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第119話 すごい薬が完成しました!


 一週間後。


「おはようございますバルザールさん! 研究の進捗はどうなっていますか!?」


 早朝、秘密基地の扉を勢いよく開け放ったルッタは、開口一番にそう言った。


「……完成させましたよ。あなたの言う通りに」


 バルザールは椅子に深くもたれかかり、天を仰ぎながら答える。


「少し疲れているみたいですが、大丈夫ですか?」


 死にかけている彼の姿を見て、心配そうに問いかけるルッタ。


「誰のせいだと思ってるんでしょうかね。毎朝毎朝、やかましいクソガキに催促されるこっちの身にもなってくださいよ」


「ええと……僕以外の誰かがこの秘密基地を訪れているのでしょうか?」


 言いながら、彼は不思議そうに首を傾げる。


「……解剖しますよ。今すぐそこの台の上に寝転がりなさい」


「そこまで疲れているのでしたら、やはりバルザールさんは寝た方が良いと思います!」


 話が通じず、ドンッ、と机を殴りつけるバルザール。


「……もういいです。この机の上に並んでいる瓶がムゲン水、横の紙束が製造方法についてまとめたものですよ。……ここに居られると目障りなので、さっさと持っていきなさ――「ありがとうございます! 流石は狂気の錬金術師ですね!」


「…………」


 ルッタとは少し相性が悪いようだ。


「あなたを見ていると、自分が正気であることを実感できて安心しますよ」


「安心してくれたのであれば嬉しいです!」


「…………はぁ」


 彼の得意技である皮肉もことごとく通用しない。話している相手が本当に人間の子供なのか疑い始めていた。


「バルザールさんを仲間にできて良かったです!」


 笑顔で言いながら、机の上にあるムゲン水とその作製図を何でも入るマジックポーチへ収納していくルッタ。


「――ちなみに、あなたから貰ったものは殆どタダの水でしたよ。おかげさまで、ほぼ一から作らされたようなものです」


 バルザールは、ため息混じりにそんなことを付け足す。


「……あんなもので人間の潜在能力が引き出せるのなら楽でいいですね。詐欺師には気をつけてくださいよ」


 もしかすると、ムゲン水を手に入れるまでの過程の方に意味があったのかもしれない。


 厳しい修行と、仲間達との絆が本当のムゲン水だったのである。


「いえ、そんなはずはありません! 僕はムゲン水を飲んだことで、確かにレベルの限界を突破しました!」


「……あなたは単純なので、ただの水でもよく効きそうですけどね」


「ですが、原作のシステムからしてそうなっているのです!」


 ルッタは譲らない。頑張って手に入れたレアアイテムの効果を否定されてしまったので当然である。


「……そもそもの話、あなたの記憶にある『原作』とやらの方が、この世界を何らかの方法で観測し、再現したものである可能性だって考えられます」


「ええと、どういう意味でしょうか?」


「レベルや経験値は、単に生命の体内で発生する魔力の増幅を疑似的に再現したものであり、明確な数値として存在するわけではない……というのが、現時点での私の仮説ですね」


「よくわかりませんが、今の僕はレベル128です!」


「私としたことが、話す相手を間違えました」


 あまりにも不毛な言い争いであった。


「……やっぱり、狂気の錬金術師さんの話すことは難しいですね!」


「馬鹿にしてますか?」


「変な人とはあんまりお話ししてはいけないとお母さまから言われているので……残念ですが、今日はこのくらいにしておきます!」


「してますね? あまり大人を舐めるなよクソガキ……!」


 怒るバルザールをよそに、そそくさと立ち去るルッタ。


「……そうだ。次の研究のことを言い忘れていました!」


 彼は扉の前で立ち止まり、バルザールの方へ振り返って言った。


「次……?」


 困惑の表情を浮かべる狂気の錬金術師――もとい、正気の錬金術師バルザール。


「いやです」


「実は、体を綺麗にするスライムを開発して欲しいのです!」


「はあ」


 もちろん、彼に拒否権はない。ルッタに協力しないのであれば、そのまま賞金首として冒険者ギルドに突き出されるだけだ。


「……どうしてそんなモノが必要なのですか?」


「体を綺麗にしてくれるスライムがいれば、お風呂に入る必要がなくなってみんな嬉しいです! このゲームでは入浴に何の追加効果もありませんからね!」


「……なるほど」


「ついでに経験値だって稼げますし、リリア姉さまもきっと喜びます!」


 その言葉を聞いたバルザールは、口元に手を当ててしばらく考え込む。


(スライムの研究ができるなら嬉しいですが――面倒な注文ですね。死ねばいいのに)


 上手い理由を付けて断る方法を。


「それから、食べられるスライムがいれば食事をしながら経験値を稼げるかもしれません! これは今思いつきました!」


 だが、あまりモタモタしていると余計なことを閃かれて仕事が増えるかもしれない。


「……仕方ありませんね。スライムを沢山用意してくれるのであれば、考えてあげましょう……」


 観念したバルザールは言った。


「よろしくお願いします!」


 そして、ルッタはようやく秘密基地から立ち去るのだった。


 ――バルザールがムゲン水に少量だけ含まれていた気の力を解析し、改良を加えた真のムゲン水を皆へ配るために。

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