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カフェ・ダガール 引退したSランク冒険者は辺境でカフェをはじめました  作者: 長野文三郎


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最終話 帰宅


 しがらみからの解放感を噛みしめながら俺とシュナはダガールまで戻ってきた。

 熱く乾いた砂漠の風を切ってヒュードルは進む。

 長かった旅の終着点はもうすぐそこだ。

 ほら、街道の向こうにカフェ・ダガールが見えてきた。

 塗装のはげかけた建物がやけに懐かしく感じたが、じっさいはそれほどの時間が流れたわけじゃない。

 旅の名残を感じつつ俺はヒュードルのスピードを落とした。

 この旅が終わってしまうことに一抹の寂しさを感じたからだ。


「ようやく戻ってこられたな」

「そうね、これでやっと自分の部屋で落ち着けるわ」


 奥の3号室はすっかりシュナの部屋になっている。

 だが、俺は最後にもう一度だけ念を押した。


「本当に戻ってきてよかったのか?」


 俺の背中に触れているシュナの手に少しだけ力がこもる。


「追い出したいの?」

「いや、確認したかっただけさ」

「3号室は私の部屋よ」

「そうだな、だったらそれでいいさ」


 ヒュードルはカフェ・ダガールの正面で停止した。

 俺たちは剣から降りて向き合う。


「ジン、ありがとう」

「いいさ、楽しかった」


 はにかむシュナの顔は砂漠の太陽よりもまぶしくて、俺は目を逸らしてしまう。


「さて、中に入って何か飲むとしようぜ」

「アイスティーが飲みたい」

「おう、任せておけ」


 扉に鍵はかかっていなかった。

 それはそうだ、俺は鍵をかけずに飛び出したのだから。

 そして店の中ではダルダルさんがご飯を食べている最中だった。


「おや、おかえりなさい」


 びっくりした。

 あとは任せると言って飛び出したけど、まさかまだダルダルさんがいるとは思わなかったのだ。


「ずっといてくれたの?」

「ええ、ちょうどバカンス中でしたので。ここを拠点に砂漠を探検していました」

「宇宙船は?」

「騒ぎになるとまずいので砂に擬態させています」


 さすがは宇宙のテクノロジーだ。

 ダルダルさんは微笑みながらうなずく。


「シュナさんが戻ってこられてよかったですね。いざとなったら船で突撃しようかと思っていたんですよ。あの船は軍の放出品だからメガ粒子砲がついているんです」


 ダルダルさんにすべて任せた方が早かったか?


「メガ粒子砲ってなに?」

「シュナの魔法よりすごいぞ、たぶん」


条件によっては、この中で最強なのはダルダルさんかもしれない。


「とにかくアイスティーを淹れるよ。どうせまだ客はないだろうからのんびりしてくれ」


 うちの店に来るなという命令は解除されたが、人々に浸透するのには時間がかかるだろう。

 そう考えていたのだが、勢いよくドアを開けて入ってきた者がいた。

 さっそくお客さんだろうか?


「いらっしゃい、って、ドガじゃねえか。久しぶりだな!」


 ドガは俺を見て泣きそうな顔になっている。

 再会の喜びに打ち震えている?

 いや、こいつはそんなたまじゃない。


「どうした、お前らしくもない」

「すまないが、しばらくかくまってくれないか?」


 何かの冗談かと思ったけど、ドガの目は真剣である。

 カフェ・ダガールに新たな厄介ごとが持ち込まれたのは明らかだった。


「まあ、座れよ。いまからアイスティーを淹れるんだ。ドガも飲むといい」

「何があったか話してみなさい。聞くだけ聞いてあげるから」

「相応の対価をいただければ、居住可能な惑星への密航も請け負っていますよ」


 なんだか楽しくなってきたな。

 カフェ・ダガール、本日も開店といこうか。

 俺はドアに『オープン』の札をひっかけた。


―――――――――――――――――――――――――――――

このお話はこれにて完結です。

詳しいことはこのあと近況ノートにまとめる予定です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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最後までお読みいただきありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
サクサク進んで非常に読みやすくて面白かったです。 続編が、読みたい。
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