8. 終
ジュリアの事業は長く続いた。
コーヒーサロンは紳士の憩いの場に、女学生向けの喫茶店は令嬢たちの楽しみの場に。
貴婦人向けのサロン喫茶も展開していきこれも大成功だった。
慈善活動にも力を入れて、寒い冬の季節に貧民たちに毛布と布団、温かい飲み物を振る舞うサービスも展開した。
治安面の問題も、事業にバックアップしてくれるレイモンド・ラエル大公が人を派遣して店内の安全確保の確認、指導、慈善活動中の護衛の確保に力を入れてくれて助かった。
「あら、いらっしゃい」
今日はコーヒーサロンに足を運んでいたジュリアの元に客が一人訪れた。
右頬に傷ができたアベルだった。
紛争地に長らく赴任していた彼の雰囲気は近寄りがたいものになっているかといえばそうでもない。
若い頃に比べて穏やかに物事にあたり、大事に至れば毅然と対応する頼れる将軍として人々の尊敬を集めた。
しかし、彼は独り身のまま。
周りから再婚を勧められても聞かず、親戚の子を養子にとり後継とした。
一度目の結婚で妻を不幸にしたことを自覚してのことだろう。
そんな彼の楽しみは、コーヒーサロンにかようことだった。
今日も、ジュリア・ベルティーのお店は芳しいコーヒーの香りで客をもてなす。
(終わり)




