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The Sixth Sense  作者: 山井 隆次
第零章 ―終わり、そして始まり―
1/9

前世

あらすじの方でも書きましたが、僕はこの小説「sixsense]と「sixsense~第六感~」の両方を途中で転載中止しています。主な原因はテスト期間に入るか、アイデアが出てこなくなるかの二つです。

「あ、こいつまた途中で切りやがった」と思った方の中で心優しき人がいればアイデアの提供をしてくださると助かります。




 あの出来事が起こったのは小学校に入って少し経った夏の日のことだった。

 その頃にもなると、入学当初の緊張なんてものはとっくに無くなっていて、新しくできた友達と一緒に遊びまわっていた。

 毎日放課後になれば、その友達と虫取り網を持って蝶や蝉を探し回っていた。

 そんな何気ない日常だった。しかし、その日常は直ぐに変わってしまった。ある一日によって。




 その日は、朝から雨が降っており、気分はそこまで良くなかった。しかし、昼を過ぎるとだんだんと今まで雨を降らしていた憎い奴は消え去り、変わりに太陽が顔を覗かせていた。

 だから学校が終わると俺はいつものように虫取り網を持って、近くにある小さな林の近くに友人と集合していた。

 俺は早速いつものように林の中に入っていき、蝶やら蝉やらを探し回っていた。

 どうやらその時の俺は浮かれていてたようだ。その林の中にも勿論雨は降っていたわけで、地面はぬかるんでいたのだ。

 蝉を探すため上を見ながら歩いていて足元を滑らせてしまった。その時、運悪く俺は頭の後頭部を思いっきり、木にぶつけてしまったのだった。

 その痛みに俺は思わず大声を開けて泣いてしまった。そんな俺の声を聞きつけて、友人が駆けつけてくれた。

 そして友人は俺を見るなり、表情を強張らせた。そして、何故か泣きそうになっているのだ。

 そして友人が口を開いた。

「おまえ……あたまから、血、血が……」

 その言葉を聞いて、俺は初めて自分がやばい状態であることを悟った。




 その後、いろいろあったが、結局俺は入院する事になった。

 頭に包帯をぐるぐる巻いて、病院のベッドで寝ていた。

 学校の授業を受けなくていいのだが、動き回ることは勿論できなかった。

 一日が暇で暇でしかたなかった。

 しかし、ある朝の事だった。目を覚ましたときに変な違和感を感じていた。瞼を開けたはずなのに、目の前の風景は真っ暗で何も見えなかった。

 最初は、単に夜中目を覚ましてしまったのかと思っていたが、すぐ近くから聞こえる声でそれが違うとわかった。

 俺に起きるようにと声をかけてくれる看護士さんの声だ。

 目が見えないという恐怖、真っ暗な世界に自分一人しかいないような孤独感を感じた。

 俺は恐怖で泣いてしまった。そんな俺の様子を見た看護士さんは俺をなだめようとしたが、様子がおかしいという事に気づいたのだろう。




 結局、目が見えないまま検査を受けることになった。

 そして、出た結果は、頭を打ったことにより視神経が傷つき、目が見えなくなったらしい。

 その事実を俺は受け止めることが出来なかった。

 何で俺ばっかこんな目に……そんな事をずっと考えながら、恐怖と不安でもう何もしたくなくなった。

 結局、頭の傷が癒えても、俺はずっとこんな状態だった。




 だが退院の時に、不思議な事が起きた。

 俺を乗せた車が走り出したとき、頭の中で町の風景が構築されていくのだ。

 昔の記憶でも思い出しているのかなと思っていたが、知らない場所や、変わった場所ですら構築されていたのだ。

 色はわからないが、物の形がぼんやりとわかるのだった。

 その時俺は入院中に見た……というか聞いたTVの内容を思い出した。

 失明した人が杖などで音を出して周りを判断する、という内容だった。この時は、俺がその体質になったと思っていた。あるいは、当時はその体質だったのかもしれない。




 しかし、それだけでは説明できない事までが起きていったのだ。

 年を重ねていくうちに、生活をしていくうちに、段々とその感覚は洗練されていった。小学校は特別支援学校に通っていたわけだが、6年になった時には黒板の文字が分かったり、普通の本を読むことが可能になっていた。

 本を読むのも最初は、手で触れるとインクが付いているか付いていないかを判断し読んでいた。まぁ、そんな事が出来ると言うもの自体おかしいのだが、しばらくすると、手で触れなくても内容がわかるようになっていた。

 そんな謎の感覚のお陰で、俺は中学は普通の学校に通えるようになったのだった。

 正直、授業の内容は普通に理解することが出来たし、普通に生活できていた。その時点では、目が見える人とあまり変わらなかった。しかし普通の人ではなくなった。

 中学生はやんちゃだ。はじめて見る奴で障害者とくれば、優しく接する人と、近寄らない人と、気味悪がりいじめの対象にする人の三通りだ。

 俺は、いじめの対象になったのだ。内容はいろいろあったが、ある時ついに人を超えた。




 放課後になり、トイレに連れ込まれたあと、腹に一発蹴りがくるのだ。

 いつものように蹴られるのかなと思っていると、そいつの行動がわかったのだ。

 気のせいかなと思ったが、相手が蹴ろうとしている場所から離れると、見事に相手は足を空ぶった。

 その光景を見て、周りの取り巻き達も驚いていた。そして、今度は取り巻き達も殴りかかってくるが、全員の思考が読み取れる。

 そして、安全な場所にぬらりくらりとよけていった。その行動が気に食わなかったのだろう。

 リーダー格の奴がポケットから刃物を取り出したのだ。だが、その行動すらわかっていた俺はポケットから刃物が出てきた瞬間にそれを蹴り飛ばした。

 刃物は宙に浮く。そして……その刃物がどこに落ちるのかが軌跡のように現れたのだ。



 それからと言うもの、いじめは無くなったが、俺の噂ばっかりが広がった。勿論尾ひれをつけて。

 俺が廊下を歩くだけで、道を歩く人は走り去り、教室に入るとざわめいていた声がパタリと消えた。

 物理的ないじめよりも、精神的に大きなダメージを受けたが、高校に入るまでの辛抱だと我慢していた。

 



 高校に入り、俺は目が見えるという事にして、普通の生活をしていた。

 知っている奴は誰もいないので、俺を怖がったりしないという事に思わず嬉しくなった。

 そして、そんな仲間達との新鮮な毎日を送っていけると思っていた。

 だがそんな毎日は続かなかった。

 ある日のことだ。いつものように、友人達と下校中に一台のトラックが走ってきた。そのトラックはふらふらと移動しながら走行していたが、いきなり歩道に突っ込んできたのだ。俺は危険を察知することが出来たが、一緒に帰っていた二人は気づいていなかったようだ。そんなのお構いなしに、トラックは俺達に迫ってきた。不味いと感じた俺は二人の手を引き逃げようとした。だが、とっさの事で足元が不注意になっていたのだろう。

 何もない場所で俺は転んでしまった。その反動で二人は前に押し出されたが、俺は体勢を整えることが出来なかった。最期に感じたものは友人達の強張った表情と体が軋むような痛みだった。

 それが俺の……石橋琢磨の人生の終わりだった。

 



 

誤字脱字の報告、アドバイスなどくれると嬉しいです。

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