表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役転生…させんっ!  作者: とる
悪役令息転生
13/29

13. 第三層墳墓エリア

 さあ、第三層墳墓エリアだ。この一ヶ月近くダンジョン攻略に明け暮れてようやくやって来た。ここは名前の通り、巨石を積んで造られた複数階層の墓の中を進んでいくエリアだ。道幅は広く天井は高い。出てくる魔物もミイラ系やらゴーレム系だ。ただし、それらが姿を現すのはこのエリアのギミックを解除してからである。

 第二層から第三層へと下りて最初に目にするのは墳墓の入口となる巨大な鋼鉄の門である。別に鍵が掛かっているわけでは無く、押し開けられるのだが、この門を開けると真っ黒な闇のような瘴気が扉の隙間から湧き出してくる。この高濃度の瘴気は墳墓の主を呪う魔王によって生み出されたモノとされている。

 ゲームではこの瘴気に触れたキャラはスリップダメージを受けて3歩ぐらいでHPが0になって死ぬようになっていた。ポーションでゴリ押しを図ろうにも第三層ボス戦で一瞬で減るHPバーに絶望するだけだった。それでもトップやり込み勢には踏破した変態も居たが、現実ではアイテムの持てる量にも限りがあってゴリ押しは無理である。

 そしてこの瘴気は聖女令嬢の覚醒イベント後に使用できるようになる浄化の光という魔法でしか祓えない。…ここまで言えばおわかりであろう。以前、聖女令嬢誘拐未遂事件で倒した魔族から奪った激レアアイテムの古聖女の腕輪、アレを着ければ瘴気の中を進めるようになるのだ。


 古聖女の腕輪を着けた俺は瘴気の中を進む。淡く輝く光の膜が俺を包んで瘴気の侵食を防いでいる。闇のような瘴気のせいで視界は全く効かないが、この墳墓の墓守である魔物達は瘴気の中では動けないのでエンカウントはしないから安心である。瘴気に侵食された魔物もいるが宝を守る隠しボス扱いなので自分からちょっかい掛けに行かない限り戦わなくていい。


 墓の中を上へ上へと進んでいくと最上階に荘厳な意匠を施された立派な扉が現れる。この中に学園地下遺跡第三層のボスがいる。俺はこの楽々攻略をするために痛い思いをして激レアアイテムを手に入れたのだ。


 俺は感慨深い思いで扉を暫し眺めると、くるりときびすを返した。俺はべつにここのボスと闘いたくて来たわけじゃない。扉の位置を意識しながら一つ下の階へ下りる。手探りで闇色の瘴気の中を進み、ボス部屋の()の下あたりにくる。ここはゲームではあるバグ技を実行できた場所で、そのバグ技はジャンプ中にシステム画面を開いてセーブし、ロードしなおすと空中から始まり、すかさずジャンプすると壁にめり込みつつどんどん上に登れる、いわゆる壁抜けバグだった。現実では壁抜けなんて出来るわけ無いのだが、この真上にはボス部屋の奥の()()()がある。

 俺はバレットM82銃魔法を真上に構えて引き金を引いた。ゴンッというハンマーでぶっ叩いた音が鳴って天井の石材に貫通はしていないが穴が開く。バレットM82銃魔法も何百発も撃ったおかげで練度が上がり、一発撃つごとに上級ポーションを消費しなくても良くなった。数十秒ごとにゴンッという腹に響く音を鳴らして天井に弾丸を撃ち込んでいく。30分後、上の階の小部屋と開通した。


 あれだけゴンゴン言わしていたのにボス部屋の奥の小部屋をボスは覗きに来ていなかった。まあボス部屋に入ったらイベントが起きて登場してきたから、ボス部屋に入室していない今は出待ちしているのかもしれない。

 この小部屋はボスを倒した後に入れるお宝部屋で、いろいろと価値の高いアイテムもある。しかし俺の目的はアイテムでは無く、この小部屋の壁に描かれた魔方陣である。この緻密で複雑に描かれた魔方陣こそ、難易度がラスダンに並ぶダンジョン、天空大陸への転移陣なのだ。


 俺の増やしまくった魔力を注入しても中々満杯にならなかった転移陣をなんとか起動させて天空大陸へと転移した。一瞬の浮遊感の後、眩い光を潜り抜け、辿り着いた先は、青空の下のある白いガゼボの中だった。外に出てみると青々とした草の生える草原の先の崖際に、鳥籠のようにも見える白いガゼボは建っていた。崖の下は海ではなく、白い雲海が広がっている。草原の方を向くと、所々大地の切れ間があり、そこから雲や遙か下の海が見えている。


「ああ…本当に天空大陸はあった…」


 異世界人のゲーム知識を散々利用してやって来た俺だが、何処かでここから先の記憶は想像で作り出したモノかもという不安があった。もちろん今もその不安はあるが、天空大陸という伝説の大地に到達したことで気持ち的に達成感のような、何か区切りがついたようなモノが湧いている。この地に俺の将来を決めるモノが眠っている。それを手に入れることが俺の真の目標だ。


 これからはこの天空大陸の攻略が目標となったわけだが、その前に絶対手に入れておきたいモノがある。俺はガゼボに戻り、石造りのベンチの足下を調べた。敷石の一つに丸い紋章がついている。それを引っ張り抜くと、穴の底に指輪が置いてある。これは転移陣の遠隔利用装置で、これを持っていると王都内ぐらいの距離限定だが、その範囲内なら何処からでも学園地下遺跡の転移陣を使って天空大陸へ転移できるようになる。つまりここに来るために毎回、学園地下遺跡を踏破する必要が無くなるということだ。


「はあ、やっと手に入れた。一ヶ月も屋敷にほとんど帰ってなかったから父が煩かったんだよな。これで屋敷からでも来れる」


 俺は今日のところは帰ることにした。天空大陸は物語終盤にいけるようになるダンジョンということもあり、棲息する魔物も強力で厄介なモノが多い。今まで以上の入念な準備が必要となる。帰って仕切り直しだ。

 転移の指輪で帰れたら楽なんだが、発動した場所から天空大陸に転移して、天空大陸から元の転移した場所に戻るという仕様なので、未使用の今は戻る場所が登録されていない。なので学園まではダンジョンを歩いて帰る必要があるのだ。

 第三層、第二層、第一層と特に変わったところはなかった。ここも暫くしたら魔物が復活してくるのだろう。せっかく魔物が間引かれた今なら探索も容易なんだが、わざわざ学園長に教えてやる義理もないし、なに勝手に入ってんだって怒られるだけだから勿体ないが放置だ。




 学園図書館の職員の紳士に挨拶をして退館する。一ヶ月近くほぼ毎日通っていたのでもはや常連だった。目的は達したので明日からは来ないと伝えたら残念そうな顔をされた。いや、すまんね。図書館としての正しい利用はしてなかったんだ。


 寮に戻ると何時もより早い時間だったからか、廊下を歩く人影が多い。俺の顔を知っている者もいるのか、珍しそうな目を向けてくる。慌てて挨拶をしてくるので適当に気にすんなと手を振って進んでいく。


「あれ?ファルド様お久しぶりです!」


「あっ、ほんとだファルド様なんで寮にいるんですか?」


「体調不良で長期休暇中では?」


 部屋に向かって歩いていると騎士見習い三人組に声をかけられた。そういえば、この寮に寝泊まりしてたのにこいつらと顔を合わせたことが無かったな。人を避けてたのもあったが、こいつらぐらいなら挨拶ぐらいしていても良かったかもな。


「久しいな三人とも。一応、先月から寮を利用していたぞ?体調不良では無く、領の経営のために学園図書館で調べ物をしていたんだ」


「うへえ、一ヶ月もですかぁ、お疲れ様です」


「ファルド様がお休みの間、演習の特訓が大変でしたよぉ。バーテイランス侯爵令嬢様が張り切っちゃって。もう本番明日なのに今日も特訓でしたよ」


「ファルド様のことも、なんで来ないんだぁ!ってカンカンでしたよw」


「あー、あったなそんな行事予定。大変だったなお前ら。飯食いながら話でも聞きたいが、眠気が凄くてな。すまんが部屋に戻って寝るわ。明日寝坊してたら起してくれ。じゃあな」


「「「はい。おやすみなさい」」」


 俺は部屋に戻るとダンジョン攻略を共にした服を脱ぐ。所々ほつれたり破けたりしているので、屋敷に帰ったらメイドに繕いを頼んでおこうと心のメモに書いておく。

 水で濡らして固く絞った手ぬぐいで身体を拭き、ベッドに横になって今日手に入れた転移の指輪を眺めた。この小さな指輪が転移を可能にするということに驚愕させられる。転移陣が本体なのだろうがそれでも凄い技術だ。


「そういえば、明日が演習の日って言ってたっけ。一ヶ月間全く顔出さなかったから、もの凄く気まずいな」


 俺は半分くらい忘れている黄クラスのクラスメートの顔を羊代わりに思い出していたら、そのうち眠ってしまった。


明日も10時30分に投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ