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転生ゲーマーは無限レベルアップで成り上がる!  作者: おさない
第一章 ルッタ・アルルー奮闘の日々
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第5話 魔物を蹴散らしてダンジョンに行こう!


「よいしょっと……」


 誰にも見つからないように自分の部屋を抜け出し、こっそりと外に出たルッタは、高い塀をよじ登って屋敷の裏門を飛び越える。


 そこから先は、木々の生い茂る森の中に一本の道路が通っていた。


 ここからまっすぐ進むと平原に出て、町へ行くことができるのである。


 だが、今回の目的地は道から外れた深い森の奥にひっそりと佇んでいる『忘れ去られし遺構』という名の古代遺跡だ。


 その場所は、十五歳になり復讐を果たすために旅立つことを決意した主人公のアレンとリリアが、最初に訪れるチュートリアルダンジョンである。


 推奨レベルは五で、ダンジョン内には遺跡を守るゴーレムが徘徊しているがそれほど強くはない。


 しかし、このダンジョンでゲームシステム的に大切なアイテムを入手することができるため、避けては通れない場所なのである。


「ええと……確かここら辺から森の中に入ればいいんでしたね」


 原作知識を頼りに、道路の途中にある細い獣道から森の中へ踏み入っていくルッタ。


 基本的に、屋敷や道路の周辺には魔物を遠ざける『魔除け石』が散りばめられている。


 これは力の強い魔物であるほど効果を発揮するため、道を歩いていれば滅多に凶悪な魔物と遭遇することはないのだが、森の中は魔除けがされていないので注意が必要である。


「夜中なのに何故か明るいです。僕の目が慣れたのでしょうか?」


 森に入ってからすぐ、ふとそんな疑問を口にするルッタ。


 だが、それは彼が今もなお灯火トーチによる発光を続けているからであった。


 部屋を出た時からずっとピカピカ光っているため、皆が寝静まった深夜でなければすぐに見つかってしまい、屋敷を抜け出すことすらできなかっただろう。


 ――ちなみに、この日から深夜に出没する『謎の光る物体』の噂が使用人たちの間で囁かれるようになるのだが……それは特に関係のない話である。


「あ! 武器ゲットです!」


 森の中をしばらく進み、今度は大きめの枝を見つけたルッタが、それを拾い上げてはしゃぐ。


 彼はちょうどいい木の枝があったら拾いたいお年頃なのだ。


「よし、これで魔物が現れても安心ですね! 今日は安静にしていないといけないので、自分からは戦えませんが……向こうから襲ってきた場合は仕方がありません!」


 そんなことを大声で口にしながら、ルッタは意気揚々と更に奥深くへと進んでいく。

 

「ここに魔物は……いないみたいですね」


 木の枝で茂みをつつき回しながら。


 彼は明らかに魔物と遭遇しようと頑張っていた。


 ――そして、ついにその時が訪れる。


「グオオオオオオオオオオオォォォォッ!」


 なんと、彼の前に悪魔のような羽を持つ毛むくじゃらな魔物が降り立ったのだ。


「おおっ! フォレストデビルが現れました!」


 フォレストデビルは、夜の闇に潜み縄張りである樹木の下を通りかかった者に襲い掛かる蝙蝠型の雑魚モンスターである。


 この森に出現する雑魚の中で攻撃力とHPが最も高いため、原作ではプレイヤー達の間で要注意モンスターとされていた。


「まずはチュートリアルですね。いざ、尋常に勝負です!」


 ルッタは木の枝を構え、直立する巨大な蝙蝠の化け物に戦いを挑む。


「グオオオオオオォォォォッ!」


 フォレストデビルは鋭い爪と牙をむき出しにし、雄たけびを上げながら飛び掛かってきた。


「ぐおーーーーーーーーーっ!」


 ルッタも真似をしながら突撃し、小さい体を活かして素早く相手の懐へもぐりこむ。


「ていっ!」


 そして、持っていた木の枝で思いっきり脇腹を叩きつけた。


「ガァッ?!」


 衝撃波が発生し、勢いよく吹き飛ばされるフォレストデビルの巨体。


「ゴハァッ!」


 魔物はそのまま近くの木に激突し、口から大量の血を吐き出す。


「ウ、ガ、グゴゴ……!」


 一撃食らっただけで瀕死の状態に追い込まれてしまった哀れな森の魔物は、何が起こったのか理解できなかった。


 分かっているのは、目の前の人間の子供が何かをしたということだけである。


「グオオオオオオオオオオオオオオッ!」


 フォレストデビルは激怒し、叫びながらじたばたと暴れる。


 ――下等種族の人間風情が、偉大なる森の王に傷を付けることなどありえない。あって良いはずがない。


「その動き……見たことのないモーションです! フォレストデビルに新しい行動パターンが追加されていたのですね!」


「グゴオオオオオオオオオオッ!」


 ――やめろ。キンキンと不愉快な鳴き声で喚き散らすな。


 絶叫するフォレストデビルだったが、もちろんお互いに言葉は通じていない。


「ですが、転倒した際にじたばた暴れるだけみたいですので……そこまで脅威ではありません!」


 激痛に耐えながらどうにか起き上がろうとした彼の目に、満面の笑みを浮かべながら光る少年の姿が映った。


「グ、オ、グオオオオォ――ッ!」


 今だかつてない恐怖を感じたフォレストデビルは、悲鳴に近い叫び声を上げる。


「えいっ! おりゃっ! とうっ!」


 ルッタはそんなことなどお構いなしに、木の枝で何度も魔物を叩きつけた。


「グッ! ギュムッ! ゴフッ! ゴッ……」


 かくして、大勢の人間を好き放題襲ったことで冒険者ギルドに目を付けられ、元の縄張りを追われて最近この森に棲み付くようになった凶悪モンスター、フォレストデビル(上位個体)は静かに絶命したのである。


「経験値ゲットです!」


 戦いに勝利したルッタは、木の枝を高く突き上げて喜ぶ。


「お屋敷で毎日レベル上げをし続けたおかげですね!」


 日夜増殖するワームを殴り続けた彼の実力は、既に常人の域を遥かに越えていた。


 本人すら気付いていないが、ワームたちとの殴り合いを通じて魔力操作による能力の強化を体得しており、体格に見合わない爆発的な攻撃力を発揮できるようになっていたのだ。


 魔物を何度も叩きつけた木の枝が折れないのも、無意識のうちに魔力による強化を行っているからである。


「……ですが、やはり倒したのに消滅しないみたいです。原作だとすぐに消えて、お金とドロップアイテムだけ残るのに」


 ルッタは動かなくなった魔物の亡骸を枝でつつきながら、不思議そうに首を傾げる。


「ワームの時もそうでしたが……この世界はリアリティのある描写が強化されているようです! つまるところリメイク版ということですね!」


 だが、一人で考えて勝手に納得したようだ。


「さてと、夜が明けてしまう前に早くダンジョンへ向かいましょう!」


 ルッタはその後も襲い掛かってくる魔物たちをなぎ倒しながら森の中を進み続け、いよいよお目当てのダンジョンに到着したのだった。


 しかし――


「あ? なんだあのガキ、どこから来やがった?!」


 ダンジョンの入り口には、なぜか居るはずのない盗賊の見張りが立っていた。

 

「お屋敷から来ました! 盗賊の皆さんはどうしてここに居るのですか? 原作では出現しないはずなのに! ……もしかして、敵モンスターですか?!」


 突然現れた謎の子供に驚く盗賊たちに向かって、少し離れた場所から純粋な疑問をぶつけるルッタ。


「おい、どうする? 殺すか?」


「……いや、とっ捕まえてお頭に聞こう」


「身なりからして貴族のガキだ……生かしておいた方が高く売れるぜぇ……? ゲヘヘェッ!」


 一方、強面こわもての盗賊たちはルッタの前でそんなひそひそ話をする。


「おい嬢ちゃん。悪いことはしねェから、こっち来いよ……へへへッ」


 その内の一人が、下卑た笑みを浮かべながらルッタを手招きした。


(困りました。彼らは人だから……暴力を振るうのはまずいかもしれません……!)


 ルッタは心の中で葛藤する。


(こんなことなら……人のモンスターにも暴力をふるってはいけないのか、ちゃんとお母さまに聞いておくべきでした……)


 魔物は倒すべきであるというゲームとして当たり前の常識と、優しい母からの教えとの間で思い悩んでいた。


(でもやっぱり……盗賊は原作だと倒せば消滅して、ドロップアイテムとお金と、ついでに経験値も手に入りますから、モンスター扱いで問題ありませんよね。とりあえず殴って経験値にしておきましょう!)


「おい、聞いてんのか? いいから早くこっちにおいでェ……ゲへへッ!」


「はい! 今から行きますね!」


 ――ルッタは考え抜いた末に、魔物の血が付いた木の枝を握りしめてにっこりと笑うのだった。

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