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転生ゲーマーは無限レベルアップで成り上がる!  作者: おさない
第一章 ルッタ・アルルー奮闘の日々
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第21話 囚われのイーリス王女!


「う、うぅ……?」


 イーリスが目を覚ますと、そこは周囲を固い石の壁で囲まれた薄暗い牢屋の中だった。


 少し寒く、どこかから水滴の音が聞こえてくる。


「ここは……どこですの……?」


 なぜこんな場所に居るのか思い出せず、泣きそうな声で呟く王女。


 幸いなことに体は自由に動かせるが、つい先ほどまで手足を縄で縛られていたらしく、まだ跡が残っていた。


(これは……誘拐……?)


 徐々に自身が置かれた状況を理解し始めたイーリスの背筋が凍りつく。


「だ、誰かいませんの……っ?」


 鉄格子の向こう側に見える通路へ向かって呼びかけるが、もちろん返事はない。


「誰かっ!」


 今までに経験したことのない事態に見舞われたイーリスは、恐怖でいっぱいだった。


「うーん……」


 するとその時、彼女の叫びに呼応するかのようにして、部屋の隅からうめき声が聞こえてくる。


「きゃっ?!」


 突然のことに驚き、悲鳴を上げるイーリス。


 声のした方へ素早く目を向けると、そこにはひどい傷を負った少年が倒れている。


「あなた……ルッタっ?! ……ルッタなのっ?!」


 倒れている少年の正体は、クラウスとの死闘の末に相討ちとなったルッタである。


「うぐぐ……」


 彼がほとんど動かないことに嫌な予感を覚えたイーリスは、大慌てで側へ駆け寄った。


「う、あぁ……そんな……っ! しっかりしてくださいましっ!」


 気絶しているルッタは、思わず目を覆いたくなるほど酷い有様である。


 体は至近距離で爆破魔法でも食らったかのようにぼろぼろで、とても幼い子供相手にする仕打ちとは思えない。


 あまりにも惨いルッタの姿が、自身を攫った人間の極悪非道さを物語っていた。


「ルッタ……っ、なんてことですのっ、うわーーーんっ!」


 イーリスはルッタに縋りついて涙を流す。


「やめて……ください……そんな、ひどいこと……しないでください……っ」


「大丈夫っ、わたくしがついていますわっ!」


 うなされているルッタの手を握り、必死でそう呼びかけるイーリス。


「……っ! 手までっ、こんなにぼろぼろにされて……っ! ひっぐ、うぅうっ……!」


 ルッタの体に残る余りにも酷い仕打ちの数々に、堪えきれず涙を流すイーリス。


「こんなっ、こんな酷いことっ……許せませんわ……っ!」


 正義感の強い王女は、悪に対する怒りと何もできない悔しさに唇を噛み締める。


 実際のところ、ルッタの負った怪我は全て彼自身の魔法によるものなのだが、彼女には知るよしもない。


「人のすることではありませんわっ!」


 イーリスの頭の中には、ルッタを爆破魔法で激しく痛めつける極悪非道な誘拐犯たちのイメージが完全に出来上がっていた。


「どろっぷ……あいてむ……」


 ――ちなみに当のルッタがうなされている理由は、途中で力尽きてクラウスのドロップアイテムを取得できなかったからである。


 ラヴェルナの時と合わせて、夢に見るほど深い心の傷になってしまったようだ。


「ルッタ……っ! ルッタ……アルルーっ! どうか、目を開けてくださいまし……!」


 そんなこととはつゆ知らず、傷ついた彼の手を両手で優しく包み込みながら祈りを捧げるイーリス。


「うーん……?」


 すると、ルッタはようやく目を覚ました。


「……おはようございます、イーリス王女」


「ああっ、良かったですわ……っ!」


 ここに来て、王女は初めて安堵の表情を浮かべる。


「どうやら、結局誘拐されてしまったみたいですね」


 言いながら、ルッタはゆっくりと上体を起こした。


「あ、あまり無理に動いてはいけませんわ……っ! ひどい怪我ですもの……っ」


 イーリスは心配そうに言いながら、動こうとするルッタの体をそっと支える。


「王女であるわたくしを誘拐するだけでなく……あなたにまで危害を加えるだなんて……絶対に許せませんわっ!」


「いえ、これは僕が自爆して負った怪我です」


「えっ」


 あまりにも衝撃的な言葉に固まるイーリス王女。


(それにしても、イーリス第三王女の誘拐事件なんて原作では発生しないはずなのに……。ルートが大きく変わってしまったみたいですね。正しいルートでの死亡が確定している僕にとっては良いこと……なのでしょうか?)


 目覚めたばかりでぼーっとする頭で、そんなことを考えるルッタ。


「じ、自爆って……どういうことですの……?」

 

「そんなことより、早くここから脱出しましょう!」


 彼は王女の言葉を流しつつ、ふらふらと立ち上がる。


(ええと、アステルリンクは……)


 自身の懐を探るルッタだったが、端末はどこにも見当たらない。


 どうやら、ここへ連れて来られる際に奪われてしまったようだ。


「…………なるほど。途中で離脱できないタイプのイベントというわけですね」


「あなた……先ほどから何を言っているの? 意識がはっきりとしないのなら、まだ休んでおいた方がいいですわ……!」


 イーリスは心配そうな顔をしながら、意味不明なことばかり呟くルッタに忠告する。


「無理をせずとも、ここで待っていればきっとお父様が見つけて――」


「あらあらぁ、お二人とも……もう目覚めていらしたのですねぇ」


 その時、すぐ近くで女の声がした。


「だ、誰っ?! 居るのなら姿を表しなさいっ!」


 叫ぶイーリス。


「私はずぅーっと居ましたよぉ……? あなたたちの、頭の、上に……」


 次の瞬間、王女の頬に水滴が落ちてきた。

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