表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ゲーマーは無限レベルアップで成り上がる!  作者: おさない
第四章 目指せ無限レベルアップ
109/131

第106話 魔王と正しい心


 とある貴族の少年は、家族のことをとても愛していた。


 朗らかで頼れる父、優しさと厳しさを併せ持つ母、心配性だが弟想いの姉。


 彼らと過ごす日々は幸せに満ち溢れていて、心が温まる思いだった。


 しかし、この幸せがずっと続くわけではないことを彼は知っている。

 

 やがて訪れる終わりに対する不安がそうさせるのか、近頃は同じような悪夢を見るようになってしまった。その悪夢の内容はこうだ。


 まず、自分の前に全く同じ姿をした偽者が現れ、体を返せと迫ってくる。


 少年は恐怖のあまり逃げ出し、必死に走って疲れ果て、そして追い詰められる。


 どうしようもなくなったその時、少年は自身が『ルッタ・アルルー』ではなく『ルッタツー』であることを思い出し、どちらが本当の偽者であるのかを理解するのだ。


 *


「うわああああああああッ!」


 深夜、悪夢から目覚めたルッタツーは叫びながらベッドから転がり落ちた。


「くるなっ! やめろっ! うわああああっ!」


 彼は必死にもがきながら、まとまりついてくるルッタの幻影と戦う。


「ルッタちゃんっ?!」


 そんな声を聞きつけた姉のリリアが、血相を変えて部屋へ飛び込んできた。


「いやだああああああっ!」


「ルッタちゃんしっかりっ! 何があったのっ?!」


 普通ではない弟の元へ大慌てで駆け寄り、肩をゆするリリア。


 彼女の必死の呼びかけによって、ルッタツーはいくらか正気を取り戻す。


「リリアっ、姉さまぁ……っ! 僕っ……ずっとここに居たいですっ! ずっとずっと……みんなで暮らしたいですっ! ひっぐ、うぅっ、うえええええんっ!」


 ルッタツーはリリアに抱きつき、みっともなく泣きじゃくりながら、そんな胸の内を吐露した。


「……当然よ。私たちはずっと一緒だわ」


 リリアは落ち着いた声で答える。


「――あなた達どうしたのっ?!」


 次の瞬間、今度は母のステラが部屋へ駆け込んできた。


「お母さま、ルッタちゃんが……」


 リリアの視線からおおよそのことを理解した母は、二人の元へ歩み寄りそっと抱き寄せる。


「……かわいそうに。またいつもの怖い夢を見たのね」


 それから、優しい声でこう続けた。


「……大丈夫よルッタ。この家は安全だもの」


「お母さま……っ、お母さまぁっ!」


「ルッタ……安心して。何も怖いことはないから……ゆっくりと目を閉じなさい」


「ひっぐ、うぅぅ……っ」


 たったひと月で身も心もアルルー家に絆されてしまったルッタツーは、いずれ訪れるルッタの帰還という終焉に怯えているのである。


 *


 それから数日後の朝、運命の時は突然訪れた。


「お久しぶりですルッタツー! お留守番ありがとうございます!」


 底抜けに明るい声に叩き起こされたルッタツーの目に飛び込んできたのは、間近に迫ったルッタの笑顔であった。


「わあぁッ――」


 ――ゴンッ!


 思わず飛び起きたせいで、二人の頭が激しく衝突する。


「せ、先制攻撃を受けました……」


 涙目でその場にうずくまり、ぷるぷると震えるルッタ。


「ど、どうして……どうしてお前がここに……ッ!」


 一方額の痛みどころではないルッタツーは、ベッドから降りなるべく距離をとって問いかける。


「なんで……っ!」


 その表情は完全に怯えきっていた。


「どうしても何も……お家に帰ってきただけですよっ!」


 額を赤くしながら答えるルッタ。流石の彼も、あまりの仕打ちに怒り気味の様子である。


「……もう僕の代わりはしなくていいので、分身を解除しますねっ! 今までありがとうございました!」


 ルッタが宣言した次の瞬間。


「い、いやだっ!」


 ルッタツーは全力で首を振りながら叫んだ。


「……いやだ? それはどういう意味でしょうか?」


「僕は……僕がルッタだっ! 代わるなんて絶対にやだっ!」


「な、なんと……!」


 予想外の返答に驚愕し、目をまん丸に見開くルッタ。


「どうしてですか?」


 彼は首を傾げた。


「お父さまもお母さまもお姉さまも……みんな僕に愛を与えてくれたっ! 家族がどういうものかを教えてくれたんだっ! みんなと離れるなんて……絶対にしたくないっ!」


 ルッタツーの目から一筋の涙がこぼれ落ちる。


「ルッタツーが……家族愛に目覚めてしまいました!」


「それの何が悪いんだっ!」


「だって……一応は魔王の一部なのですから、そんな簡単に絆されないでくださいっ! 安直ストーリーすぎますよっ!」


 あまりにも酷い言葉を投げかけるルッタ。


「僕の方が……みんなを幸せにできるっ! お前に大切な家族は渡さないぞっ!」


「魔王もどきなのに……言っていることが主人公みたいです……!」


 あまりにも真っ直ぐなルッタツーの瞳を見て、流石のルッタも感じるものがあったらしい。


 彼は少し考えた後、こう言った。


「うーん……別に無理やり消しても良いのですが……分身も一応は人かもしれないので……ここはパッシブスキル『人を思いやる心』の見せ所ですね……」


「何を言ってるんだ……!」


「決めました! 僕が師匠から教わった人を思いやる心と、ルッタツーが僕の家族から教わった家族の愛……どちらがより強いか勝負しましょう! 勝った方が正しいことにします!」


「お前に人を思いやる心なんてないッ!」


「ひ、ひどすぎます……! でもやっぱり魔王っぽくありません!」


 こうして、真のルッタ・アルルーを決める戦いが始まり――最終的にルッタツーが敗北して消えることとなった。


 分身では本体に逆らえないのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ