朝練
パソコンが、使用禁止になってしまったので、携帯からの投稿になります。今はまだ、ストックを投下してるだけですが、ストックが切れたら、更新が遅れます。正直、携帯で小説を書くのはきついので、禁止解除までは設定の方に時間をかけると思います。テンポがどんどん悪くなって本当にごめんなさい。
レンがこの寮に来た翌日の早朝。
「ほら、もう朝だぞ! 起きろー!」
632号室に海斗の声が響いた。拓也は寝起きが悪い。
毎度の事ながら、起きない拓也に呆れながらも、海斗は拓也の体を揺する。
「ほらほら、拓也! 今日から学校だからいい加減起きろって!」
「そうか、今日から……学校かぁ……zzz」
「レンの前でそんなだらしないトコ見られて良いのか?」
「ん……レンはもう起きてるのか?」
「まだ起きてないはずだけど……」
そう言って海斗はレンが寝ているであろう布団を見る。途端、海斗の顔色が変わった。
そう。レンが寝ていたはずの布団にはレンはいなかったのだ。
「え……嘘……」
動揺する海斗。そして、
「拓也! おい、拓也! レンがいないんだ!」
「朝っぱらから怒鳴るなよ……って、えええ!?」
海斗の声にやっと、目覚める拓也。目が半開きの状態で眠そうだったが、レンがいないという事を言われた瞬間、眠気は完全に吹き飛んだようだ。
慌てて拓也もレンの布団を見る。もちろんそこにレンの姿は無い。
「おいおい……」
「拓也、どうしよう……」
心配でそわそわしだした海斗だったが、窓の外に動くものを見た。
海斗は窓からその動くものを見た。そこには綺麗な金色の髪の毛をした小さな少年が二つの剣を背負いながら、走っていた。
呼吸でリズムを取りながら、まだ日も出ていない学園内を走っていた。
毎朝の日課だ。そのせいで、海斗や拓也に言うのを忘れてしまった。
もしかして、心配されてるかなぁ……?
その事を少し気にかけながらも、ノルマである10kmを走りきった。
「都会だから空気は汚いかなと思ったけど、この学園内はかなり澄んでいるなぁ」
そんな事を呟いていると、近くの茂みから音が聞こえた。
風を切る音と、それに伴い「はっ!」と言った声が聞こえてくる。
僕以外にも誰かが朝練をしているようだった。誰だろうと、僕はその茂みに近寄る。
「誰っ!?」 近寄ると、向こうもこちらに気づいたようだった。しかし、声は警戒心たっぷりの声だった。
「あ、ごめん。驚かせたかな?」
謝りながら茂みから出る。隠れていたわけではないが、身長が低かったことや、ろくに手入れをされておらず伸びきっている草のせいで相手からは隠れているように見えたらしい。
「あなたは……?」
先ほどよりは警戒心は解けたようだが、まだまだ警戒はしている。
「僕は石口蓮。このLiMACの一年だよ。そういう君は?」
そういって目の前にいる相手に話をふる。その時に相手の顔を見ると、どうやら女の子のようだった。
「え? あ、私は……ってそうじゃないでしょ! 何であなたはここにいるのよ!」 長い緑色の髪を後ろで縛っているポニーテールの少女。可愛らしい顔とは裏腹に出てくる言葉は結構攻撃的だ。
「えー、僕も名乗ったんだからそっちも名乗るのが礼儀じゃない?」
「それもそうね……私は徳川光華。あなたと同じ一年」
お? 同級生だったんだ。嬉しいなぁ。
「な、何でにやけてるのよ?」
ついつい顔に出てしまったようだ。
「だってさ、この学園に入ってから初めて同級生の友達が出来たんだよ?」
「えぇっ? と、友達!? だ、誰と誰がよ!」
「僕と光華ちゃんに決まってるじゃん?」 あれ? 僕は何か誤解されること言ったかな?
「ちょっと! 何で私とあなたがもう友達なのよ!?」
「え? お互いに自己紹介して、こうやって会話してるじゃん」
「あなたおかしいんじゃないの?」
心外だ。僕は至極もっとも当たり前なことを言ったつもりだったんだけど……。
「ねぇ、光華ちゃん」
「な、何よ?」
「さっきから『あなた』『あなた』って……僕は石口蓮って名前なんだから『あなた』じゃなくて名前で呼んでよ」
「何で私があなたの名前を呼ばなくちゃならないの!」
「またあなたって……僕達友達じゃん」
何で、こんな風な態度をとられなければならないんだろう……。僕、何か悪い事したかなぁ……。
僕のテンションは一気に下がって、その場所にうずくまってしまった。
side 光華
先ほどまでしつこく私に友達だとか言ってきた美少ね……じゃなくて変わった男の子が急にうずくまってしまった。
(え? どうしたの?)
私は心配になり、その少年に近寄る。
「ちょ、ちょっと! どうしたの?」
「うっ……名前で呼んでくれないよぉ……」
帰ってきたのはそんな言葉だった。私は少し呆れてしまった。
だが、チラッと見た少年の顔には悲しみの表情と、頬を流れる液体。
(何で、この子ここまで……?)
「しょうがないわね……ほらレ、レン、これでいい?」
思わず名前を呼んでしまったが、妙に恥ずかしくなる。
だが、次の瞬間、少年はパッと顔を輝かせた。涙を目に浮かびながら、幸せそうに笑う少年。
その笑顔に一瞬顔が熱くなるのを感じ、慌てて私は少年から目をそらす。それを不思議そうに見てくる少年。
「で、あなたはどうして――」
あなたはどうしてここに? と尋ねようとした時、少年の顔がまた暗くなる。
うっ……。とてつもない罪悪感が私に訪れる。
「レ、レンはどうしてここに?」
冷静を装いながら今度こそ尋ねた。
「実は、ランニングをしてたんだよ。朝の日課なんだ。そしたら、音がしたから誰かいるのかなぁって思って」
そう言いながら、レンは私の全身を見る。
「光華ちゃんは剣の素振りでもしてたの?」
「そ、そうだけど……」
「じゃあさ、僕も一緒にいいかな?」
そう言って背中から剣を一本取り出すレン。
「別にいいけど……」
「やったぁ! 一人でやるより二人でやるほうが楽しいもんね」
そう言ってレンは素振りを開始した。
レンも同じ片手剣だと思っていた。しかし、レンは素振りを始めると、背中からもう一本の剣を抜き出していた。
レンは……双剣使いだったのか……。
side out
素振りをしているとき、ふと気が付いた。先ほどから光華ちゃんの手が止まっている。
どうしたのかなと思って振り向くと、彼女は僕の両手をじーっと見ている。
あぁ、双剣使いって珍しいんだっけ。忘れてた。
「やっぱり、双剣使いって珍しいかな?」
だがその問いかけには答えず、ただじっと見つめている。良く見れば、目はこちらに向いているのだが、心ここにあらず、と言った感じだ。
「あ、あれ? 光華ちゃん? 大丈夫?」
僕は素振りを止めて、彼女に近づいた。
しばらくすると、だんだん彼女の目に光が戻ってきた。
「ひゃ! レ、レン近いよ!」
少し顔を赤らめ後ろに移動する光華ちゃん。
だが、すぐに先ほどの表情に戻りかける。それを頑張って表に出さないように無理やりに笑顔を作った。そんな印象を受けた。
「えっと、光華ちゃん、どうしたの? 急に喋らなくなったけど?」
「あの、えっと、それは……」
「別に言いづらい事だったら言わなくてもいいよ」
「いえ、その……実は、私の父親は双剣使いに殺されてしまったのよ。それで、その……双剣を見ると昔の事を思い出してしまって」
「…………」
「双剣を使っている人が、みんな悪い人って訳じゃ無いんだけど、やっぱり……昔の事を、思い出して……しまいます……」
そう言って、彼女は泣き出してしまった。僕はどうすることも出来ず、彼女が泣き止むまでただただ突っ立っていた。
「あの、ごめんなさい。いきなり泣き出してしまって……」
「…………」
――昔、一人の女性を助けるために、双剣で多くの人々を傷つけてしまった者がいる。彼は、彼女を護るために力を使ったのだ。結果、彼女は助かったが、彼は犯罪者となってしまった。
――…………。
――はは、レンにはまだ早かったかな。お前の人を救いたい気持ちはわかる。だが、世の中、小説のように大団円では終わらない、という事は覚えておけ。
そんな、会話が脳内で再生された。もしかしたら、彼女の父さんはこの事件に関係があるのかな? そう考えると、僕はよく分からなくなっていた。結局僕は何も言えないまま時間が過ぎた。
「……寮へ戻ろうか」
そんな言葉しか、僕の口から出るものは無かった。
「はい……」
僕は、彼女と別れた。次会うときは、笑顔で会いますようにと祈りながら……。
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