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一夜の夢
「では、わしも一踊りするか!」
温羅は陽気にいい放つと、総踊りの中に混じっていった。
うらじゃ祭りの最後は、飛び入り参加の一般人も踊り連と一緒にみんなで踊ることができる。
子供、大人、老いも若きも、中には外国人までも混じって、楽しそうに踊り始めていた。
温羅の姿はほとんど消えかかっていたが、百襲媛は最後の霊力を振り絞って、彼の魂を地上に繋ぎ止めていた。
常世、黄泉の国、この吉備の国の地霊となった温羅の魂を地上に現すことは、神霊となった百襲媛の霊力をもってしても困難であった。
「もう少しだけ」
涙でかすむ目で、百襲媛は温羅の踊る姿を見つめていた。
自分の千年を越える神霊としての生も、まるで一夜の真夏の夢のようだと思えた。
ほんの一瞬、瞳を閉じた後、陽気な鬼の姿は魔法のように消えていた。
後には、相変わらず賑やかな祭り囃子が鳴り響いていた。
ということで、このお話はここで終わりです。
「鬼ノ城戦記」の後日談のため、本編の内容が分からないと全く意味が分からないと思います。
まあ、雰囲気だけ伝わればなあと思います。