破れた想いは破らずに、紙飛行機にして
好きな人ができた。
同じクラスの、背が高くて、ハンサムで、勉強やスポーツもよくできる、絵に描いたような優等生。
だけど、直接口で告白する勇気はない。
だから、手紙を書くことにした。
『ずっと前から好きでした。よかったら私と付き合って下さい』
あまりにもシンプルな文面。
だけど私の気持ちはたっぷり込めたつもり。
これを渡して返事を聞こう。そう決めた。
放課後、校舎の出入り口で、私は彼を待った。
ものすごくドキドキする。
早くこれを渡したい。
渡して、もし「付き合おう」って言われたら、どんなに幸せだろうか。
こんな空想までしてしまう。
だけど、私の想いは儚く散ることになる。
彼は他の女子と一緒に下校してた。
確か違うクラスの子で、あのイチャイチャ具合からして付き合ってることは明らかだ。
二人は私には目もくれず通り過ぎていく。
結局、私は手紙を渡すことはできなかった。
初めての恋で、初めての失恋。
校舎裏でひとしきり泣いた後、私は書いた手紙をどうしようか迷った。
破ってしまおうか。だけど、せっかく書いた手紙がなんだか可哀想な気がして、破ることはできなかった。
私はひらめいた。
だったら、紙飛行機にして飛ばしてしまおう。
そうすればスッキリするかもしれない。
私は手紙を折って、紙飛行機を作った。
どうせなら広いところで飛ばしたいと思ったので、近くにある河川敷まで行く。
私は手首のスナップをきかせて、紙飛行機を投げた。
飛行機は風に乗って、飛んでいく。
私は心の中で叫んだ。行っけー!
すると――
コツン。
たまたま歩いていた人に当たってしまった。
私はその人に見覚えがあった。クラスメイトの男子だった。
ひょうきんで、いつもみんなを笑わせているお調子者。彼は紙飛行機を拾うと、私を見た。
「お前、なんでこんなものを俺に……?」
「あの、えーと……」
「これ、手紙か? どれどれ……」
「あ……」
紙飛行機を広げた彼は、手紙を読んで驚いていた。
「お前、俺のことを……!?」
違うの。あなたあての手紙じゃないの。
「実はさ、俺も前からお前のこと……」
ああっ、勝手に話が進んでいく。
私はもうどうしたらいいのか分からなくなって、上手く言葉が出てこない。
結局、私はちゃんと説明できず、彼が真相を知るのは数年後のことになってしまった。
そして、彼は今、私の目の前にいる。
「いいか? 折る時はしっかり折らないとダメだぞー」
「うん!」
そう、私たちの息子に紙飛行機の折り方を教えてくれている。
お読み下さいましてありがとうございました。
ラジオ大賞参加作品となります。