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第115話 みんなとても賢いです!


「「「「たのもー!」」」」


 数多の困難を乗り越え、無事にBランクとなって冒険者ギルド連盟の本部へと戻って来たルッタと堕落した精霊たち。


 彼らの姿を見た途端、ギルド内に居た冒険者たちがざわつき始める。


「おい、あれが噂の……」


「世界各地にふらっと現れては依頼を解決しまくってるっていう、ギルドマスター推薦のガキか」


「その名も……【神出鬼没】の『ルーテ』……!」


 ちなみに、活動が両親にバレてしまったら間違いなく外出禁止になってしまうため、名簿には『ルーテ』という偽名で登録している。


 ギルドマスターに推薦された特権を濫用していた。


「な、なんという禍々しい気配……! まるで奈落の底から這いあがってきたようじゃ……!」


「そうかしら? みんな可愛らしい子供たちにしか見えないわよ。……いっそ、お姉さんがまとめて食べてしまいたいくらい……!」


「誰かこの女を牢にぶち込んでおけ」


 ルッタ――もといルーテたちの活躍は、今や多くの冒険者に知れ渡っているようだ。


「なんだか気味の悪い視線を感じるわ。さっさと用事を済ませちゃいましょ」


「でも……悪い冒険者の人に襲われれば……経験値にできるよ……?」


 ツララの瞳が輝く。


「フロナ、いっぱい経験値ほし~!」


 フロナは楽しそうに笑った。


「みなさん、今は我慢の時ですよ!」


 すっかり邪悪になってしまった哀れな精霊たちを引き連れ、真っ直ぐに受付へと向かうルッタ。


「こんにちは! バルザールという賞金首の情報を知りたいので、教えてください!」


 彼は自身が屈服させた受付のお姉さんに申し出る。


「……かしこまりました。奥へどうぞ」


 そうして、ギルドの奥にある応接間へと通されるのだった。


「あちらで座ってお待ちください」


「ありがとうございます!」


 ルッタが子供にはやや大きいソファーに腰かけると、精霊たちもそれに続く。


「狭いわね」


「つぶれる~!」


「くるしい……」


 四人が並んで座るには窮屈だったらしく、かなりギチギチに詰まっていた。


 そこへ、頭を抱えたギルドマスターが姿を現す。


「活躍に期待してるとは言ったが……まさか短期間でここまで暴れ回るとはな」


 彼はにこやかに座っているルッタのことを見ながら呟いた。


「僕たちは暴れ回っていません! クエストをクリアしていただけです!」


「……そうだな。予想以上だった」


 ギルドマスターはそう言いながら、向かいの席にどさりと座る。そして、机の上に持っていた紙の束を放り投げた。


「特に、お前らが捕まえた悪党どもは全員……なんていうか、化け物と遭遇して命からがら逃げ延びた……って感じの怯え方をしてやがる」


 そう話す彼の表情は真剣そのものだ。


「仕事柄、そういう壊れ方をした冒険者は何度も見てきたが……五体満足で生かしてもらった悪党どもがああなるってのは異常だぜ? 何したらあんなことになるんだ?」


「レベルアップのお手伝いをしてもらってるだけだよ~! フロナたちは悪くないもん!」


 花の精霊は退屈そうにぶらぶらと足を揺らしながら答えた。悪びれる様子は一切ない。


「そんなことより、僕は神出鬼没のバルザールを探しています!」


「……【神出鬼没】はお前の通り名だろう。リゼリノ王国で依頼をこなした次の日にユウレンに現れた……なんて記録が残ってるが、どうやって移動してるんだ?」


「それはもちろん――ファストトラベルです!」


「は……?」


 あまりにも意味不明な発言に眉をひそめるギルドマスター。


「そういうのは……秘密、だから……聞かないで……ください」


 ツララは慌てて遮った。世界各地へ一瞬で転移できるアステルリンクの存在が知られれば、ギルド連盟は何としてでもそれを手に入れようとするだろう。よって彼女の判断は正しかった。


「……そうだな。ガキどもの使う言葉はよく分かんねえし……聞いても無駄か」


 冒険者同士の暗黙の了解がある以上、ギルドマスターも深くは追求してこない。


「ともかく、バルザールの生息地に関する情報を教えてください!」


「おいおい、賞金首は生息してんじゃなくて潜伏してんだよ。居場所が分かったらとっくに捕まってるだろ?」


「分かっていることだけで良いのです!」


「……バルザール、か」


 彼は紙の束を手に取り、それをパラパラとめくり始める。


「最近の目撃情報は……この都市に集中している。俺らもヤツに悟られないよう、密かに調査を進めているところだ」


「なるほど!」


「正直、お前らにこういう仕事は向いてない。……悪いが、手を引いてくれないか?」


「心配しなくても、僕が捕まえ――」


 その時、唐突にメルカが立ち上がってルッタの口を塞いだ。


「むぐぐっ?!」


「し、仕方ないから、この件からは手を引いてあげるわ! ルッタにもちゃんと言い聞かせておいてやるから、感謝しなさいよねっ!」


 明らかに不満そうなルッタを抑え込み、そう言って話をまとめるメルカ。


「ああ。話のわかる精霊で助かる。……ルッタ――じゃなくてルーテも少しは見習えよ?」


「ぐむむーっ!」


 かくして、ルッタは精霊たちに引きずられながらギルドを後にするのだった。


 *


「あんたねぇ……バルザールをギルドに引き渡しちゃったら、目的が果たせないでしょっ!」


 ギルド連盟の本部から離れ、ルッタを人気のない路地裏へと連れ込んだメルカは、大きな声で言い放つ。

 

「捕まえてもギルドには報告できないんだから、始めから関わってないフリをした方がいいのっ!」


「確かに……その通りです! メルカは賢いですね!」


「ち、ちょっと考えれば分かることよっ! 少しは立ち止まることを覚えなさいっ! ばかっ!」


 素直に褒められ、少しだけたじろぐメルカ。


「ひどいです……」


 馬鹿と言われたルッタはしょんぼりした。


「だいたい、ルッタは何でも正直に話そうとしすぎよ! ツララとフロナだって、さっきの話し合いであんたのこと助けてあげてたんだからねっ!」


「なるほど……僕は面白い方の選択肢を選ぼうとし過ぎているのですね。ネタっぽい選択肢に攻略上のデメリットがあるのであれば、気をつけなければいけません! ……今後は真面目に話します!」


「意味わかんないわよっ!」


 メルカは叫んだ。


「フロナとツララも、いつの間にか僕のことを助けてくれていたのですね! ありがとうございます!」 


 そう言って二人の頭をなでるルッタ。


「えへへ~!」


「……ん」


 精霊たちは教祖に褒められて嬉しそうである。


「あ、あたしには……してくれないわけっ?!」


「メルカも、ありがとうございます!」


 とりあえずメルカの頭もなでておく。


「……っ!」


 どうやら、これで下がっていた好感度もそれなりに上昇したようだ。


「ふんっ! やっぱり、あんたの面倒はあたしが見ないとダメねっ!」


「いやいや~、ルッタちゃんにはフロナがついてないと~!」


「ルッタお兄ちゃんのことは……これからも、わたしが助けてあげるね?」


 一件落着である。

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