表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

《 7話 見える世界と、見えない世界 》

《 7話 見える世界と、見えない世界 》


恵が働いている本屋の正面にある花壇。

以前、花壇荒らしで騒ぎがあり、ネキリムシが犯人と、突き止めた多恵のお陰から、

季節ごとの花を、多恵に依頼することになった。


二人と妖精、三人?の話題はもっぱら、

ヤマトがこんなことした。

メグミとこんな事がつうじた。

二人の合図はこんなことにした。

「合ってる?」

”伝わってる?”

多恵をとおして、答え合わせになる。


すごーいだの、それいいだの……よくしゃべるなあ。

守は次の依頼を気にしながら、時計ばかりを見ている。


「じゃあ、そろそろ本の整理に戻るね。

後はよろしくお願いします」


守は無言で多恵に、腕時計を人差し指で、何度か叩いた。

「は~い」多恵も少し手を速めた。


恵は脚立にのって、高い場所に本を並べていた。

二階には文具用品と、漫画コーナーがある。

階段を上っていく、母と子が見えた。

「何が欲しい?」

なにか男の子が言っている。

「いいよー。買ってあげる」

「うわー嬉しい」

たわいもない、普通の会話。

恵は次の本を手に取り、棚に手を伸ばしたら、

「あっ!」

バランスを崩し、そして、スローモーションになった。

視界に入って来たのは、階段の上で、母と子が向かい合って立っている。

母親の口元がなにか囁いた。

微かに微笑んだ子供。

次の瞬間、母親は、突き飛ばし、男の子は転がり落ちていった。


恵も脚立と共に倒れ、はずみで跳ね上がった次には、

倒れている自分の姿を、見下ろしていた。


店内のあちらこちらから悲鳴が上がった。


”……あれ、私?”

”メグミ!メグミ!大変だ。どうしよう”

パタパタ、パタパタ。

あっち行ったり、こっち戻ったり、

キラキラした羽根が、ピンクの髪やワンピースを透かしている。

”……ヤマト?”

声に反応したヤマトが、勢いよく振り向き、メグミと叫ぶと、猛スピードで飛びついてきた。

”うわーヤマトだ!髪の毛までピンク!可愛いすぎる~”

二人は一緒にクルクル回っては、喜んだ。

”メグミ良かった!大丈夫だったんだね”

”大丈夫なのかなあ……私、抜けちゃったみたい”

倒れている恵を眺めた。

”ヤバ!ダイジョブじゃないよ”

”えっ、どうなるの?”

”魂が戻らなきゃ、死んじゃう”


そうか、抜けたって感じ……私、魂なんだ……。

とても軽くて、ふわふわして、空中に浮いてるし、ヤマトも見える。


肉体と魂の世界。

見える世界と見えない世界。

——こうして、重なってるんだ。


倒れてる自分の横で、多恵や守が必死に声を掛けている。

「あっ、男の子は?」

意識体となっている魂は、思った瞬間に、その場所へ移動した。

階段下に倒れている男の子の横で、母親が大声で泣いている。

店長が「今、救急車が来ますから、もう少しですよ」などと、声を掛けている。

「気の毒にねえ」

「目を離した隙に、ふざけて、階段、踏み外したみたいよ」

「子供はねえ、あるよねえ」

店内のお客さんの話声も聞こえる。


"違う……そんなんじゃない。

知ってるのは、私だけなんだ……どうしよう……"


"メグミ、早く肉体に戻らないと"

あ~そうだった。自分を意識したら、多恵が泣いているのが見えた。


救急車とパトカーのサイレンが近づいている。

多恵は妖精も見えるから、私の事も見えるんじゃないか、

多恵の正面に立ち、

”大事な事なの、聞いて”

全く気付かず、倒れてる私の名を、呼び続けている。


”心配してくれて、ありがとう……

でも、死んでないから、ちょっとこっち見て~”

勢いをつけて、多恵にぶつかっていった。

魂は、多恵の中に入り、すくっと、直立不動となった。

突然の変化に、守は驚き、

「ど、どうした?」

多恵を見ると、瞳孔が開いている。

「姉ちゃん、しっかりしろ、姉ちゃん」

肩に手を掛け揺らすと、硬直している。

”——何が起こってるんだよ”


救急隊が店内に到着し、入口近くの階段下に倒れている、男の子へ駆け寄った。

その後ろに柳の姿が見えた。

守は大声で、柳を呼んだ。

柳は倒れている恵を見つけ、救急隊を呼び寄せる。

「姉ちゃんが変なんだよ」

今にも泣きそうな守。

「えっ、多恵さん?」

柳が見たと同時に、多恵の身体は少し弓なりになり、その反動で、前かがみになった。

ヒューっと息を吸う音がした後、

ガバッと、柳に向き、

「あの母親、嘘ついてます!!」

真直ぐ力強いまなざしで、訴える多恵を見て、

柳は店長を呼び、監視カメラを確認しにいった。


「おい、大丈夫か?」

「うん。大丈夫」


恵が痛い、痛いと意識を取り戻した。


つづく


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ