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悪役転生…させんっ!  作者: とる
悪役令息転生
16/29

16. 領都壊滅イベント

 領都壊滅イベントはゲームの中盤に主人公と武闘派令嬢の親密度が一定以上になったら起きるイベントだ。

 辺境伯領の領民を魔王復活の贄にするために魔族が領都に仕掛けた呪いを武闘派令嬢が見つけて、主人公とともに呪いの魔導具を破壊するために奔走するという内容であった。


「イベントの発生場所は辺境伯領だったはずなんだが、な!」


 俺は89式銃魔法でタタタッと銃弾を前方に集中し、飛び掛かってきた黒豹の魔物を空中に縫い留める。頭部にいくつも穴が開いた魔物は地に崩れ落ち、ピクピク痙攣した後、動きを止めた。

 ここは五芒星型に配置されたダンジョンの頂点の一つ、芝生迷路のようなダンジョンだ。そこに俺は領軍の騎士と兵士を連れて訪れている。背の高い生け垣が迷路の壁となり、俺達の動きを制限してくる。生け垣の厚みや強度はダンジョンの異次元的な力で増幅されており、焼き払って突っ切ることも出来ない。


「横道から飛び出してくる魔物に気をつけろ。強力な個体は無理に反撃しようとするな。俺にまわせ!」


「「「了解致しました!」」」


 うちの兵隊共の返事がいい。以前から忠誠心は厚かったけど学園地下遺跡ダンジョンを攻略してパワーアップした力を見せてからは、戦闘で頼られてる感じが増した気がする。


「結構強い魔物が多い気がするな。領内のダンジョンってこんなに手強かったか?」


「いいえ、これほど難易度の高いダンジョンは領内にはありませんでした。新しく生まれたダンジョンは総じて攻略難易度が高いようです」


 連れてきた部隊の隊長の騎士に話し掛けると、そのような返事が返ってきた。先ほど倒した黒豹の魔物はうちの兵士でも三人で囲わないと厳しいレベルらしい。それだと普通の冒険者パーティでは出くわしたら壊滅するんじゃないか?と思うが、このレベルのダンジョンに潜る冒険者は腕の立つ斥候を抱えていたり、獣型の魔物を避ける高価な香を持っているので、攻略せずに探索するだけなら見つかる宝物品が高品質なこともあってなんとかなっているらしい。レベルに見合わない冒険者が無理をして死んでいくのも多いらしいが、当たればでかいハイリスク・ハイリターンな地となっている。


「──こっちだな」


「──迷宮も確実に最奥に近付いているような雰囲気になってきましたな。若様の道を選ぶ勘は神懸かり的ですな。いやほんとに」


「たまたまだ。たまたま」


 ほんとは攻略情報を識っているからわかるんだがな。辺境伯領じゃなかったが出来るダンジョンは同じだったようだ。じゃなかったらこの迷宮で何日過ごすハメになったことやら。


 先行していた斥候が戻ってきた。分岐路の選択をして貰いに戻ってきたわけじゃない、この先に最奥、ボスの間があるという報告をしに戻ってきたのだ。


「──確認出来たのは一体。小山のような大きさの鼻の長い魔物です。動きは鈍重そうですが、力は強そうでした」


「若様いかがいたします?このレベルのダンジョンのボスであれば魔法を使ってくることも想定すべきでしょう。遠距離からの一斉攻撃後に撤退を繰り返す手もいいかと」


「そうだな。…ダンジョンのボスはワンダリングモンスター化すると強さが跳ね上がる事例もある。即時撤退は避けよう。最奥の間の外からの一斉攻撃後に中に突入、総力戦と行こう。部隊の指揮は任せる」


「了解致しました」


 最奥に鎮座する象のような鼻と牙を持ち、鎧のような攻殻で身を護る魔物は、蹲った状態でも体高5mはある。広場の大きさは競技場ぐらいあり、障害物もなく巨体のボスが動き回るのにも支障は無さそうだ。

 最奥の間の外から攻撃を届かせられる魔法を持つ者を集めて一斉攻撃を敢行する。着弾タイミングを合わせるために詠唱の開始を調整する。この辺りは部隊の隊長に任せておけば大丈夫だ。俺は俺でバレットM82銃魔法の準備をする。兵達の攻撃で攻殻に穴が開けば、そこを狙うつもりだ。

 隊長の指揮で魔法が次々と発射される。バラバラに撃たれた火や氷や石が同時に魔物に着弾する。凄まじい衝撃が大気を震わす。十数人の一斉魔法攻撃の威力はかなりのモノだ。

 もうもうと立つ煙が晴れた後、怒りに震える血塗れの巨獣が広場の中央で立ち上がっていた。身体の前面の攻殻はひび割れて血が滴っている。耳を劈く怒声で吠え上げた巨獣が広間の入口に突っ込んで来る。一歩一歩が地震を思わせる震動を立てて迫ってくる巨獣の迫力に、我が領の精兵達も一瞬身体が硬直させられる。

 ハッと我に返って動き出すも何人かは避けるのに間に合わないだろう。俺の前に出て盾になろうとした騎士達を怒鳴って避けさせる。目前に迫った巨獣に射線が通ったところでバレットM82銃魔法を発射する。狙いはヒビの入った攻殻ではなく、流れる血が入って半分塞がった眼。視難さで反応出来ないことが期待できる。巨獣に発射音が届く前に弾丸が瞼をこじ開け、眼を穿ち、その奥にまで抉り込んでいった。

 巨獣の悲鳴が広間を駆け巡り、俺達の鼓膜を攻撃する。俺達にかまう余裕も無くなった巨獣の様子に惚けていた兵達の中でも隊長騎士がいち早く復帰し、隊員に追撃を大声で命じて自身も率先して巨獣に突撃していく。俺の一撃で脳が損傷した巨獣は効果的な反撃をだすことも出来ず、蟻に集られる芋虫のように死んでいくのだった。



 ダンジョンボス討伐後、最奥を捜索して地面に埋められた魔導具を見つけ出した。禍々しい呪いの魔力を垂れ流す歪な形の壺だ。この地にあることで効力を発揮する道具なので、ここで壊すのは危険だが、運び出せば直に機能は停止するはずだ。兵士に大事に持ち帰るように命じた。


 屋敷に帰還すると出迎えにきた侍従が俺に面会依頼を持ってきた。悪役令嬢の手紙を持ってきた使者らしい。着替えて応接室に入ると侯爵家の家紋が入ったイケオジの騎士が待っていた。型通りの挨拶の後、恭しく手紙を渡してくる。その場で手紙をレターオープナーで丁寧に開封して中を検める。使者に正装の騎士を寄越したからには返事も持って帰らせるつもりだろうし。


 手紙には美しい文字で時候の挨拶から始まり型通りの文言が続いていた。本題は中ほどに書かれていた。来月に第二王子主催のパーティーがあるので、そのエスコートを依頼してくる内容だ。他には演習の次の日からまた学園を休んで出てこなかったことに対する苛立ちを感じさせるチクチクした文言が並んでいる。

 黄クラスには他にも俺と同格の第二王子派貴族令息はいる。わざわざ派閥活動に不熱心な俺をエスコート役に任命したのは、戦闘演習で見せた力で侯爵令嬢が動くほど有能な人材と思われたからか。

 パーティーに行くのは構わないが日取りを変えて欲しい。今は領都壊滅イベントで忙しいんだ。まさか第二王子に日程変えてくれと言うわけにもいかないので愚痴るしかないんだが。

 俺が断れないか思案していると、使者のイケオジの騎士がお嬢様も楽しみにしておりますとか断わりにくい雰囲気を造ろうとしてくる。いやこのイベントをクリアしないとバイクローン領が潰れるから暇ないんだって。ああ、けどイベントか、ゲームのイベントと同じなんだから主人公にクリアさせたほうが良いよな。ていうかクリアすべきだよな。聖女令嬢に依頼出せば来るかも。

 とりあえず、悪役令嬢の使者には快諾の旨を伝えて手紙も携えさせた。イケオジ騎士は急かされていたのか、歓待を辞意して帰って行った。


 俺は父に悪役令嬢からのエスコート役の依頼について報告した。この件は侯爵家からの覚えがめでたいということなので父も喜んでいた。

 それと、領都に仕掛けられた呪いの解除に聖女令嬢に協力依頼をすることを提案した時は、自領の問題解決を他領に依頼すると報酬や借りで足下を見られるデメリットが大きいので、父は当初反対をしてきたが、婚約破棄の慰謝料代わりの農作物売り上げ譲渡契約の期間を短くすることを報酬として交渉することで納得してもらった。例の契約は思った以上の農作物の価格下落の影響でうま味が少なくなっていたので報酬に使うのに了承してくれたみたいだ。さっそく聖女令嬢の父親の子爵に俺から手紙を書く。父から委任を受けたので報酬交渉も俺がやっておくことにした。


 ◇


「お久しぶりです聖女様。今回は我が領のお願いを引き受けてくださり、誠にありがとうございます」


「お互いの領の仲ですもの、他人行儀な言い方は無しですわ」


 数日後、聖女令嬢一行がバイクローン伯爵領を訪れた。学園生活より領の仕事が優先されるのはどこの貴族家も一緒である。聖女令嬢のとこは借金(婚約破棄の違約金代わりの契約)を返すために父親に命じられて来たのかな?


「ファルド様には戦闘演習の時のお話を是非ともしたいと思っていたのですが、お父様にまずお仕事を片付けろと言われたので、そちらを優先します」


「ははは、是非とも優先してください」


 なんだか根に持ってる?勝てそうなとこでいきなり負けイベントが始まったようなもんだったからかな。いやすまんね、クラスでボッチになりたくないなんて理由で殴り掛かって。


「…で、そちらのお連れの方のご紹介は頂けるので?」


 聖女令嬢の後ろには護衛騎士の主人公が立っているのだが、その隣に見慣れない侍女が二人立っている。一人は緑色の髪で伊達眼鏡をかけた少女で、もう一人は紫髪になぜかグレイブを持っている。ぶっちゃけ第三王女と武闘派令嬢だ。第三王女はまだしも、武闘派令嬢は隠れる気がないのかそのまんまだ。案内したうちの者も対応に苦慮していたぞ。


「お気になさらずに。私達は只の侍女でございます」


「私はファルド殿と試合えればそれで良いぞ」


 第三王女達の後ろにはさらに侍女が立っている。侍女の侍女がいる人間を立たせておけるか。こっちがきまり悪いわ。武闘派令嬢がなんか言っているのは聞こえないものとする。


 第二王子派閥の家には魔族の工作員が入り込み、家中の者に瘴気から作った薬物で第三王女や第一王子派閥の者を敵視するように思考誘導をかけている。だが我が家では俺が古聖女の腕輪を手に入れ、定期的に工作員を潰しているので今は思考誘導を受けた家中の者はいない。なので第三王女と武闘派令嬢へ非礼を働くような自制心が壊れた者がいないのは安心だ。元々敵対派閥が嫌いな父は別だが。


 侍女コスプレをしている第三王女と武闘派令嬢も話しづらいのでテーブルに着いてもらう。主人公はどうしてもと固辞したので立ったままだ。


 現在バイクローン伯爵領で起きていることの説明からしていく。多数のダンジョンが突然生まれ、その位置は領都を中心とした五芒星になっており、調査したダンジョンの最奥には呪いを産み出す魔導具が設置されていた。これらの調査結果から何者かが領都を攻撃するために仕掛けたモノだと思われると。


「規模の大きさから個人の犯行ではなく、呪い、いや瘴気を操る技術の巧みさから人ではなく、おそらく犯人は……魔族の一党だと考えています。彼らの企みを潰していただきたい。それが依頼内容です」


「……お話はわかりました。ただ、先に聞いておきたいことがあります。ファルド卿はなぜ魔族がこの国で暗躍していることを知っているのですか?」


 侍女コスプレの第三王女が主導して話を聞くようだ。先の戦闘演習の場で魔王の存在を匂わせたりしたので気になっていたのだろう。異世界人のゲーム知識で知りましたとは言いたくないな。なんとなく。


「私の知識の出本はお答えできません。ただ、あなた方が魔族に狙われ、戦っていることは存じておりますよ。──それと、そこの彼が魔王と戦う定めにあることも。私はあなた方の敵ではありませんよ?」


「「「……」」」


 猜疑心に塗れた目線ありがとう。俺も自分が怪しい奴と思うわ。どうするか、依頼を断られると困るな。


「そうそう、彼にこれを渡そうと思っていたんでした」


 俺は学園地下遺跡ダンジョンの第一層の最奥で見つけた剣の束を取り出す。俺では剣の精霊を呼べなかったイベントアイテムだ。それを聖女令嬢の前に置き、後ろに立つ主人公に渡してもらう。


「怪しい気配はないけど、何かがいる?」


「古い様式の剣の束ですね。刃が無いのは何故?」


「よく使い込まれているな。戦いの歴史を感じられる良い束だ」


 聖女令嬢や第三王女、武闘派令嬢の三人は剣の束を見聞した後、主人公に渡した。


 刃の無い剣の束を受け取った主人公は、どう反応すればわからないといった感じで剣の束を目の前に持ち上げてみる。すると、剣の束が淡い光を放ち始めた。


「な、なんだ!?」


 淡い光が光度を増し、爆発のように一瞬だけ明るさを増すと、光がおさまっていった。そして聞こえてくる鈴を鳴らしたような微かな音だが不思議と耳に届く声。


「──ようやく会えたな。新たな勇者よ」



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