入学試験 ―筆記試験―
この話から、学園の始まりと考えていいでしょう。勇戦協会なんて物が出てきましたが、この物語は学園の話をメインストーリーと考えています。ありがちな内容になると思いますが、それでも良いと言う方はお付き合いください。
僕の小説は大体、一話で2000~3000文字ぐらいの短さですが、一日一話更新を目指しているので、ご了承ください。
少女が魔獣に殺されてしまった事件から六年の月日が流れた。
僕はあの後、引きこもってしまっていたが、堅く心に思った。強くなりたい、と。誰かを救いたい、と。
『君』のおかげでわかった。引きこもってばっかじゃ何も変わらない。だから、僕は毎日体を鍛えた。
朝は体力づくりをして、昼間は双剣の練習をした。夜になれば魔法の勉強をした。
そんな生活が続いた。最初は体を何度も壊した。だけど、諦めるわけにはいかなかった。自分の背負っている十字架が諦めることを許さなかった。だからどんなに厳しくても辛くても弱音を吐くなんてありえなかった。
誰かを護る、誰かを救う、そんな事を専門にしている職がある。それが勇戦協会だ。勇戦協会の一番の目的は人々の助けになる事だ。つまり、護衛や魔獣の討伐以外にも様々な依頼を受ける。僕はそこに入る事を第一の目標にした。
両親も僕が勇戦協会に入りたいという事はわかっていたらしく、LiMACへの入学試験を勧められた。
そもそも勇戦協会に入るためには、学校に通い推薦状を貰うか、または協会が行う一年間の合宿を行い合格するかだ。前者は、僕のような子供が使い、後者は、他の職業や協会から転職するときに使ったりする。
そして勇戦協会へ入るための推薦状を出す学校をvaliveと呼ばれており、そのvaliveの中でも群を抜いて飛び出てる四大valiveの一つがLiMACである。
この四大valiveは、各国に一つずつある。国からの支援が厚く、四大valiveでは学園の中に様々な店があり、たいていの物は学園内で整えることが出来る。多くの本が置いてある図書館もあり、学生だけではなく研究者といった人たちも学園の許可を得て見に来るほどだ。そして、建物には全て強力な魔法が組み込まれていて、兵器級の魔法ですら数発は耐えるらしい。さらに普通のvaliveはともかく、四大valiveは下手をしなければ勇戦協会への推薦状はほとんど確実に貰えるのだ。
学園自体もでかく、四大valiveは一つの町と思えるほどだ。ただ入学試験にかかるお金がかなり高い。そのため、軽い気持ちで試験を受けさせる人はいない。だから、自信が無い親は勧めるどころか逆に受けさせない。
つまり、入学試験を勧められるだけでも、親にはそれなりに認められているという事になる。
そんな親のためにも、そして勿論僕自身のためにもなんとしても受かりたい。
入学試験とは具体的に言うと、実技テストと筆記テストを両方受ける必要がある。実技テストとは、武器を使い、学校が用意した亜空間内で障害を乗り越えていくという物だ。筆記テストは、魔法や算数といった一般科目についての問題を解いていくという物だ。
僕は受験に備え、今までよりもさらにハードに勉強と運動をした。
━━入学試験当日━━
テストではまず最初に筆記テストを行う。理由は簡単だ。受験する人が多いため、筆記試験の採点に時間がかかるのだ。少しでも早く採点を行うため、最初は筆記試験を行うのだ。
逆に実技試験の採点は簡単だ。亜空間の攻略タイムがそのまま点数に変換されるのだ。つまり実技試験ではミッションを早く終わらせることを重要視しているのだ。
そんな訳で、僕は周りの受験生と一緒に筆記試験会場に向かった。
試験前まで参考書を読んでいるもの、気分をリラックスしているものなどいろいろいたが、一番驚いたのは試験が始まるまで寝ていた奴だった。
余裕そうな奴もいれば緊張で落ちつか無そうにしている奴もいる。
そんな中、筆記試験が始まった。
Q.魔法属性を全て答えよ。
A.火、水、風、土、木、無、光、闇
Q.初めて使われた魔法の名前と属性、そして効果を答えよ。
A.魔法:ヘルフレイムver1.0byダッチネス=クライ
属性:火
効果:小さな火を生み出す。
Q.人類滅亡を囁かれた127年前の魔物の襲撃事件を解決し、英雄の称号を手にした者達の名をフルネームで答えよ。
A.サイリシウム=ジャポス
ブローディア=ケニクロス
ダリア=ローズ
和泉田 忠仁
リリウム=ロンファー
Q.魔力の保持量は何で決まるか答えよ。
A.両親の魔力保持量の多さで初期魔力が決まり、その後は年齢が上がるにつれて魔力保持量は増加する。また住んでいた環境の自然魔法量が多ければ魔力保持量は増加。
魔力増幅訓練を受けることによっても魔力保持量は増加する。
etc...etc...
こんな感じの問題をひたすら解き続けていた。そして、ついにテスト終了を告げる鐘が辺りに鳴り響いた。
その後も算数、国語、理科、歴史などの試験をしていった。そして午前の部は終わりを告げる。午後から実技試験だ。
その間に一時間の昼休憩が与えられた。僕は、昼食を食べるために校舎内にある食堂へ向かった。校舎外にも食事を出来るところはあるが、そこでは入学した後に貰える特別な通貨が必要らしい。
食堂は凄くシュールな光景だった。人は凄く多い。だが、話している人は少なく、聞こえてくる音は食器と食器がぶつかる音ぐらいだ。
僕も食券を購入し定食を受け取った。僕はどこか席が空いてないかと探すと、目の前の二人組みが席をたったので、そこに座ることにした。
早速ごはんを食べようとしたときにふいに声をかけられた。
「あの……相席してもいいですか?」
その声に反応し、僕は顔を上げた。そこには栗色の長い髪の少女が立っていた。
「ん、勿論いいよ」
「えっと、失礼します」
そういって、少女は僕の前の席に腰をかけた。正面から見ると、顔は可愛らしくついついじっと見てしまったが、我に返り慌てて顔をご飯に向けた。
その様子がおかしかったのか、少女はクスクスと笑った。恥ずかしくなったので、僕は適当に話をすることにした。
「僕は石口蓮って言うんだ。君は?」
「蓮君って言うんですか。私は藤田美月です。受験のために地方から出てきました」
「へぇ、美月ちゃんって言うんだ? 僕も地方から来たんだよね。えっと、冬月って所なんだけどわかる?」
「冬月ですか!? あの、あの、私は夏月ですよ!」
僕の故郷は、冬月、夏月、春月、秋月の四つの町が固まっている。地図上では分けて書かずに、この四つを纏めて四月と書かれていることもある。
「驚いたなぁ。夏月っていったら結構近いじゃん! 長期休暇で帰省する時期がかぶったら、美月ちゃんの所に遊びに行っていい?」
「いいですよ。夏月を案内しますよ!」
こんな感じの会話していたらいつの間にか、時間が迫ってきて、僕らは別れた。別れてから冷静になって考えてみたら、試験に合格できなかったら意味無いじゃん、って気づいた。
落ちるに落ちれなくなったなと気合をいれて実技試験に臨んだ。
誤字脱字の報告、アドバイスなどを頂けたら嬉しいです。
読んでくれた方と、お気に入り登録にいれてくれた方、本当にありがとうございます。
10/24 変更しました。 事件から四年の月日が→事件から六年の月日が