第111話 湖上都市ペンタグラル!
ルッタツーが姉から恐るべき教育を施されていたその頃、ルッタは精霊たちを引き連れて水の都ペンタグラルへとやって来ていた。
ここは大陸の中央にあるマグナリス海に浮かぶ都市であり、どの国にも属さない中立地帯である。
国境を越えて活動する冒険者ギルド連盟の本部や、各国の未来を担う若者たちが集まるアスタリス学園が存在し、様々な実力者が集結しているのだ。
ちなみに、マグナリス海は四方を陸で囲まれた湖だが、非常に広大であるため海と呼ばれているらしい。
「……どうしていきなり知らない町の中に立ってるわけ?」
ルッタにアステルリンクを使用され、一瞬にして家の中からペンタグラルの広場へと転移したメルカは、周囲をきょろきょろと見回しながら驚く。
「この端末を使うと、好きな場所へワープできるのです! 詳しい説明は省きます!」
困惑する精霊たちに雑な解説をするルッタ。
「いつもこうやって脱走してるんだね~! だからリリアも気づけないんだ~!」
「ルッタお兄ちゃん……すごい……!」
フロナとツララは未知の体験に目を輝かせている。
「まったく、ルッタのやることは予測不能ね」
「オープンワールドではありがちなゲームシステムなので、覚えておいてください!」
「意味が分からないわ」
「そうですか…………」
ルッタは少しだけ悲しそうな顔をしながらアステルリンクを懐へしまった。
「それで~? 今日はここで何して遊ぶの~? 追いかけっこ~?」
「冒険者ギルド連盟に登録して、闇ギルドの情報を集めます!」
「ん~? よくわかんな~い」
「つまり……追いかけっこですね!」
「やった~!」
両手を上げて喜ぶフロナ。
かつて自身が所属していた反社会組織との追いかけっこをさせられることになるが、本人にその頃の記憶はないので何ら問題はないだろう。
「闇ギルドって……そんな危ない奴らの情報集めてどうすんのよ」
「影の足跡に所属する錬金術師、バルザールの居場所を突き止めて捕まえるのです!」
闇ギルドに所属するキャラクターの中には出現場所が頻繁に変わる者もいるため、その動向を掴むために冒険者ギルドへ登録する必要があるのだ。
「そいつに恨みでもあるの?」
「もちろんありません!」
――ルッタの目的は、師範から譲り受けたムゲン水を増殖させることだ。
言うまでもなく原作では不可能なことだが、彼には考えがあった。
それは、敵キャラであるバルザールが持つ『ポーション返し』のスキルを利用することだ。
バルザールは、こちらが投げたポーションを複製して投げ返してくるという謎の特殊技能の持ち主である。
ムゲン水はアイテムとしてはポーション判定であるため、彼を仲間にして複製してもらおうというのがルッタの作戦だ。
「今作はアップデートによって敵キャラも仲間になるみたいなので、バルザールもいけるかもしれません! いえ、きっといけます!」
期待で胸を膨らませるルッタ。
「わるい人を仲間にするの……? ちゃんところした方が……いいと思う」
「いけませんよツララ! 人間キャラは倒すだけで経験値とドロップアイテムが手に入るので、殺すと損です! カルマ値も上昇してしまいます!」
「そ、そうなんだ……」
「思いやりの心を持ちましょう!」
「うん……わかった……」
ツララも納得してくれたようだ。
「というわけで、まずは冒険者ギルド連盟へ登録しに行きます!」
かくして、一行は連盟の本部へと向かうのだった。
*
冒険者ギルド連盟本部は、大勢の冒険者たちでにぎわう活気に溢れた建物であった。
「たのもー!」
「たのも~!」
入口を開けたルッタとフロナが堂々と挨拶をすると、周囲の視線が二人に集中する。
「ふーん。思ったより静かな場所なのね」
続けて入って来たメルカが、黙っている冒険者達を見て言った。
「なんか……こわい……」
ツララは不安そうに呟く。
「はぐれたらリリア姉さまに怒られてしまうので、みんなもついて来てください!」
三人の精霊を引き連れ、受付へ向かうルッタ。
「冒険者登録をお願いします!」
彼は受付のお姉さんに向かってにこやかな笑顔で言った。カウンターの位置が高いので、背伸びによってぷるぷると震えている。
「申し訳ありませんが、十五歳未満の方は冒険者に登録できません」
対する受付のお姉さんも、にこやかな笑顔で言った。
「……はい?」
ルッタは笑顔のまま固まる。
「申し訳ありませんが、十五歳未満の方は冒険者に登録できません」
「なんと!?」
そもそも、子供が冒険者になることはできないようだ。
「そ、そんなはずありません! 原作では子供のキャラも冒険者になれました! なれた……気がします!」
「お引き取り下さい」
受付のお姉さんは変わらない笑顔のまま冷たく言い放つ。
「そ、それでは、僕は一度転生していて人生二週目なので大丈夫ですっ! 話し方とかが大人びていると思います!」
「お引き取り下さい」
「そんな……!」
軽くあしらわれ、絶望するルッタ。
「残念。無駄足だったわね」
メルカは彼の肩をぽんと叩く。
「ルッタちゃんかわいそ~!」
「ルッタお兄ちゃん……かえろ……?」
ツララが服の袖を引っ張った。
「実は僕……レベル100を超えてます! 強いです!」
「さっさと帰れガキ」
必死のアピールも虚しく、一行は豹変した受け付けのお姉さんにつまみ出されてしまうのだった。
「ママのミルクでも飲んでなッ!」




