第5話:新しい朝
春の風が、校庭の桜を揺らしていた。
遥は制服を着て、校門の前に立っていた。
数ヶ月ぶりの登校。心臓が痛いほど緊張していたが、スマホに届いたメッセージが背中を押してくれた。
「今日、待ってるね。一緒に教室入ろう」
美咲からの言葉だった。
校舎の前で、美咲が手を振っていた。
以前と変わらない笑顔。でも、その奥には、確かな強さが宿っていた。
「おはよう」
遥が小さく言うと、美咲はにっこり笑った。
「おはよう。よく来たね」
教室では、ざわめきが起きた。
「え、あの子……遥ちゃん?」
「久しぶりじゃん!」
戸惑いと驚きの中、ふたりは並んで席に着いた。
昼休み、美咲は屋上へと遥を誘った。
あの夜と同じ場所。だけど、今は違う。
「ここ、もう怖くないね」
遥が言うと、美咲は頷いた。
「うん。今は、始まりの場所って感じ」
ふたりはフェンスにもたれて、空を見上げた。
「リリィだったら、なんて言うかな」
「“よく頑張ったね”って、きっと言うよ」
遥は静かに笑った。
「生きててよかった。ほんとに」
美咲も笑った。
「私も。出会えてよかった」
風が吹き抜ける。
桜の花びらが、ふたりの間を舞った。
新しい朝が、ふたりの未来を照らしていた。
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