《 6話 蓮子の休日 》
《 6話 蓮子の休日 》
蓮子は休日に西巣鴨にある先祖のお墓にやってきた。
立派なお墓。江戸時代、町の火消しとして「を組み」の頭だった、
尊敬するご先祖様。
小さな頃からよく話を聞かされ、
「人の為に生きよ」と言われた。
蓮子は義理人情、粋、度胸、真直ぐ。
そうありたいと生きてきた。
実際は、組織の中で、煙たがられる。
可愛げがない、実力もないくせに、口を出すんじゃない、などなど。
移動になり、多恵達と出会い、少しずつ変化してきた。
「人のため」って事件を解決するだけじゃない。
自分は警察に入って、解決なんてしただろうか。
スピード違反だって、駐車違反だって、大きくみれば
事故を未然に防いでいるんだろう。
でも、取り締まった後に残るのは、
淀んだ気、イライラした怒気だ。
違反者の顔はゆがみ、自分を見返す目は、
まるで、犯罪者を見るようだ。
大人だけじゃない。
迷子が交番に届けられ、名前を聞くのに、顔を近づけると、大泣きされる。
同僚からは「また泣かせて!怖いお姉ちゃんだねえ、もう大丈夫だよ」なんて言われてた。
——今は、泣かれなくなったな。
少し変わった?
多恵は警察でもないし、仕切り屋でもない。
普段はふわーとして、植物以外興味がないのに、
変化に気付くし、根本を見る目がある。
大半の人は、嫌な事が起こると、人や社会、何かのせいにしたがる。
でも、そうじゃないことは多い。
それに気付けるあいつは、カッコいい。
お墓の前に立ちながら、自分は全く物事を見れていなかったことに気付いた。
出世するとか、認められるとか、そんなの関係ない。
蓮子は自分の顔を両手でパンパンと叩いた。
「初めから出直しだ」
手を合わせ、丁寧にお辞儀をし、墓を後にした。
蓮子が住んでいる町まで、特急電車を乗り継ぎ2時間かかる。
駅弁やら飲み物お菓子を見繕っていると、
大きなリュックが棚にあたり、商品が落ちた。
「あっ、すみません、すみません」とリュックの男は、棚に戻している。
蓮子も少し手伝った。
「すみません、ありがとうございます」とリュックの男は顔を向けた。
どっかで見たことある……もしかして、
「かざみ(風見)……きよた(清太)?」
「蓮子!うわー久しぶり、中学以来。変わってないなあ」
店内ではすでに迷惑がられているので、
「買ってきちゃうね」と蓮子はレジに向かった。
風見清太、オタクぽい感じだったが、とても頭が良く、
常に学年のトップ3に入っていた。
”山登りでもしてるのかな”
電車の発車時刻もあるので、そのまま乗り込んだ。
駅に降りると、空気が違う事が分かる。
”あ~気持ちいいな。帰ってきた感じがする。
まだ、大して住んでないけど。
あれ……改札を出ていく中に、風見清太がいる。
何しに来た?アウトドア好きにはもってこいの場所だ。
あのリュックはそういうことか。
蓮子はなぜか気になった。あの風見清太がこの町で何をしたいのか。
最近、同級生に会うことが続いているからかもしれない。
風見清太は、キャンプ場やレクリエーションがある方面とは、逆のバス停にいる。
時計を見ると、”15時か。確か、15時30分が最終だ”
民家もほとんどない山に、何しに行くんだ。
蓮子は急いで、パーキングから車を出し、追跡することにした。
何かあってからでは遅い。
風見清太は終点の一つ手前のバス停で降りた。
バスが見えなくなると、山の中へ入っていった。
ここに民家は無い。
「あいつ、自殺か!」
蓮子は急いで追掛けた。
風見は思いのほか、山道に慣れているようで、
ほいほい進んでいく。体力に自信のある蓮子でも見失わないのがやっとだ。
空もオレンジから紫へと変わり、森の中は暗くなっていった。
”清太、どこまで行くんだ。私の方がやばくなってきた。
自分が山中で発見なんて、
あ~上司が「かなり、人生迷走してました。お気の毒です。チーン」なんて言いそう”
ドサッとリュックを下ろす音がした。
蓮子はとっさにしゃがみ、音をたてないよう、近づいていく。
すると奥の茂みが、なにやらボーっと明るくなった。
ここには不似合いの……まるで、母親が玄関に迎えに来たような……。
その人は、暗闇に隠れる蓮子に、まっすぐ向いている。
「お客様を、連れてきたのね」
清太が振り返る。
「うわー、コワ!……えっ蓮子!」
「……どういうこと?」
蓮子は言い終わらないうちに、二人の前に踏み出した。
「先生ですよね!新門です。新門蓮子です」
つづく




