前編
ユキ、愛しているよ
この一言を言うのに、僕は随分と時間を費やしてしまったね。
そうさ、僕はアルフレッド。
COJ計画によって作り出された存在。
個体No.1583。
通称、右手薬指さ。
…ここはどこ?
僕は…
「あなたの名前はアルフレッド」
アル、フレッド…?
「ただのフィーリング。いちいち意味なんて考えていられないわ。ただ、"あの人"が名乗りそうな名前だから。それだけ」
あの人って?
「それは教えられないわ」
え?どうして?
「知りたいなら、あなたは任務を達成しなければならない」
任務?
「そう、大事な。ね」
<No.1583、正常動作を確認。左手の爆心地へ配属します>
「さぁ、あなたの出番よ。頑張ってね」
ちょっと待ってよ。僕は!
痛い!離して!どこに連れてくの!?
…どこだ?暗いな
おーい、誰かいねぇのか?
……反応なし、誰もいねぇ…
なんだこれ?無線か?
聞こえるか?こちらアルフレッド。あんた誰だ?
ちょっと待て。意味がわかんねぇよ。
はぁ?とりあえず、左手の…なんだっけ、それはどこだよ?
耳ぃ?どれ…
うぉわっ!?なんだこれ!?
ちょっと待て!なんだよこれ!?俺は人間じゃないのか!?
訳わかんねぇ…とりあえず、進むか
誰かいるな…おーい、ちょっとあんた!
「登録外人物を確認。データベースへアクセスします。イレギュラーと承認し、排除します」
何?排除って…ちょっ…!?
いや!ヤバいって!なんかいきなり撃ってきた!
はぁ!?なんだよ!?知ってて当たり前だっての!?
ちょ、おい!ヤバいって!なんか武器ねぇのかよ!?
背中!?…いてて!ダメだ!届かねぇ!
まさかとか言ってる場合じゃないんすけど!うぉっ!?
盾にしてた壁が爆発した!体は無事だが、とにかくヤバい!
あぁ、わかった!…ってうわぁっ!なんだこれ!?なんか指取れたけど!
どうやって撃つんだ!?
こうか!?…わぁっ!なんか出た!
当たっ…爆発した!命中!よっしゃあ!ざまあ見ろ!
あ、あぁ。了解。
…しばらく歩いたと思うが、まだ遠いな、おい
敵は少ねぇけど…寝てる間に殺されそうだしなぁ…
「動かないで」
…え?よし、困った時の無線…
「このエリアでは無線は使えないわ」
マジかよ…
「あなたは何者?」
あんたこそ誰だよ?
「いいから答えて」
…個体No.1583-アルフレッド。だとよ
「個体No.とは何?」
俺が知りたいね。
「ふざけないで」
いや、マジだって
「どこに行くの?」
『左手の爆心地』…だとよ
「あなたには悪いけど、死んでもらうわ」
はぁ!?
「あの場所には"ジョン"が眠っているの。誰かわからないあなたを近づける訳にはいかないわ」
"ジョン"?今、"ジョン"って言ったか?
「えぇ、あなたには関係ないわ」
"ジョン"は何者なんだ?
「あなたに教える義務は…」
「登録外人物を二名確認。データベースを検索。イレギュラーと認定、排除します」
敵だ、伏せろ!
「しまっ…」
うぐっ!
「敵一名、左腕に被弾を確認」
いてぇ…無事か?
「あなた…どうして私を!?」
目の前であんたが撃たれんのを、ただ見過ごす気はないんでね
「でも…あなたの腕が…」
これぐらい大丈夫だっての!知らないのか?俺の左手は再生するんだぜ
「え…!?」
とにかく、一旦共闘と行こうぜ。そうだ!ちょっとあんた、俺の背中に手を置いてくれ!
「一体何を…」
時間がない!早く!
「置いたわ!」
おぉ、来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「背中から剣が!?」
そいつをこっちに!
「えぇ!」
よっしゃ!そらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「あら、真っ二つ」
楽勝!
「機体に損傷を確認。増援を要請します」
「まずいわ、逃げましょう!」
おうおう、なんか沢山来たねぇ。1、2、3、4…7体か
「危険過ぎる!逃げなさい!」
こいつら放置するほうが、危険だと思うね。さぁ、客をもてなすとしようかね
「また…!?」
ほら、あんたは逃げてくれ。死ぬなら俺一人で十分だ
「…私も戦うわ!」
お?ありがたいけど、危ねぇよ?
「あなたには用がある」
そうかい。じゃあ、死ぬなよ!
「排除します」
「排除します」
「排除します」
うらぁぁぁぁぁぁぁ!!
「後ろ!」
はいよ!ほら右!
「アルフレッド!」
サンキュー!ほぅら、お嬢さん!
「せいやぁぁぁっ!!」
二人だと超楽勝じゃん!つーかお嬢さん強いねぇ!まさか剣まで扱えるとは…
「…"ジョン"に、鍛えてもらったの」
また"ジョン"か。
「あなたは何者なの?」
え?だから、アルフレッド…
「そうじゃない!私を庇った時の言葉も、敵を客と呼ぶのも、"ジョン"の癖よ!あなたは"ジョン"を知っているの!?」
いや、だから"ジョン"が誰かも知らねぇしさ、あれもただの…そう!思いつき!フィーリングってやつ?
「あなたはなぜ『左手の爆心地』に?」
なんか、よくわかんねぇけど。任務、だとよ
「その任務、私も手伝わせてもらうわ」
助かるけど、いいのか?
「えぇ」
じゃあよろしく。あんた、名前は?
「ソフィアよ」