おう!あっちの家にドアを締め切りやがった奴らがおるわ、お前ら手伝え!」


「おうよ!お前はこの家を頼むな?」


「わかった。」


この家に居た野武士が二人外へ出て行った。


「へへへ。なんか金目の物はねえか?」


残った野武士は隣の部屋に向かった。この家には野武士は一人、南蛮人の女性の首元に指をやる。事切れていた。久しく忘れていた怒りが込み上げてきた。


「外道を許す程儂は出来ておらんわ」


南蛮人の女性の亡骸から這い出し、隣の部屋に近ずいた。野武士は荷篭を物色していた。


「おい、外道!」


野武士は振り返り儂を見た。


「なんじゃ?ガキか?」


野武士のその一言、言うが前に野武士の腰物を引き抜き喉を貫いた。


やはり儂はガキなんじゃな?こやつ、そう言おうとしておった。


野武士の腰物を見た。


匕首じゃな。

ほう?もう1本は脇差しか?段平ほどは長く無いな?まあ、人斬り包丁に変わりはなかろう。

儂はそれを抜き身のまま持ち外に出た。


外には黒髪の南蛮人の男が背中から矢を受け、喉を掻き斬られ、事切れていた。

となると恐らく儂の父親じゃろう。


二人ともすぐに済むからしばらく待っていてくれ。


「なんじゃ?誰だ?ガキを討ち漏らしたのは?」


野武士の一人が儂に気付き、両手持ちの刀で向かってきた。


「親と一緒に逝っときな!」


大振りに真っ直ぐ振り下ろしてきたのだが振り下ろす前に既に儂の一刺しで脇から心の臓を貫き、儂は次の野武士を探した。


さっき野武士が言っていた締め切った家らしい。

三人の野武士が松明を持って火を点けようとしていた。

儂はさっきの野武士が持っていた両手持ちを拾い、


重た!


そうじゃ、儂まだ6つなのじゃった。


しかたなく両手持ち野武士の匕首を探し出し、松明持ちの一人の頭にめがけ投げつけた。


松明持ちは見事後頭部に刺さり絶命し、前に倒れた。


それに気づいた残りの二人が儂を見るや抜刀し、儂を斬りつけるはずだったのだろう。


儂の段平が一人目の首を横一文字に斬りつけた返し、もう一人の喉から頭にかけ貫いた。


儂は刺さったままの段平から手を離し、また野武士が抜き切れて無い刀を抜いた。


今度のは少し長い直刀だった。


「刺すにはよいか?」


周りを見回すと女の悲鳴が聞こえた。


儂は聞こえた方向に走り、女を襲う二人組を見つけた。


一人は弓持ちで一人は両手持ちだった。

弓持ちが厄介だったので声を張り上げる


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


儂の声に気づいて弓持ちが弓を装備しだす。


両手持ちは剣を抜き儂に近ずいてきた。


「ガキ!」


振り下ろす両手剣を交わし弓持ちの視界から隠れ両手持ちの喉を貫き、両手持ちの腰物を抜いた。

また匕首を抜くと左右に移動しながら弓持ちに素早く近ずく、狙いが定まらず弓持ちは嫌気が指し、腰物を抜く、と同時に額に投げつけた匕首が刺さり絶命した。


周りを見回す。

静まり返っていた。


まだ油断がならないため弓持ちの腰物を抜いた。

段平だった。


「レインくん?あっ、ありがとう。」


襲われてた女が儂に礼を言った。


「ここを動くで無いぞ?まだ安全では無いかも知れぬでな。」


「えっ?レインくん?」


野武士の親玉は討ち漏らしたのか?または討ったのか?気を張り巡らす。


いた。

騎馬だ。


騎馬がこっちに近ずいて来るのが分かった。


「娘よ、建物に避難せい!」


「はっ!ハイ!」


まず弓を取った。

まだ騎馬に見られてないはず。

屋根じゃな?上に上がろう。


屋根の上に登った。


やがて騎馬が三人現れた。


「お頭!こりゃあ!」


「だっ!誰だ!俺の部下を殺したのは!!出てきやがれ!」


騎馬の一人が吠える。


奴ら野武士のくせに装備がいいな?帷子に鉄板付きか。


射抜くは難儀である。


「馬か。」


馬には済まないが狙いをさだめ射抜こうとした。


「!」


親玉らしい奴、娘か?

人質か?

あと四人なのか?

親玉の馬にもう一人娘が乗っていた。


仕方ない、親玉の頭を狙い射抜いた。


見事、頭を貫き、残る騎馬は二人、屋根から移動し馬を射抜く、三人目の騎馬がこっちに気付き、抜刀し迫ってきた。


刺し違えは無い、冷静に矢を放ち馬を射抜いた。


見事落馬に成功し、弓を捨て段平を装備し、最初の馬を射抜いた騎馬武者の頭を持ち後ろから首を掻き斬った。


最後の落馬武者がなかなか立ち上がらない。


儂は近ずいてみた。


運が良かった。


落馬し絶命していた。


終わった。儂は段平を捨て、両親の亡骸に向かった。


「レインくん?」


先程助けた女が儂に声をかけてきた。


「仇は取れたのかの?よくわからんのじゃ。」

無意識に儂は女に喋った。女は無言で儂を抱きしめた。


「終わったよ・・・。」


日が開けた。ここは家が10件程ある村だった。

何件かは野武士の被害で全滅した家もあった。

生き残った人達が両親の亡骸を弔ってくれた。

儂は取り敢えず助けた女の世話になる事になった。

女の名前はミリエラ、齢11の娘で髪は赤毛、後手で縛ってあり、細面で堀が深く、かなり腰が太くなくては良き子供は産めない体型であった。

先の野武士の略奪で儂と同じく両親を殺られたらしく、今回は二度目の略奪らしい。


「レインくん、野武士って何?あれは盗賊。」


ミリエラはやたらと儂にうるさい。


段平じゃなく、ブロードソード、匕首じゃなくグラディウス、両手持ちじゃなく、バスタードソード!あい分かった。


「今日ね、生き延びた人達が集まって話合いがあるの。レインくんはモチロン参加だからね?だって村の救世主だよ?」


儂6つじゃが?難しい話は無理じゃぞ?ところでミリエラ?儂の名前はレインなんじゃな?

「レインくんはレインくんだよ?一昨日クルミの木から落ちてからかなり変だけど?」


あい分かった。


儂の来世の名前はレインなんじゃな?どうやら来世は南蛮人らしい。


日の本言葉を喋っていると思っているか恐らくこれも南蛮言葉じゃろう。


「ほら!スープ冷めちゃうぞ?」


ミリエラの言われるままに湯煎塩水を飲んだ。

味噌汁飲みたい。


村の中心に生き延びた人達が集まり始めていた。

儂とミリエラが到着すると歓喜の声が上がった。

何人にもお礼を言われ、集団の中心に移動させられた。


「今回の略奪で村長一家が殺された。」


ミリエラが儂の肩を力強く掴んだ。


「レインのおかげで村は救われた。レインには感謝している。」


また歓喜があがる。


「話は変わる。村長を決めなければならない。」


大人達が話合いを始めた。


ミリエラよ?


「ん?」


年貢は誰に納めるのだ?


「年貢?何それ?」


すまない。・・・税?か?


「?ここリッカ村は領主とか居なくて、街と街の街道の中心ぐらいにあるの。街道を利用してる商人とかと相手して暮らしているんだよ?」


つまり、税金の類は納めていないと。


「の、はずだよ?」


守衛などはいないと。自分の身は自分で守れと。


「オスロン。あなたが村長になればいいだろ?」


「私か?」


「誰か依存ある者は?」

村長も無事決まったらしい。


「では村長は私が仮でやるとしよう。では次だ。」


新たな村長は盗賊の装備品を並べた。


「奴らの物だ。」


「全員レインが倒したんだろ?全部レインの物だろ」


「どうだ?レイン?」


オスロンが私を見た。

並べられた野武士の装備品を見た。

帷子鉄板当ての鎧以外はたいしたものがある訳ではなかった。


?曲刀か?


「ああ。それは親玉のカットラスだな?まだ鞘に入ったままだ。なにせ、レインの矢が一撃だからな。」


手に取り抜いた。

なにがあるかわからんな。

手持ちはこれでよいか。


「あとの装備品は警備用に村にあればいいのでは?オスロン殿に任せる故に・・・」


「?あっ!ああ。なるほど。村の警備用にな?あぁ」


「ごめんなさい、オスロンさん、レインちょっと今変だから。」


儂変なのか?


「あっ、あとこの娘だ、親玉と一緒に馬に乗っていた。」


?あの時の娘か?


「ハーフエルフのようだ。どこかからか攫われたのだろうな。」


「レインの物だなやはり。」


「オスロンさん!まだレインには早いと思うんだけど!」


ミリエラ?早いとは?何ぞ?儂今日までに10人殺したが?人を殺せればもう一人前じゃて。


「早いも何も、リタの希望なのだが?」


娘の名前はリタと言うらしい。

オスロンの話では親玉を倒した人間に仕えたいと話していたそうだ。

金毛にわすがに赤毛がかかり、耳が少し尖っている。

顔はやはり南蛮人なのだろう。

細面で堀深い。

目は緑で肌は白い。

かなり太くならないと良き子供は産めない。


「・・・ミリエラ殿となんら変わぬな?」


「なに言ってるの!レイン!」


いや誠にこちらの話じゃ。


「あっ、あの!レイン様?お嫌でなければお仕えしたく存じます・・・。」


ミリエラ殿別に良いのでは?食い扶持が一つ増えても、儂の両親の分があろうて?


「食い扶持の話じゃなくて、亜人種を家に置くんだよ?しかもハーフエルフの。エルフからも人間からも迫害を受けて」


「ハーフは禍を招くと言うらしいからな?」


オスロンが割って入った。


「黙れ貴様ら!リタ殿が来る前から野武士の被害があったのでは無いのか!」


儂は一喝した。

周りが恐怖に硬直した。

なんじゃ?まだ気当てが使えるみたいじゃの?やりすぎたわい。

手を打つ。気当てが消えた。


「?レインくん?今のは?」


「良いわ。ミリエラ殿、彼女もまたタダの人、儂とて同じじゃ。のうオスロン殿。儂で良ければリタ殿と暮らそう。」


「あっ!ありがとうございます!レイン様!」


儂に向かってリタ殿は飛び込んできた。

リタ殿の方が大きい故、倒される儂、まだまだ未熟なり。

ふとミリエラ殿を見ると膨れっ面でこちらを睨んでいる。

オスロンとその他の村人はニヤニヤしていた。



「!!」


「左から早駆けの馬、一騎くるぞ!」


馬鉄の音が聞こえてきた。

リタを身体から退かし、騎馬に身構えた。


気当てが使えるのが分かったので騎馬恐れるに足らず。


「リッカの民よ!恐れるに足らず。ガダの街、リフテン領主よりの使いである。」


なんじゃ、使者か。


儂は構えを解いた。


「村長は何処か?」


「昨日村長は盗賊により殺されました。今は代理で私、オスロンが務めてます。」


「分かった!手配書を伝える。盗賊団、風渡りのサバイ一党!討伐者に金200!人相書きである。」


周りに居る村人達は人相書きを見て絶句した。

サバイ一党は昨日儂が撫で斬りした後であった。


さてさてミリエラ殿?金二百とは?いったいいくらの価値があるのかの?


「ウーン・・・わかんない。」


「レイン、村五年は働かなくて食っていけるぞ?」


オスロンが儂の肩を握った。


「誠に。サバイ一党である事確認した!リフテン領主に報告する故に失礼いたす!」


使者が再び早駆けにてガダに向かった。

使者の話では馬で半日でつくらしい。

金二百か。

周りの気配が変わるのが分かった。

村が五年食っていける金を儂6つが持つのだ。

良からぬ考えも湧きようて。


「オスロン殿、後は難しい話だけならば儂は二人連れて帰るのじゃが?」


「!おお。ありがとうな?レイン。お前のおかげで村は救われた。本当に感謝している。」


ヌシは感謝しておっても周りがな。


さてさてどうした事か・・・。


「レイン様?」


「レインくん?」


オナゴ二人かぁ。


難しいのお。


守れるじゃろか?


儂は悩みながら家路に急いだ。

後ろからミリエラとリタがお互いを牽制しながら着いてくるのが分かった。


・・・致し方無し!

家に着くなり二人に言う

「ガダに向う。金二百貰ったら。今日中に旅の支度をして貰いたい!」


「判りました。」


リタは返事をすると家の中をひっくり返す勢で漁りだした。


「なんで?レインくん。リッカを離れるの?」


ミリエラが不思議そうに訪ねたがリタが横槍を入れた。


「お気付きになられなかったのですか?オスロンさん以外の目付きを?あれ程の太刀廻りをしたのに、相手は子供、これだけの被害があったのです。誰しも欲くなりましょう。金二百」


「まさか!?」


ミリエラが驚いたがリタが説明した。


「村人を信じるので?先程レイン様が言った事を理解されていませんのね。所詮はタダの人だと」


「親しき者達だったとしてもおそらく斬り合いになろうて、儂から奪ったとしてもまたその金目当てに斬り合いが始まる。負の連鎖じゃな?ミリエラ殿?儂は連れて行くつもりじゃが?如何致す?ちなみに貴女もここにおれば斬られるがの」


ミリエラはそれを聞くと泣き出した。


「レインくん、村の為に戦ったのに村の人たちに命を狙われるなんてそんな悲し事・・・」


「・・私を汚らわしい目で見た人間が何を綺麗事を・・・」


リタ殿、たしかに一利ありますな。


「オッホン!まぁミリエラ殿、儂と仲良くし過ぎた為じゃ?済まぬか旅立ちの準備はしといてくれ?頼む!」


両の手を付き、ミリエラ殿に頼んだ。


「・・・貴方の世話をするって決めたんだから、行くわよ!!」


・・・さてさて、守り抜ける事やら。


「レイン殿の代理者オスロン殿、レイン殿からの言伝である。」


リフテン領主の使者がオスロンの家に入った


「この金二百にて、用心棒を雇い入れ、村の活性化に勤めよ!」


「レインが?ですか?」


「我はたしかに伝えた故に!」


使者はオスロンが聞く事を無視しながら村から帰って行った。


「よろしかったので?レイン様?」


小さな荷車と親玉の馬を村から盗み、街道をガダに進む、リタが馬の手綱に苦戦している儂に話しかけた。


「荷馬車とは苦戦する物よの?リタ殿?乗るのは得意なんじゃがな?」


ミリエラ殿は如何致したかと見ると儂と目があい、微笑んだ。


その光景にリタ殿は何故か膨れ面になっていた。









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