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第112話 受付のお姉さんを攻略しました!


「もっ、申し訳ございませんでしたあああああッ!」


 冒険者ギルド連盟本部の建物内に、受付のお姉さんの声が響き渡る。


「これほどの実力があるとはつゆ知らず、とんだご無礼をっ!」


 床に両手をつき、全力で土下座するお姉さん。


「良い経験値稼ぎになったので問題ありません!」


 ルッタは、ギルド内に無理やり持ち込んだ巨大ワニに手を当てながら言った。


「この町の下水道は分裂するモンスターがいっぱい居て素晴らしいですね!」


 ――数刻前、冒険者ギルド連盟で門前払いされてしまったルッタは、受付のお姉さんに実力を認めてもらう方法を必死に考えた。

 

 その結果、原作にはこの町の下水道に住み着いた巨大ワニを倒すクエストがあったことを思い出し、それを先回りで攻略することにしたのである。


 下水道には分裂を得意とするスライム種やワーム種、触手モンスターのローパー種が住み着いており、攻略にはそれなりの時間を要した。


「スライムは嫌スライムは嫌スライムは嫌スライムは嫌ぁ……っ!」


「ぐすっ、ルッタお兄ちゃん……ひどいよぉ……」


「べとべとー……さいあくー……。ひっぐ、うわーーーーんっ!」


 初めは元気だった精霊たちもスライムやローパーの粘液やワームの体液まみれになり、ルッタの後ろで死んだ目をしている。


「ごめんなさい! べとべと対策は考えておくべきでしたね!」


 言うまでもないが、ルッタも同じようにべとべとである。


「もう……帰る……っ! かえってお風呂はいる……っ!」


「しくしく……リリアお姉ちゃんに会いたいよぉ……っ」


「うえーーんっ! ルッタちゃんのばかーーーーーーっ!」


 今回の冒険でかなりの成長を遂げたが、同時に深刻なトラウマを抱えてしまったようだ。


(味方キャラは一緒にレベルアップすれば好感度が上がるはずなのですが……むしろ嫌われているような気がします! 不思議ですね!)


 ルッタはそんな彼女たちを見て疑問符を浮かべていた。きっと、思いやりの心も時には裏目に出るという教訓を学んでくれたことだろう。


「すぐにっ! ギルドマスターをよんで参りますううううううッ!」


 正面には土下座する受付のお姉さん、背後には号泣するべとべとの精霊少女たち、そして隣には巨大ワニの亡骸。


 突如としてそのギルドに現れた少年は、明らかに異彩を放ちすぎていた。


「な、なんなんだあの子供は……?」


「かわいい子ですねー! やってることはあんま可愛くないですけど……」


「かわいそうに……きっと親に捨てられ、地獄のような人生を歩んできたのだろう。人としてあるべき感情が欠落しているんだ……」


「いや、アレはたぶん生まれつきっすよ」


「間違いない。あの少年は数百年に一度の逸材だぞ……!」


「少年? あの子、男の子なの? 私てっきり女の子だと思っていたわ」


 それに対する冒険者の反応は様々であったが、おおむね異常者であるという認識で一致していた。


 やがて、ざわつくギルドの奥から浅黒い肌の大柄で筋肉質な男――ギルドマスターが現れ、きびきびとした足取りでルッタの元へ近づいて来る。


「……こりゃあ驚いたな。お前がこのワニを仕留めたのか?」


 男は巨大ワニを眺めまわしながら問いかけた。


「はい、僕たちみんなで倒しました! こんがりと焼いてとどめを刺したのはメルカですね!」


「ワームも嫌ワームも嫌ワームも嫌ワームも嫌ぁ……っ!」


 ルッタは背後でガタガタと震えている炎の精霊を紹介する。


「精霊まで従えてるのか。しかも三体……随分と大変な主人を持っちまったようだな」


 ギルドマスターはやや同情的な目で震える精霊たちのことを見た。


「いえ、この精霊を従えているのはお姉さまです! 僕が一人でお出かけするのは心配だからと言って、無理やりパーティメンバーに加入させられました!」


「手練れの冒険者でも手を焼く巨大ワニを勝手に仕留めちまう弟に、契約が難しい精霊を三体も使役できる姉か……末恐ろしい姉弟だな」


 顎に手を当てながら、そんなことを呟くギルドマスター。


「お前、名前はなんて言うんだ?」


「ルッタ・アルルーです!」


「アルルー? どっかで聞いたような名前だが……思い出せないな」


「アルルー家はリゼリノ王国の貴族です! 僕のお父さまである炎剣のクロード・アルルーが一番有名な名前だと思います!」


「クロードか! ……なるほど、おおよそ話が見えて来たぞ。可愛い子には旅をさせよってことか……恐ろしい一家だな」


 どうやら、家庭の教育方針によりルッタが幼くして過酷な旅をさせられているのだと勘違いしているらしい。


「僕の家族はみんな優しいです! 恐ろしいことも否定はしませんが!」


「まあいいさ。生い立ちについては深く追求しないのが決まりだからな。――冒険者に登録したいなら、俺が推薦してやる」


「本当ですか!? ありがとうございます!」


 基本的に冒険者ギルドは人材不足であるため、有力な人間の推薦があれば年齢が十五歳に達していなくても特例で冒険者登録できる仕組みが存在している。


 原作において明らかに子供である味方キャラも冒険者として活動できていたのは、実力者となった姉のリリアや主人公のアレンによる推薦があったからだ。少なくとも設定上はそうなっているのである。


「詳しい説明や気になることは受付から聞いてくれ。……お前の活躍に期待してるぜ」


「わかりました! 活躍します!」


 かくして、ルッタは晴れて冒険者となることができたのだった。

 

(やはり力があれば良かったのですね! 最終手段として受付のお姉さんを倒すルートも考えていましたが、思ったよりあっさりと登録できました!)


 精霊たちからの信頼は少し失ったが、一件落着である。

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